意識高い系
老人二人は、一息つき、お茶をすすった。
ラップバトルで少し疲れたようだった。
「ふぅ……二回戦目はこう何と言うか、無駄に横文字を使いたがる連中じゃった……」
「横文字と言いますと、クローズユアアイズとか、ステイウィズミーとかでしょうか?」
「そんな聡次郎ちゃん、J-POPじゃないんだからさー。普段の生活でそんなだったら会話にならないと思うよ。」
「御嬢さんの言うとおりじゃが、二回戦目の相手はそうであった方がまだよかったかも知れぬよ……」
「あぁ、思い出しただけで気分が悪くなる……あの文字数稼ぎとも取れるやり取りは本当に疲れた。」
老人二人は心底げっそりと言う感じで言った。
「二回戦目の相手は……意識高い系じゃった……」
大会のデータベースを参照し、対戦相手のロボを智子たちは見た。
一機も二機目も同じ形をしていた。カラーバリエーションが、金色と銀色だった。
「金閣、銀閣かよ……」
雷蔵は西遊記に出てくる妖怪を思い出した。
色こそ派手だが、シルエットはスマートな出で立ちをしていた。
凹凸の少ないフォルムで、無駄がなくスタイリッシュと言えるスタイルを実現していた。
「試合が始まると彼らはオープン回線で自分たちの会話を聞かせて来たのじゃ……」
「最初は操作ミスかと思ったが、行動な精神攻撃と気が付くのに時間はかからなかったのじゃ……」
「無暗にCCがつけられている社内メール位のうざさじゃ……いや、CC大事なのはわかっておるのじゃが……」
「君たち聞こえているかい?私たちのジャストノーティスです。この大会のフレームワークは君たちがオーソライズしているって本当かい?僕たちも出場メンバーがフィックスしてから、ロボの設計とパイロットの育成をしたのだけど、なかなかこのスケジュールでは、フィジリティないと思うのだよね?スケジュールの厳しさから当校でもバッファがたらずハレーションが起きて、あまりにタイトなスケジュールをリスケも検討したよね?解るかなぁ?君たちのロジックはひとまずペンディングして、ファクトベースで話を進めるべきだと僕は思うのだけどどうだろう?カスタマーサイドに立つっていえば分かりやすいかな?あとはマイルストーンとメルクマールを設定したらどうだろうか?」
「そうそう、うまいものじゃないか大鬼よ……どう倒したか覚えていないのじゃが、気が付いたら、ステージが荒れ果てておった……銃火器の類と、エネルギーも使い切っておったし……」
「わしも、年甲斐もなくその夜は深酒してしもうたわい……アルコール度数9%の安酒じゃった……」
確かに、この戦いの竜神と鬼神は錯乱しているのか、滅茶苦茶な戦闘をして、大会撮影用カメラはすべて破壊されていた。
カメラがというよりは、会場全体壊滅的に破壊されていた。
ところはスマートな相手ロボは傷を負う事はなかった。パイロットは早々に恐怖で意識を失ったらしいが、いまだに入院中だった。
意識は回復しているが、一切しゃべらなくなったと言う話だった。
本当に疲れる戦いじゃったと、突かれた顔で老人たちは語った。
「た、大変でしたね……」
誰も感想を言わず沈黙が訪れた。それに耐えかねて聡次郎はようやく労いの言葉を言った。
いかんいかんと、老人たちは、笑顔を振りまいた。
「そうじゃ、明日の試合後は軽く打ち上げを検討してくれんかの?」
「じゃあ、ペンディングで……」
風子が言うと老人二人はとても嫌そうな顔をした。




