パイロットスーツと言うもの
「これはなによ……」
風子は驚きと恥ずかしさを通り越して、もはや呆れ果てていた。
そして、そのパイロットスーツを装着しきったのはもはやノリとしかいいようがなかった。
「何か問題か?かっこ……ぶほぉ」
風子の方を振り返った雷蔵は、リアクションの取り様がなかった。
「何か不満でも?」
そう言ったのは、雷蔵たちの学校から来た縫製部の面々であった。
「そうね……もはや悪いとか思ってもいないという訳ね……悪意はないと……」
「悪意?ですか?我々は最大限の努力と誠意をその耐Gスーツに注いできました。あなたに分かりますか?わからないでしょう。そもそも耐Gスーツとは、パイロットの身体を保護するものです。何Gもかかると人間どうなるか分かりますか?意識を失ったりするのですよ?そうならない様にするのが耐Gスーツです。」
「分かった。もういい……必要性は分かった。じゃあその笑顔はなんなのか説明してもらっていいかな?」
「はて?笑顔ですか?それは仕事を完遂した我々の仕事に対する自信の表れと取って頂ければ……」
風子と雷蔵のパイロットスーツは、どちらも性能は同じで、コンセプトは同じだった。
耐Gの為、空気のチカラなどで血圧等をコントロールする機構を持っていた。
高機能なため、厚ぼったい宇宙服のようなデザインではなく、それは体にゴムの様にフィットして、体形がよく分かるものになっていた。
雷蔵の男性向けの物は、胸筋や腹筋が透けて見え、股間など急所の部分には、カップが配置されていた。また、肘や膝など、ぶつかりそうな部分には、補強部品が配置されていた。首回りも保護されて、マフラーの様に首まわりにエアバックが配置されていた。
基本的には風子のパイロットスーツも同様になっていた。腹筋などの筋肉のラインは美しく透けて見え。胸などは配慮され、要所要所見えないように配慮さえていたが、その配慮の仕方が実に男性的に、扇情的なデザインになっていた。
さらに女性用のスーツには体形をさらに美しく見せるように、ハイレグの様なラインがデザインされていた。女性の身体の美しさに対して、敬う姿勢がうかがえるパイロットスールのデザインと言えた。
風子にとっては、自分の色々な形をさらけ出されて、さらにそれらを強調されているかのように感じられた。
裸よりもより恥ずかしい気さえした。
それでもちゃんと着て表れたのは、作業をしてくれた縫製部の人たちに感謝を伝えたかったからだ。
「変態みたいじゃない……」
恥ずかしさに、風神さまに搭乗しない時は、体操着でも上に着ておこうと心にちかった。
風子が、小走りで更衣室に取りに行く姿を見届けてから、ひそかに縫製部の面々はハイタッチをかわしていた。
「ちょっと、刺激が……それにしても風子の奴意外と……うっ」
興奮気味に雷蔵は目を血走らせてそれを見送っていた。
縫製部では、実際にスーツを作る時間よりも、どういったデザインにするか、そこに時間が一番裂かれたと言う。
「私は、意外と乗馬服見たいなデザインを押したのですが、どうしても体形が出るタイプが人気のようでして……」
ちなみに、ふりふりのミニスカで、あちこち透けているとか、デザイン候補に挙がっていたが、風子の性格を説明した雷蔵の情報を考慮してさすがに没になった。
説得できるギリギリで、悪意のばれないデザインを攻めた縫製部の勝利と言える結果だった。
風子の優しさと、人の好さは、こうして男たちに裏切られた。




