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誘い

「……タケル」


美月は静かに呟くと、入院している病院のベットの上で眠るタケルの手を握る。


先日突然眠ったまま目覚めなくなってしまった幼馴染。


どんなに呼び掛けても反応はなく、だが生命活動は維持している。とタケルの母が医者の先生から聞いたらしい。


同時にレイジも目覚めなくなった。タケルとレイジが同時期に目覚めなくなった。これは無関係なのだろうか?いや、無関係とは思えない。しかしどういう因果関係なのかの説明も出来ない。


無関係ではない気がする……位しか思えなかった。


「ねぇタケル。私どうすれば良いかな」


タケルの手を握りながら、美月は口から言葉を紡ぐ。


「子供出来ちゃった。誰が父親だか分からない。でも卸すにも色々手続きがいるし、でもこの子供を産みたくない。だって愛せないもん。尊い命だよ?でも私にとってはレイプされた時にできた子供だもん。愛せないよ……どうすればよかったのかな。最初からタケルに話してたら違ったかな?どうしたら良かったかな……」


ポロポロと涙を流し、美月は言葉を口にしていると、


「ここにいたんだね」

「え?」


そこに病室の扉が開かれ、そこに立っていたのは魔実だ。


「杖島先輩?」


何でここに。と言うニュアンスで美月が聞くと、


「いや、ちょっと知り合いが教えてくれてさ。タケル君の病室の場所。もしかしたら居るかなって思って来たんだ」


少し話したい。そう魔実が言うと、美月は何となくタケルについてだと感じ、大人しく着いていく。


連れて来られたのは病院の屋上だった。そして病院の屋上でくるりと魔実は振り替えると、


「一つ聞かせて。タケル君のこと怒ってる?ホントは憎かったりしない?」


突然の問いかけだ。しかし美月は首を横に振り、


「そんなまさか。嫌えたらもっと楽ですよ」


そうだよね。と魔実は笑みを浮かべ、美月を見る。


「嫌いになんかなれないよね。幼馴染って奴はさ」

「はい」


少し何かを思い出したように喋る魔実に、美月は首をかしげつついると、


「よし、ねぇ和賀さん。一つお願いがあるの」

「お願い?」


一体なんだろう?そう思った美月に、魔実は提案する。


「タケル君と会って欲しい」























「よし、準備は良いか?」


ある日の夜。レイジを筆頭に仲間達は集まっていた。


先日から勇誠達が働いている屋敷を見ながら話している。


「おいタケル!間違いなくあるんだろうなぁ!」

「う、うん」


レイジに怒鳴られ、タケルはビクつきながら答えると、


「そんじゃあ。散会だ!」


レイジはそう言うと、仲間達はそれぞれのポジションに移動。


「おらいくぞタケル!」

「わ、わかったよ」


夜は不気味だ。そんなことを思いながら、タケルはレイジに着いていく。


この屋敷はかなり大きい。だがそれに反して巡回している警護が少ない。


逆に中は相当いる。まぁ何人いようが関係ない。全員殺せば良い。そうレイジが思っていると、


「よう。お前ら」

「なに?」


暗闇から声をかけられ、その方をレイジとタケルは見ると、そこに立っていたのは勇誠と魔実。そして、


「美月?」

「タケル」


タケルにとって、よく知った人物。和賀 美月だった。


「なんで美月がここに……?」

「俺の力さ」


タケルの問い掛けに答えたのは勇誠で、


「ま、色々裏技があってさ」

「だが何でここにお前がいたんだ?」


今度はレイジが聞いてくると、勇誠は笑みを浮かべ、


「態々お前らがここに来てた理由がわからなかったんだが、何かこの屋敷にあるのは直ぐに分かった。ここの主は何か隠してるのは明らかだったしな。だから毎日働かせてもらう序でに屋敷を調べさせてもらった。警備が厳重で大変だったぜ」


まぁ、全部美矢の指示だったのだが……と勇誠は内心思いつつも、


「そしたら後は忍び込むルートを割り出し、そこで待ち伏せるだけだ」


これも美矢の指示である。巡回ルートからどこに来るかを割り出すのは、彼女にとってそんなに難しいことじゃない。


「ふん。分かったからってなんだ。テメェらをぶち殺せば一緒だろうがぁ!」


レイジはそう叫びながら、こちらに突っ込んでくると、勇誠は腰から木刀を抜いてレイジを止める。


「おらタケル!ボーッとしてねぇでさっさと盗ってこい!」

「っ!」


タケルはレイジの声を聞くと、弾かれたように走り出した。


「魔実!和賀さんを連れて行け!」

「うん!」


魔実も美月の手を引き、タケルを追って走り出す。


「へっ!てめぇ程度で俺を止められると思ってんのか!舐めんなよ!」

「やってみないことには分からないだろ!」


一方その頃。


「へぇー。こっちの動き読んでたんだ。やるじゃん?」

「この程度どうってことありませんわ」


美矢は弓矢を持ち、レイジの仲間の一人であるマクアと対峙し、


「良いねぇ。どっちもタイプは違うけどソソるねぇ!」

「ひぃ!」

「……」


先日空と戦ったジュノアは、癒羅と刹樹の二人と。


「アタシは大当たりかな」

「ふ……」


空もレイジの仲間の男と視線を交わす。


「ジュノアだっけ?アイツと戦ってるときも気づいたぜ。レイジの仲間の中じゃあんたが一番強いってな」

「そうか」


短く男は答えると、腰から剣を抜いて切っ先を空に向けながら構える。


「悪いが殺すぞ」

「良いね。分かりやすい」


対照的に空は構えない。一見すれば棒立ちにも見える。しかし空に隙がないのは、対峙している男が一番よく理解していた。


「ガワラーダだ」

「乾藤流古武術継承者・乾藤 空だ」


二人は短く名乗り、互いに向かって走り出すのだった。

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