智子と聡次郎
「こんにちは。私、聡次郎と申します。川向うの学校のロボット部の、そうですね、参謀と言ったところでしょうか?ねぇ、雷蔵の兄貴?」
優しそうな男の子が笑顔を向けて座っている。正座だ。
その横にはちゃんとお土産まで置いてある。
連れだって入ってくる雷蔵は、和室に入るときに靴を脱ぎ、しゃがんで靴をそろえようとして、「はっ」と何かに気が付いたようで、恥ずかしそうに脱ぎ散らかした感じに靴をガチャガチャと散らかした。
その少年の隣に胡坐をかいた。
風子達の学校の部室棟の茶道部の部室を借りて会談を開いていた。
「今回はちゃんと駐車場に戦車止めて来たようだけど。後でグラウンドの整備きちんとして帰ってね。」
「わぁてらい。その為にゴリ戦車で来たんだからよ。」
こいつ真面目だな……風子は思った。
なんだこいつはファッションヤンキーか?
上座に陣取った風子はひとまず聡次郎と名乗った男を見る。参謀?兄貴?
なんじゃそりゃ?
ガラガラと入り口が開いてお茶を持った智子が入ってくる。
「聡次郎ちゃん久しぶり元気だった?」
どうやら智子と知り合いらしい。
「智子さんも久しぶりです。これお土産です。」
お土産は羊羹で、ちょうど智子が持ってきたお茶と合いそうなものだった。
智子の持ってきたお盆を見ると、それを見越したかの様に、4人分の皿と楊枝が乗っていた。
「この参謀さんとやらは智子の知り合いなの」
「そうそう、私の幼馴染で、聡次郎ちゃん。」
「そうなんです。幼馴染です。今はロボット部でロボコンに向けてロボットを作っています。智子さんとはライバルともいえます。」
「ふーーん、それでこちらのロボット開発を妨害しようと、そこのチンピラを差し向けたと言うわけ?」
「正確には違いますが……とりあえず騒ぎを起こしてしまったのでお詫びに伺った次第です。」
何ともスムーズな会話だが、その間雷蔵は口を挟もうか挟むまいか、口を隣でパクパクさせていた。
やれやれと思い風子は話を雷蔵に振ってやる。
「で、聡次郎が参謀であんたが兄貴で、結局何がしたいの?」
急に話を振ってもらい、ぱぁっと顔を明るくして雷蔵が話し始めた。
「そうだ、こちとら、共に戦うツワモノの顔を見ようと思ってな!景気よく挨拶に来たのにひどい目にあったぜ!」
「共に戦う……?」
雷蔵はしゃべり続けているが、そこはほとんど聞き流しして、風子にはその一節だけが残った。
その表情から聡次郎はすべてを悟ったように、ほほうっと相槌を打って話を始めた。
「おい……」
急に話の腰を折られて、雷蔵は不機嫌そうに聡次郎を見る。
「智子さん、まだ風子さんには伝えていないのですか?」
「うん、それどころかまだ部員にもなってないよ。」
「そうですか……」
どうやら自分以外の三人と認識の違いがあるようだと風子は気が付いた。
「智子さん、私から話しても?」
「あ、うん聡次郎ちゃんお願い。」
「実は、今年のロボコンの大会から、学校別ではなく地区対抗戦になりました。その変わり、大会の規模が……簡単に言うと派手になります。」
隣で、うんうんと大げさに首を振って相槌を打つ雷蔵が少しうざいと思ったが、ひとまず無視して話の続きを聞く。
「いわゆる2on2のバトルになります。既存の多脚戦車を有効活用するのか?レギュレーションがまだ発表されていないのですが、風子さんにはこの雷蔵……いえ、兄貴と一緒に戦ってもらいたいのです。」
なるほど……多脚戦車に興味は出てきたが、この雷蔵とか……
「なるほど……」
少し考えて、風子は続ける。
「私、やるからには勝ちたいのだけど……そこの兄貴って言うのは強いのかしら?最近私に負けた見たいなんだけど……」
ふふんと、風子は雷蔵を見下した。
挑発だった。
「なんだと!?」
易々と挑発に乗ってきた雷蔵に対して、ゲームを提案した。
「今日はゴリ戦車だから、私もゴリ戦車をつかうから……タイマン張ってみようか……」
前回勝ったとは言え、戦略で勝ったという事を風子は知っていた。
雷蔵がそこに気が付いたかは知らない。ただ雷蔵も前世の記憶を持ったスペシャリストなのだろう……その雷蔵に対して、不意打ちなしの正々堂々戦って、どの程度自分が通用するのか風子は知りたかったのだ。




