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大会開会式の洗礼

 「え、ええと……」

 風子は正直言って、迫力に押されていた。

 目の前には、ネイティブアメリカン(インディアン)の恰好をした無骨な男と、こちらを見下した感じでで眉毛を歪める、まるで西部劇に出てくるキャラクターの様に、テンガロンハットをかぶり、短いズボンにチョッキを身に纏った、ガンマンスタイルの女の子がいた。

 二人はバカにした態度で、片言の日本語でまくし立てて来ていた。


 「HeyHey!ジャパニーズ!しけた面ね。日本代表が聞いてあきれるわ。」


 「え、え……日本代表?」


 風子と雷蔵は、決して日本代表ではないし、ましてそう言っている彼女は、髪こそ金髪に、碧い目のカラーコンタクトを付けているが、顔だちは東洋人……しかも縄文顔の代表的な日本人顔だった。


 「けっ!何言ってやがる。お前たちだって、米国代表が聞いてあきれるぜ!」


 「なんですって!ジャップ」


 「なんだとヤンキー!」


 「ふんっ!」


 「けっ!」


 雷蔵がカウガールに食って掛かっている。

 なんなのだ、これは?風子は理解できずに居ると、智子がそっと耳打ちする。


 「雷蔵くんと一緒で、ロールプレイってやつだよ。大会の開会式では、お互いに喧嘩を売って、物語を演出する決まりがあってね……あまり演劇が得意ではない人は、ほら、あのインディアンの人見たいに無口キャラを演じるのが定石ね。」


 「だったら事前に言っておいてよね……」


 おかしなのは、雷蔵だけではなくて……いや、この場合おかしいのは自分なのか?

 そう風子は思った。


 「それにしても、米国って……」


 「あぁ、風子さん。たぶん米を作るのが得意な地域とか、そんなダジャレじゃないかと思いますよ?」


 聡次郎が答えてくれた。

 なるほど……そうすると、この米国勢の次に因縁をつけて来た人たちは……


 「アイヤー!この男、私たちの事いやらしい目で見てたアル」


 そう言ってきたのは、チャイナドレスを着た女の子で頭は左右にお団子をまとめていた。

 「あ、可愛い。」そう風子は小さく言った。

 雷蔵は、軽く笑いながら対応を開始する。


 「お前なんか見てねぇよブーース。」


 「きー!なんですってー」


 そう言って、ぷんぷんと怒ったぞと頬をふくらますチャイナドレスは、さほど気にする様子もなく、対応していた。


 もう一人は、目の周りを黒く塗り、清の国の服を着ていた。何故か両腕を前方に突き出したまま、ピョンピョンと飛び跳ねていた。


 「きっと、旧中国地方から来た人たちですね…中国つながりで……他に桃太郎とか出雲関係などモチーフもありそうですが……」


 「結構過去の大会で使いまくって、そろそろネタが切れて来たとか?」


 「あぁ、智子さん、確か前回は吉田松陰先生を持ち出して、大会側に注意されていましたよ。」


 「あぁ、偉人はまずいと言う……」


 こいつらバカばっかなんだな……で、お互い誰が勝っても、マンガ化とかアニメ化、ドラマ化しても良いようにと、キャラクターを作っているということか……


 「マルチメディア戦略……」


 なんでも、開会式では、初戦の相手に対して、喧嘩を売ると言うのが通例らしい。

 ついでに、二回戦目の相手になりそうなチームにも挨拶をしておくと言う決まりらしい。

 そもそも、初顔合わせなので、何の因縁も無いのだが、少しでも大会の戦いをドラマティックに演出したいと言うことだった。

 強豪校や優勝候補などもありそうだが、特に誰も気にしていないと言う様子だった。

 知って居そうな、聡次郎と智子に話を振ったが、

 「ん?どこだったかな?」


 歴史が古すぎて、古豪とか、新参とかも無いらしい。


 「そうか……楽しみ優先なのかな?」


 こうして開会式は滞りなく進行して行った。


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