カチコミに来た男
風子と智子が、グラウンドで整備をしていると、
ずどどどどどー
何やら遠くで、雷鳴がとどろく音が聞こえた。
その音はだんだん近づいてきた。
「な、なんなのこの爆音は!」
「この音はまさか!」
迷惑そうな風子と、興味津々と言った様子の智子はそれぞれの反応をした。
爆音の主は、校庭に侵入して、グラウンドを何週か爆走したのち、グラウンドの西側にある、川の土手に駆け上った。
爆音の正体は、タイヤ付の四足に、胴体に二本の腕を生やし、背中にエンジン、胸部にカメラを備え、人型に近いならも、顔の位置には顔はなく、代わりにコクピットの入り口のハッチが付いていた。
「RGX750。多脚戦車!」
智子は、目を輝かせて土手の上のその戦車を見上げた。
多脚戦車は、つんのめりそうなほどの急制動を掛けると、停止して、コクピットから搭乗者が出てきた。
西日を背に、その男は長い学ランを背中にマントの様にたなびかせ、頭の髪の毛は金色で逆立たせ、腕を組み、風子と智子を見下すように見ていた。
あ、これは、この恰好の奴は言いそうだな……
「ひゃっはーーー」
ほら言った。風子は思った。
踏ん反り返って腕を組んでいた男は、どこから出したのか、鎖を振り回し始めていた。
次はなんだ?あれか有り金出せとか、跳んでみろよとか言うのだろうか?
たまにいるのだ、こういう世紀末仕様の輩が……
そう言う輩に絡まれたとき、風子は言うのだ……
「貴様の血は何色だー!」
せっかく整備したグラウンドが、荒れ果ててしまった。鎖振り回している金髪世紀末ヤンキーにだ。
風子は一輪バイクに跨ると、颯爽と駆け出した。
オートバランサーの調整は整ったバイクで、木刀を片手に土手を軽々と登り、多脚戦車の前に立ちふさがる。
「お、女!タイマンじゃ……ぐはぁ!」
予想外だったのだろう。素早い対応に、金髪の男は少し驚き気味に反応したが時すでに遅し、風子は持っていた木刀を男の顔に投げつけた。
額に当たり、男はのけぞった。
「よくも、私が一時間かけて整備したグラウンドを滅茶苦茶にしやがって!何処のモンかしらねぇが、五体満足帰れると思うなよっ」
「てめぇ、女!ひと呼んで西校の「金色の雷神」。雷蔵さまに対して、なめたことぬかすなぁ。」
「はぁ!?だれに断って、二つ名なんぞ名乗ってんだ!」
あまりの急展開に、智子はついて行けなかったが、一人「あ、風子切れた。」そう思っていた。
「どっちが、世紀末タイプのキャラなのか分からないセリフ回しだなぁ。」
とりあえず自分が行ってもなんの解決にもならないであろうことから、ぼけっと自体の成り行きを見守る。
雷蔵って確か……
思いを巡らせていると、風子がバイクで戻って来ると言った。
「智子!なんか武器!あの戦車ぶっ壊せる奴!ガトリング!ガトリングつけて!ぶっ壊してやるわっ!あの不届きもの!」
「ガ、ガトリング?ミニガンのことかな?ペイント弾かBB弾でいいよね?」
「実弾よ!」
「ひええぇぇ」
グラウンドを荒らされたことで、憤慨している風子だった。
もちろんグラウンドを荒らす奴が一番悪いが、殺意がすごい……そう思った。
どうやら、1時間後に旧市街で決着をつけると言う事で話が付いたらしかった。
土手の上で、雷蔵と名乗った男が地団太を踏んでいた。
最初の木刀での一撃で、額から血を流し、両の頬は赤くはれ上がっていて、目の上には青たんが出来ていた。
目を離した覚えはないが、いつの間にか男の肉体は、風子による物理的鉄拳制裁が行われていた。もはや勝負は決しているのではないだろうか?と智子は思ったが、それよりも、その顔と、何故かほころびてしまった学ランを見ながら、
「一体いつの間に、昭和か……」
と一人突っ込みを入れる智子だった。