いざ、旧市街へ
痛い……一体全体なにが起こったのか……
今朝は朝起きてから学校に行って…それからどうしたっけ?
そうだ、川向うの学校にカチコミに来たんだったか?
ロボコン部に挨拶に行くって、学校を出て、、、途中で、ヘアカラースプレーで金髪に変えて、ヘアスプレーで髪を立てて、長ランに着替えて……
これだけ威圧感を出せば、川向うの学校もビビッて、協力的になってくれるかもと、気合を入れて、カチコミに向かったことを思い出した。
カチコミ=殴り込みは失敗に終わった。
校庭に入ってぐるぐると回ったところまでは良いが、ひゃっはーーと叫んだ後どうしたっけ……そうだあの女だ……風子とか言ったか?
いきなり何か投げつけれて……あとはボコスカと殴られたっけ?
「一体何がいけないっていうんだよぉ……」
雷蔵は一人呟きながら、旧市街に向かっていた。
来るときは銃の弾丸は詰められていなかったが、今は満タンに補充されていた。
智子と呼ばれた女子が、手早く模擬戦用のペイント弾を用意してくれた。
「あの子、可愛かったなぁ」
つつましく、手際が良く、優しい。
『頑張ってね』そう楽しそうに、敵である自分に向かって言ってくれた少女に思いをはせながら、決戦の地、旧市街に向かった。
旧市街は、前世紀に置いて大勢の人間が住んでいた街だ。
建物は老朽化が進み、倒壊しているものも多くあったが、模擬戦をするにはぴったりの場所だった。
モデルガンを用いての、対人戦をするには危ないが、多脚戦車を用いた模擬戦にはぴったりだった。
遮蔽物はもちろん、道路もかつての電柱が転がり、マンホールは吹き飛び、水浸しの箇所もあり、障害物として、多脚戦車の運用にはぴったりの、フィールドになっていた。
少し市街地を、多脚戦車で走り回る。
思いのほか障害物が邪魔で、乗り越えるに手間取る……
「こりゃ、思っていたより荒れ果てて、キャタピラとかの方がよさそうだけど、まぁ何とか……」
少しでも練習して、あの風子とか言う女の子を倒す。
その為に多脚戦車の練習を繰り返す雷蔵だった。
雷蔵は、学校では優等生で真面目な生徒だった。宿題はきちんとこなし、小学生では学級委員までこなした。
記憶の封印が解けると、雷蔵は愕然とした。
記憶が戻って、確かに色々なことが出来るようになったが、それでも平凡な自分がそこには居た。
まさに、社会のパーツ。
前世も、その前の前世も、そこそこ真面目に、ただひたすらに真面目に生きて来ただけだったのだ。
真面目なだけでは何者にも成れない。それが前世までの自分の出した結論だった。
今生の世こそは、オリジナリティをもった自分になる。
それが、雷蔵の野望だった。
輪廻転生の末が、高校デビューとは、もしかしたら来世の自分は笑うかも知れないが、そこは来世の自分に何とかしてもらうしかない。
雷蔵は、真面目に市街地を見て回り、戦略を練った。
あらかじめ、高速移動が出来る部分と、障害物や遮蔽物の位置を確認する。
先に着いたからと言って、あらかじめ罠を張っておくことも少し考えたが、真面目に正々堂々と戦略を練って行く。
射撃の練習のシミュレーションを事前に行っておこう……多脚戦車をVRシミュレーターのモードに変更して、練習を始める。
さながら、テスト開始五分前に、テスト範囲を見直すように、真面目な作業だった。
「あ、そうだ……」
ついでに、現れた風子に対して、タンカを切る必要があるので、文言と新しい二つ名を考えておこうと考えを巡らせた。
確かにさっきの俺は格好悪かった。カチコミは失敗と言える。
いや、俺のカチコミは始まったばかりだ!
カチコミは終わっていない!なんだ、この打ち切り感は……