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蒼き瞳に映るソラ  作者: 朝里炒豚
序章・スクールライフ編
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第7話『私の道』

「さてさて、どうしたものか…」


「どうかしましたか?」


タブレット端末を眺めながらぼやく鳳先生に私は訪ねた。どうやら眺めているのは私達のデータのようだ。昨日、彼女が顧問に就任して挨拶をした直後に私達は様々なデータを取らされた。特に一通りのデータを取った後やらされた体力確認のためのランニングはしんどかった、それこそ氷室さんがダウンしてリバースしかけたくらいには。おかげで未だにちょっと筋肉痛が残ってる。足痛い。


「昨日取ったデータ確認して、皆のポジションとか訓練メニューを決めようとしてたんだけどさ…」


「はい」


「海乃ちゃんがワケわからないことになってる」


どうやら彼女の目下の悩みは私だったようだ。そんなにおかしいか、私が。


「正直言ってね、貴女の能力も適性も機体も何もかもが噛み合ってない」


「はぁ…」


「まずは能力値の問題。運動能力や反射は平均値を少し上回ってる、射撃適性は平均値より少し上程度で格闘適性は結構高め、そこまでは良いんだよ。問題はそこから。

戦術立案と指揮能力が3人の中で最も適性が高い、つまり指揮官としてのポジションに据えるのが最適だと思う」


それは構わない。策を練るのは好きだし、機体も指揮官役をこなすことが出来る程度にはセンサーや通信系も強化されている、何ら問題は無いだろう。


「だけど能力値を考えるとそうも言えないの。この適性なら能力は近接寄りに育てたほうが伸び代はある、だけどその場合どうなると思う?」


「前に出て指揮を執らなければならない、ですか?」


「その場合にはリスクが多すぎる。 戦場を俯瞰出来る位置に居ないから戦況の推移は自分で予測するしかなくなるし、相手と切り結びながら他のメンバーの状況を把握して指示を下す必要がある。

何より指揮官機が前に出た場合、狙われる可能性が大きくなって集中砲火を浴びることにもなるし、もし撃墜されでもしたらどうなるか分かるでしょ?」


対戦した第二トランスアームズバトル部の二の舞、慌てふためいてリカバリーすることも出来ず負ける可能性がある、と言う事だ。少なくともまともな運用方法ではないことは私にも分かる。


「では機体が後衛向きの氷室さんが最適なポジションだと?」


「確かにあの子は射撃は3人中でトップで後衛向け、だけど指揮官への適性は低いのよ。それは灯花ちゃんも同じで格闘適性は貴女より高くて指揮適性が低い」


「つまり能力上は私が最も適役である、ってことですか?」


「うん。 さらに問題があってフレスヴェルグも指揮官型と近接型、両方をごっちゃにしたような性能してる。幸い武装を換装すればどの位置でも使える機体ではあるけどスペック全部を活かしきるとなれば…」


「前に出ながら指揮官として戦う…」


かなり無茶苦茶だ。前衛としての切り込み役と全員の戦場を俯瞰しながら指揮をする役を担わなければならないのだから。無理と言うのは容易い、だけど不可能と断じるには早過ぎる。何事もやってみなければわからないもの。私に示された道が『ソレ』だと言うのなら…


「やります。やらせてください」


決めたこの道を進むだけだ。自分に出来る力があるなら、可能性という道を狭めることはしたくない。そんな答えに鳳先生は嬉しいような、そしてどこか懐かしむような眼差しで私を見つめる。


「そう言うと思った」


意を決したかのように彼女は私に幾つかの本を差し出す。戦術の本、基本的な兵法から軍事関連の書籍、果てには英語で書かれている恐らくどこかの国の軍隊の教本まで様々なものだ。


「私の知り合いのオススメの本、これを頭に叩き込むことを最優先にして。その次にこのトレーニングリストを使って貴女の体力を実戦に耐えうるレベルにまで引き上げる。かなりの促成になるけど、構わないよね?」


彼女の目は本気だった。冗談などでは済まされない、本気の決断を迫るための目。しかし私は動じず、その問いへと答えた。


「構いません。それが私の選んだ『道』です」


私の決断が正しいかどうかは分からない。だけど信じてみたい、自分の可能性、そして私に秘めた未来を。どこまで進んでいけるか、進んだ先に何があるのか、どんな明日が私にあるのか、その全てが楽しみだ。



そんな想いは今日の夜、早速打ち砕かれた。


「うぅ…」


私の体は昨日以上にズタボロだ。早速全身が筋肉痛で悲鳴をあげており、寮に帰ってくるのがやっとの有様と言う位には疲弊しきっている。トレーニングを始めたは良いものの、受験のせいか運動不足が祟って体力が落ちていた身にはかなり辛い。


(駄目だ、寝よう)


幸い食事とシャワーは済ませて明日の支度は整えている。まだ9時にもなっていないが寝なければ体が限界に近い。ベッドに身を投げ、目を瞑ると私の意識は即座にブラックアウトしたのだった。



ふと、こんな夢を見た。


 一面真っ白な大地、そんな場所に立っている夢。外気は冷え切っているが不思議と寒くは無い。何故なら機体が私の体の体温を制御してくれているから。

そこに立っているのは私だけじゃない。様々な人型の機械、トランスアームズと思われる機械の鎧達。バリエーション豊かで統一性が無いのが不思議だが『仲間』であることは分かる。相対するのも機械の軍団、その数は無数で殆どが似たような姿形をした集団でありこちらを迎え撃とうとする。

そして私達は敵とぶつかり合う。何のためにか、どんな理由であるかは今の私は知らない。これは夢であり現実じゃない、だからすぐに忘れてしまうだろう。


それがたとえ()()だったとしても。

キャラクター設定


・鳳 瑞希


外部コーチとして請け負っている大学4年で航空・宇宙工学を専攻している。

セミロングの茶髪で一房だけポニーテール状にしている。身長は海乃より小柄と低め。

明るく朗らかでフランクな性格。また面倒見が良く、彼女の周囲にはかなり人が集まる。

小柄な見た目に反し運動能力は非常に高い。学校の屋上から片足で着地できる程度には。

教育者としては非常に優秀だとか。特に才能を見出し、磨き上げることに長けるも途中で脱落する人間も少なくは無いらしい。

灯花とはある理由から知り合いとなっている。またトランスアームズに関しては技術にはかなり精通、戦闘面でもかなり強いとか。

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