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風子の作戦

 「まだ二回戦で負けてられないし、色々試してみたいこともあったしやってみるか。」


 試合開始の合図と同時に、風子は上空に舞い上がった。

 ビル群の廃墟を見渡せる高度に、すーーっと浮かび上がって行く。


 上空から見るても、今回のフィールドは視認性が悪かった。

 街の作りが古いのか、増改築を繰り返したそのビル群は、思いのほか入り組んでいた。

 

 「さあ、やってみようか風神さま!」


 そう言うと、風神様の背中の後ろの飾り布から、光の粒子が放たれた。

 粒子は、見えない位拡散して、街全体に広がって行った。


 「ナノマシン散布。フィールドの情報を観測測定後、フィードバック。簡易MAP……フィールドの3D映像作成……」


 しばらく演算に時間が必要になる処理を行っているため、風神さま自体の演算関係にかかわる処理スピードが落ちてしまう。

 自動自己防衛のシステムや、長距離射撃の補正は難しくなる。

 上空に漂う風神さまの姿は、地上の中国チームには丸見えだった。

 狙って撃ってこいと言わんばかりのポーズに、中国チームは戸惑った。


 「ひとまず私が様子を見るから、京子は地道に破壊対象に向かって……アル」


 キョンシータイプのロボに乗った京子はうなずくと、曲がりくねった道を、ジャンプを繰り返して移動して行く。

 一回のジャンプで数十メートルを移動するが、ビル群の方が、背が高いので、震動と音は激しいが確実に進んで行った。

 ロボが移動するためには、地道に歩くことも出来るがあまりに非効率なため、ホバリングや、足に車輪を付けてのローラーダッシュなどが一般的だった。

 ジャンプしての移動は、操縦が難しいとされていたが、中国チームは見事それを制御して見せていた。

 着地の衝撃をうまく殺して、再度上空にジャンプする。それだけだが、路面を認識して確実にそれを行うためには、高度な画像解析を必要とした。

 画像解析をすると言う意味では、今風子が行っている演算と近いものあったが、ジャンプの度にその演算を細かくかけていると言うのは地味に、ハードに負荷がかかっていた。


 中国娘の方は、真っ赤なチャイナドレス風のロボに乗って手近なビルを垂直に走って登っていた。

 チャイナドレスのパイロットは細身であったが、ロボは小腹が出ている形状になっているため、不格好な形になっていて、恰好良いとはお世辞には言えなかった。

 大会主催者側から提供されているコクピットが球状なため、機体のデザインがそれに左右されてしまっている。

 屋上まで登った中国娘は風神さまを見上げた。風神さまはその更に上空に舞っていた。


 「なにあれ?チャイナドレス……?え、マッチョすぎる……きも……」


 「きもクナイアル!」


 チャイナドレスロボは、屋上から更に飛び上がった。

 ロボの足から、わずかに黄色い粒子が噴出して、それを足場に空中を駆け上がってきた。

 

 「うっ!巨体なのに俊敏!きもっ!」


 「きもクナイアル!この日本鬼子!」


 そう言うと、背中の昆を抜き放ち風神さまに殴り掛かる。


 「日本鬼子ってなんなのよ?」

 くそ、機体の動きが鈍い……処理落ちしている。

 軽口をたたきながら、何とか回避する風神さまの動きは、いかにも遅かった。


 ちなみに日本鬼子とは、中国で使われる日本人を指す蔑称である。西暦2010年代にすでに萌え化済みである。

 

 紺を躱されたチャイナドレスロボは、そのままの勢いで風神さまに回し蹴りを入れた。


 「っ!」


 なかなかの衝撃で、風子は声が出なかった。

 地味にピンチである。


 「伸びろ!如意棒!」

 そう言うと、再度そのまま昆を振り回す。その時昆は長さを増して風神さまに迫った。



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