甘い甘い金平糖
〝少しでも自分のこと好きになってくれたら…月の都に連れて行きましょう〟
そう これは彼女を救う為
本当は今すぐにでも連れて行きたい
だけどそれではダメなんだ あの時と姿が変わらず傷だらけの君をみて今受けている生活が安易に想像できた
…だから今から少しでもいいからあの女神より僕をみて??
ーキィ……ー
加奈と話が終わるとまた燐がいる牢屋へと兵士を近くに待機させ一人戻ってくる
「燐様…渡したいものと少しお話しがしたいために戻ってきました」
笑みを優しく浮かべ牢屋の隅で泣いている燐にゆっくりと近づく
「……………時雨……様……??」
ポロポロと綺麗な薄水色の瞳から大粒の涙を流しながらゆっくりと顔を上げ先ほど聞き覚えた名前を言う
「時雨でいいですよ お…コホン…僕が渡したいものはこれなんです」
気が緩み俺と言いそうになったが咳払いをし誤魔化し綺麗な月の形をしたボトルを取り出す
「……月……??」
首を傾げ興味を示したように時雨が手に持つ月のボトルを見始める 月は昔夜に見たことがある
満天の星空に綺麗な三日月があり近くにあった湖に映りとても綺麗だった
あの時は……お父様とお母様と………
楽しかった 幸せだった記憶を思い出しまた悲しそうに俯く
「…え お…お気にめしませんでしたか!?えっとえっと…ほら!中身はこれなんだよ!!」
慌てたのか口調が乱れ大急ぎでボトルの中を開け中身を取り出し手のひらを見せる
赤 水色 白 黄色 紫 緑と色とりどりの星の形をした金平糖が手のひらに転がる
「……?お星様…??綺麗……」
口調が乱れたのが気になり差し出された手のひらを覗き込み小さく呟き笑みを浮かべる
「お星様……違う 違う…って話し方が…燐…これが本来の俺だから気にしないでくれ でこれは金平糖だ 甘い甘い砂糖の塊 美味しいやつ」
一度乱れた口調を直そうとしたがもう無理だと悟り片手で頭をぐしぐしかき金平糖を一つ口に放り込む
「お星様…金平糖…食べられるの…?」
口に放り込む時雨を見ながら首を傾げ興味深そうにジーと見るが食べようとはしない
「……毒はないから安心しろ ほら…」
燐の小さな口に水色の金平糖を運び口を開けさせようとする 毒じゃないから これは美味しいものだからと説得しながら
「………パク……甘い……!初めて食べます…!これが甘い……」
いつもアキラなら事情を知っているから突き放すことはできる だけど時雨様は知らない
…せっかくだし…っとおそるおそる口を開き金平糖を口に含みカリっと噛むと目を輝かせ甘いと連呼し始める
「…!だろ…♪もっと食べろ 燐は食べなさすぎて成長してないんだからな なんでもいい口にするんだ」
食べた燐をみて安堵しながら次々と金平糖を取り出し燐にすすめる
すすめられた分をモグモグと笑みを浮かべながら食べていたが急に顔色が悪くなる
「…っ…!!カハ…!!…ゲホゲホ…!!」
咄嗟に自分の口を手で押さえむせるように咳き込み吐き出し始める
「…!?水!!ほら!燐!水!!」
いきなり吐き出した燐にびっくりしたがすぐに扉の近くに待機させていた兵士に呼びかけコップ一杯の水を燐に渡し飲ませようとする
「…っ………プハ…申し訳…ございません……」
時雨に渡された水を一気に飲み干し青ざめたまま謝罪をする
長い間食べ物をロクに食べなかった燐の体は胃が食べ物を受け付けずに少量でも口にするとこんな風に吐き出してしまうのだ
「いや 大丈夫だ それより手を拭こう ほら…」
ハンカチを取り出し燐の手を拭こうとする為手を取ろうとする
「…!!いや…!!汚いですから…!!……ごめんなさい……お帰りください」
パシンと払いのけハッ!と気まずそうに目をそらし時雨から離れるようにまた隅へと行く
「……わかった また明日来よう 俺はあなたを無理矢理自分の国へ連れて行きはしない 貴方が望んだらすぐに連れて行き…貴方だけを愛しましょう
おれはあの時からずっと燐だけが好きだから…」
手を払いのけられ一瞬だけ悲しい瞳をしたがすぐに笑みを浮かべ牢屋から出て行く
「…やっぱり…あの時あった……人でしたか…」
一人牢屋にいる中ポツリと呟く
昔なん年前かに牢屋に閉じ込められる前に一人で噴水に座っていたら幼い両目が月の瞳の男のとあった …もうあれから月日は随分経っていたんですね……
「時雨様…ごめんなさい…私は貴方の愛に応えられない…」
…私は正直愛が欲しい だけどわからない
優しくされるとわからなくなる
…私が欲しいのは…家族とくらす平凡だけど幸せな日常…ただそれだけなのです
家族から愛が欲しい 恋愛はいらないんです
月の神の愛が受け入れられない 彼女が欲しいのは……
〝普通の幸せ〟だから