往年の多脚戦車たち
「あの雷蔵君の持ってきた多脚戦車の大会は、5年位開いていたから、結構完成度は高くて、良かったんだ。まさに名機RGX750!」
だんだん早口になって行く智子と、風子は学校の地下格納庫を歩いていた。
少し興味が出たと言うと、智子が少し代表的な機体だけでもレクチャーしてくれると言うのだ。
「これが多脚戦車の腕だけ特化の機体で、多脚戦車なのに足は二本と言う……おもしろいでしょ?多脚戦車なのに、足二本……あ、多脚か?腕が太くてたくましくて全体的にゴリラっぽいから、ゴリ戦車で通るけど、パワードスーツ感が高くて、ファンが多い機体だよ。」
ガチャンと、地下のキャリアが動いて、多脚戦車シリーズを2人の前に運んできた。
たしかにゴリラっぽい感じのフォルムで、
「あ、顔はないんだ」
風子は感想を漏らす。そう顔がないゴリラだが、戦車と言うよりは作業用の重機に近い形をしていた。
「この時代のロボコンは、何か重いものを転がしたりとか?」
「ううん、ステゴロの殴り合いだよっ!」
少しロボコン感を期待した自分が馬鹿だったと風子は思った。
「けが人が出て……大会はその一回しか……」
心底残念そうにしている風子だが、それはそうだ……風子は思った。一応コクピットには装甲が付いていたが、明らかにあの腕の質量は異常だ。死人が出てもおかしくはない……
「どうなっているんだ、大会の主催者は……」
ガチャンと、地下のキャリアが動いて、多脚戦車シリーズを2人の前に運んできた。
「これが水中用の多脚戦車!なんと足がないんです。足がないのに多脚って……水中ロボコン向けだから、海底作業を考慮して腕が下から生えていて、後方にスクリューが付いていて、水中を進みます。この時のロボコンは格闘要素が低くて、魚雷で邪魔をしつつ、海底のアイテムを拾ってくると言う割と地味なロボコンだったんだよ。」
確かに水中用だが、それにしてもどうやって運ぶのだろう?地味に風子は思った。
「全体的に流線型でかっこいいね。」
地味とはいっても結構高速で乗り回せそうで、これは実は自分好みではないかとひそかに思った。
「ところが、これは操縦者がそろいもそろってマニアックで……海底のアイテムそっちのけで、魚雷戦闘を展開するんだけど、ソナーと、エンジン音とか、音を聞いて相手の位置を割り出して、魚雷を避けられないタイミングで放ったりとか、分かりにくい……マニアック過ぎて、勝負は長いし視聴者は飽きるしで……あ、通好みで面白いんだけど、enjoyとかじゃなくてinterestingと言うか……」
「ところでけが人は……」
「この大会は、鼓膜が破れるひとはいたけど、基本的に皆なぜか魚雷の信管を抜いて、爆発しないようにして、そろいもそろって「専守防衛!」だとかなんとか……」
これは、戦車の問題と言うよりはパイロットの問題が大きいのかなと思いつつ、苦々しそうな顔をする智子だった。
「ど、どんまい、大会の主催者。」
ガチャンと、地下のキャリアが動いて、多脚戦車シリーズを2人の前に運んできた。
「これが、空中用の多脚戦車!くー!なんてこったい、もはや戦車ですらない!……両脇に羽根が生えてて、その中にローターが仕込んであります。少し古のワンダバ感がなんとも!人気カラーは赤銀のツートン!」
「デザインは格好いいけど、大会のルールは?スピードレースという事はないのだろうけど、まさか空中で殴り合いなんてことは……」
「さすがに、殴り合いと言う事はなかったね。空を飛ぶ時点で、スピードが出てしまうので、危なすぎるね。」
大会のルールを説明しようとするときに、眉をひそめます。
「かつての日本列島縦断……鳩レース見たいな。」
「それって……」
つまり、大体の機体はゴールまでたどり着けない……
「リタイヤが多すぎるのと、その救援と、大会の期間の長さから、残念ながらその大会も一回しか……」
「大会主催者……やる前に分かりそうなもの……障害物レースとかあっただろうに……」
ガチャンと、地下のキャリアが動いて、多脚戦車シリーズを2人の前に運んできた。
「これは、RGX750の後継機で、サソリ型の多脚戦車なんだ。足は4本から、なんと脅威の6本!虫っぽいので、邪道だ!って言う人も多いんだけど、私は好き!コンセプトは火星探査用だとか?昔の人は、火星人はタコみたいな形を想像していたから、タコvsサソリ見たいな?どうせならイカタイプの多脚戦車を作ればいいと思うんだけど、そういうのはないかな?ほら多脚過ぎると言うか?」
「あ、足にタイヤがなくなっているね。前のがスピードを抑えて、忍び寄る感じで戦うとか?」
「そうだね、大体そんな感じのはずだったんだけど、少し安全性が高いと言う……」
「え、これもなんか大会短かったの?」
「うん……ただ3年目を迎えると、魔改造が進んじゃって……胴体だけ何個も繋いで、ムカデ型にしちゃって、圧倒的に優勝したら、次の4年目には、みんなムカデになってしまって、まるで蠱毒の壺の様におぞましいバロルロイヤルが……ビジュアルがエグイ……」
「まぁ、ここまで来ると、割と大会の主催者側には非はないかな……」
そんな感じで、大会の説明を受けた。風子は少し疲れを感じていた。
「智子、残りは明日でいいかな……」




