失われていた記憶
全てを聞いた悠人は固まったままただ涙を零していた
「……俺のせい……だったんだな……なんで……俺……こんなこと忘れていたんだ……」
自分が妹の苦しさにすぐ気づけなかった 死んだ妹を自分勝手な願いで生き返らせてしまった
どうしようもない罪悪感が胸の奥に広がっていく
そんな悠人を責めないかのように レナはギューっと抱きしめる 頭を撫でながら
「自分を責めないで お兄ちゃん 〝この世界のみんな〟は 何かしら記憶を失っているの …………この先…………思い出すことになる記憶に どうか皆さん負けないでください……そして どうか」
〝結末を変えてください〟
そう言ったレナの顔はとても苦しそうな顔になり 縋るように
レナは何かを知っている
そう思ったアリアはいち早く口を開く
「貴方は……何を知っているの?どうして 悠人が忘れていた記憶を貴方が知っているの?それに…アリスが元裁きの女神なら…貴方は?貴方はまた別の裁きの女神なの?」
何かを濁したように聞いてくる
彼女は妖である 長く生きている彼女は初めて聞いた女神に違和感を覚えていた
それにレナという女性はどことなく アリスに似ている
「……貴方は〝いつの時代だって すぐに気付きますね〟 …私は…………〝アリスの中で眠る本来の人格〟 そして裁きの女神は レナ・イルティアが正真正銘だよ ……××…いや アリア様 貴方様の疑問は全て答えましょう」
聞き取れない名前が聞こえたような気がした
その名前を言った瞬間 アリアは自分の手に槍を持ち レナへと向けた
顔がよく見えないがその表情は 驚き 戸惑い 殺意が見え隠れしている
「なんで…なんで!!その名前を知っている!?〝妾〟の名前を!!誰も知らないはず!!」
悠人は固まったままの体をハッと動かし 涙を拭き 急いで燐の耳を塞ぐ
これは彼女が聞いたらとてもまずい
アリアは極端に燐に自分のことを知られてほしくなさそうだから
「…!?悠人さん…!?あ…あの……」
急に耳を塞がられ慌てたように悠人の顔を見ようと見られず 塞がられている手をペチペチと軽く叩きながら わたわたとしている
悠人が必死に燐の耳を塞ぐ中 アリアの殺意はおさまらない 今すぐここで戦闘が始まりそうな そんな空気になっているが
レナは少しびっくりしたように目を大きく開いたが すぐに悲しそうに懐かしそうに微笑みながら 武器を持たず アリアへと近寄っていく
そして アリアにしか聞こえない声でボソリと言う
「……貴方様の名前 全てはと言わずに〝色使いの妖〟としてのアリア様は知っています これから先 …………」
さらに声が小さくなり聞き取りなくなったが 聞こえてきた言葉に
ガシャンッ!!と音を大きく立てながら アリアの手から武器が落ち 目を大きく開いている
ー全ての〝鍵〟の存在を手に入れて 全てを思い出してください 貴方達の未来を……〝結末を変えてください〟ー
そこまで言うと時間ぎれかのように レナの身体はゆっくりと透けていくように消えていく
「話はここまでですね………どうか お願い致しますね お兄ちゃん…また……一緒に…いた……」
泣き笑いの顔に変わっていき 完全に姿が消える まるで この世にいなかったように 泡のように消えていった
「………鍵??……何がいいたいの?? 結末?まるで……〝繰り返している〟みたいな まさか……ね…」
アリアは固まったまま ブツブツと呟きながら
消えたレナがいた場所をジッとみつづける
失われた記憶 それは色々である けれど この世界の人達は 根本的な記憶が……失われている
それがなにか知る人は1人だけいる
ーーーーーー
とある場所で赤いワイン色 薔薇模様の瞳をもつ長い黒髪の女性がクスクス笑っている
け つ ま つ を ど う か み せ て ちょ う だ い
確かに口がそう開いた
笑う女性が何者かはまだ……分からない




