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蒼き瞳に映るソラ  作者: 朝里炒豚
序章・スクールライフ編
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第三話『蒼き少女の蒼き翼』

「いきなり他のチームとバトルを!?」


「はい… それが存続の条件、だそうです」


私達の部が存続し予算を与えられる条件、それは指定したチームとの3対3のバトルを行い勝利をすること。指定チームとは『第2トランスアームズ部』、生徒会が懇意にしている部のエースチームらしい。その話を聞いた氷室さんは声を荒げ椅子をひっくり返しそうな勢いで驚いた。

当然だろう。折角落ち着いたと思った所で、さらに爆弾を投下してきたのだから。しかもその爆弾を打ち返してみろ、と言われているようなものだから無理もない。


「蒼司、アンタも黙ってないで何か言いなさいよ」


「…正直、課題が山積みですからね。 相手の実力も機体も知らない、どんな戦術を使うのかも知らない、加えてこちらの実戦経験者は先輩だけ。機体だって『烈花』しか無い状態でどう戦えと」


そう、既に状況的には詰んでいるに等しい。情報が無い以上はまともに対策すら立てられないし、何なら機体も無いから私と氷室さんは戦えない、そんな中で何を話せば良いのだ。

しかし氷室さんは不敵に笑い、自分の鞄を漁り出しある物を取り出す。掌で握れてしまうほどの大きさの、十二面ダイスのような形状をした結晶のようなもの、それを見て先輩は目を丸くする。


「『コア・ジェネレーター』…! 機体があるんですか!?」


「はい。実戦経験は無いですけど、機体だけなら」


『コア・ジェネレーター』は言わば機体の核とも言うべき代物だ。普段は機体の装甲は量子化しており、操縦者がコアへ呼びかけることによって纏うことが出来、さらにコアは機体のエネルギー源である『トランスマテリア粒子』を生成する役割を持っており、このコアさえあればエネルギーの生成だけなら1つの家庭で使われる電力を賄えてしまうほど、だとか。

そのコアを持っている、と言うのなら彼女もまたトランスアームズを保有していることになる。実戦経験が無いのは不安だが、数の差を埋められるのは大きい。


「これでも2対3、数の差をどうカバーすれば…」


「もしかすれば適当な量産型で良いなら見つけられるかもしれないけど」


私が呟くと氷室さんはこう提案してきた。適当な量産型の機体であれど、数の差を補えるのであればまだ可能性は高くなる。例えソレが誰かの使い古しだろうと気にはしないし、文句を言うつもりは無い。彼女が何故複数の機体を持っているかもしれないことも含めて。


「で、試合はいつの予定ですか?」


「明日です」


私と氷室さんは絶句した。訓練期間すらまともに与えられないのか、と。間違いなくあの生徒会長、気持ち悪いキノコみたいな人はこちらの部活を潰す気なのだろう。卑怯だが今の私達にとっては非常に効果的だ。

絶句した私達の反応に先輩は分かっていたかのように顔を俯けてしまう。そして何となく彼女の考え、『また諦めた』のではないか、と言うのが伝わった。


「…二人共、相当無理のある話です。今からでも手を引いて…」


「いえ、可能性があるならそれに賭ける。やる前から諦めたくはありません」


「それにあのキノコ、一度ギャフンと言わせたくなってきたし。こうなったら最後まで足掻いてやるわ」


先輩の諦めを私が一蹴し、氷室さんが続けて言う。少なくとも私と氷室さんは諦めてない、その意志が確認できただけでも充分だった。

そして今日の部活動も終わり、解散となって私は寮へと帰る。



寮に帰って私は引越した際に家から持ち出していた筈のノートPCを探していた。ネット回線は寮に完備されているから後はPCだけ探せばトランスアームズやバトルに関しての情報を集める事ができる、と踏んだからだが一向に見つからない。それもそのはず、生活の必要最低限のもの以外全部まだダンボールから出していなかったからだ。

自分のズボラさにあきれ返り、5個目のダンボールを開封したときにようやくノートPCを見つける。そしてダンボールから取り出した時、その下にあるものを見つけた。


(置いてきたのに、紛れ込んでる)


『海乃へ』、と書かれた箱だった。プレゼント用の包装がされているが箱はPCの重みで少し潰れているし、開けた形跡も無い。いや、今後も開けるつもりは無い。『忌まわしい人』から送られてきたものを誰が喜ぶのか。

物自体に罪は無い。強いて言うならその人に送られてきたことが罪、だろう。それに向こうも善意でこちらに送っているのは分かっているし、流石に捨てるのは気が引けたためずっと放置していたものだ。ただ引越しの際にPCの重みで包装の一部が破れており、中にあるカードが飛び出している。

手にとって読むと『誕生日おめでとう』とだけ書かれていたバースデーカードだった。別段嬉しくも何とも無いし顔を思い出したくも無い。だが、この開けるつもりの無かった箱をふと興味本位で開けたくなってしまった。


(どうせ、ロクでも無い代物だ)


そう断じるが、箱を開ける。その中に入っていたのは先ほど氷室さんに見せられた12面ダイスのようなもの、とは違う形状だが少し長い蒼いクリスタルのような結晶だった。そしてそれが一目で何なのかに気付く。


「『コア・ジェネレーター』…!?」


理由は知らないし、どうだって良い。そして自分の中に一縷の光が灯る。これさえあれば戦えると、もしかすれば勝てるかもしれないと、そんな希望を抱き始めるのだった。

取りあえず補完しきれない部分のキャラクター設定(メイン3人)を張っておきます。


・蒼司 海乃

銀髪を三つ編みで結い、その長さは腰に届くほど。少したれ気味だが蒼い色の瞳を持つ。

体格は少しだけ小柄だが大きい山を二つ持っており火澄が涙目になるほど。

性格はマイペース気味だが大人しく真面目、冷静沈着に見えてかなりの激情家。

精神力が非常に強い。どんな時でも折れない心と爆発力は常軌を逸する。

家族との関係は最悪で、そのせいか少しスレた部分がある。特に自分を置いて出奔した『姉』を嫌い、憎悪すら抱いている。

頭の回転や判断能力が非常に高く、能力的には指揮官が最適なポジション。


・氷室 火澄

オレンジに近い黄色の瞳と灰色の髪を左サイドテールに結っているのが特徴。小柄で胸は薄め。

過去の出来事から人間不信で誰にでも辛烈。しかしぶっきらぼうながら本来は心優しく面倒見の良い性分。少し口が悪い。

過去は現状不明ではあるが大きな出来事に巻き込まれたらしくPTSDのようなものを患っている。

家族構成はなし。昨年まで祖母が存命だったが病死し、現在では天涯孤独の身。


・姫野 灯花


茶髪のロングヘアでM字型の前髪。瞳はオレンジ。身長は少し高めで胸はそれなり。

控えめな性格で少し弱気、何よりすぐ諦めに走ってしまう傾向がある。しかし芯はしっかりしており、何だかんだでふんばれる。

家族構成などは不明。

使用機体は『烈花』。軽量で近接格闘能力に特化、しかしその分火力や装甲が犠牲になっているが『当たらなければ問題ない』とのこと。

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