30チームが戦うと…シードが必要?
30チーム居たチームが、一回戦目で15チームになり、二回戦目で7.5チームになる…という訳にはいかないので、二回戦目を行わないトーナメントの山があった。
その一つのチームは昨年の覇者のチーム。
昨年のロボコンの種目が、悪名高いサソリ型の多脚戦車であった。
サソリ型のロボコンの大会は5年開催されていたら、終戦に至らしめた大会だった。
レギュレーションは会を重ねるごとに緩和されていき。禁じ手上等になっていた。
風子達は次の戦いでどのような手を打ってくるのか対策する為に作戦会議をしていた。
前の試合の録画動画を見ればいいのかと思いきや、なんとこのチーム。前の試合を煙幕と、電子戦を仕掛けて来ていて、動画どころか対戦相手すらどうやられたのか分からないらしかった。
では、どういうパイロットたちなのか?とそちらから戦法を予想しようにも、なんでもモチーフは忍者らしく、開会式にも姿を見せない正しく影の軍団と言う状態だった。
4人は聡次郎の部屋に集まって会議を開いていた。チームのリーダーの部屋は広くなっていて、和室に洋室。会議に使用しやすいように、大型テレビなども設置されていた。
ベッドなどは同じだが、広々しているだけでも豪勢だなと風子は思った。
「そうすると、次は暗殺とか仕掛けて来てもおかしくないですね……」
「そこまでするのか!だが安心しろ!俺の胃は強靭だから、多少の下剤には負けないぜ!」
「下剤って……悪質な嫌がらせ……」
「そこまで小悪党なのかな?智子誘拐されないようにね。」
「融解ですか?いやそこまで残酷なことはしないでしょうけど……」
そうか?ていうか字がおかしい気がするけど、工学系の文字変換バグっているのでは?
隣の世紀末ヤンキーのRPGっぷりもおかしいが、大会出場者のなり切り具合はかなり気合が入っているのが風子としては気がかりだった。
「あらかじめトラップを仕掛けている可能性もあるかも知れないしね。」
智子が壁のパントマイムをしながら回転した。どうやら回転扉のジェスチャーらしい。すこしどんくさい。
「銃撃を、畳返しで防いだりはしそうだな。」
「煙幕攻撃を仕掛けてくるという事は少なくとも一機は正統派忍者っぽいロボなことは確定な気がしますね。」
「そうだね、聡ちゃん。気になるのはもう一機が電子戦担当だとするとどういう装備になっているのか?電子戦対策……一応は電磁パルスの対策を取るとして、対策されたら終わりだし、もう一工夫してきそうだよね。」
と言う意見を交換しているところで、伝統的な戦略を見てみようと言う話になった。
去年と同じ人間がチームに居るのかはともかく、地域性や、各学校のカラーで、やはり戦い方は似てくるものだ。
去年の動画は動画共有サイトに上がっていた。
昨年の覇者のサソリ型タイプの多脚戦車が映し出される。
「噂には聞いていたけど……」
「完全にムカデタイプだな。」
改造のレギュレーションが緩くなり、年々出力の面もフォルムも奇抜なものが増えてきた。
オリジナルがサソリなので、どうしても発想は虫タイプになるが、サイズ的にカブトムシ型や、クワガタ型、クモ型などが定番だった。
現に三つ前の大会は、サソリ型と名ばかりで、コーカサス、ヘラクレスなどに特化していた。
二つ前の大会は、それに飽きた主催者サイドが戦場をすべて水辺に設定してきたため、今度は、海老型、カニ型と来て、ザリガニ型が出てきたため、どうにかサソリの型に回帰したらしいのだが、前回の大会は再びフリーになったため、各チームたまったフラストレーションが爆発したようで、様々な虫タイプが出てきた。様々な毒をもつ虫をモチーフにした大会は、さながら蠱毒を生み出す儀式の様であったと、智子は説明した。
その優勝機体ムカデ型は、ゆるゆるなレギュレーションから、ついには複数の多脚戦車の動力を直列につなぎ、圧倒的な出力と巨大さで勝利をつかんだのだ。
レギュレーションが緩いって言ったって、そこまでずさんだと逆に観客は感心したと言う。
「ミニ四駆の大会だって、禁止モーターがあるくらいなのに、あまりにずさんだけど、それをやってはいけないよねと言うモラルでなんとか成り立っていた大会だったことが、去年分かったの。」
「そうですね。人類を信じていたのでしょうね。運営側の人間は……」
「今年のレギュレーションがコクピットのユニットごと提供と言うのは分からないはなしではないなと久しぶりにムカデ型多脚戦車を見て思った。」
「人類の可能性を信じるって言うことか……かっけぇな運営。」
「という事は、普通はモラル的にやらないようなことを、ルールの隙をついてやってくるチームという事ね。」
忍者とはかっこいいと言う印象があるが、仕事柄汚れ仕事もあったであろう。その闇の部分もしっかりリスペクトしたとしたら、次の戦いは一筋縄ではいかないなと思う風子であった。




