予言を変える悪女
ーあれからまた数年が経ち静音の予言通り加奈のお腹には…二人の女の子が宿ったー
少し膨れているお腹を忌々しそうに撫でながら加奈は部屋で一人悩んでいた
予言通りになんかしたくない だけど子供を殺したら涼人が悲しむ…子供は二人…二人?
「そうよ…〝数を減らせばいいのよ〟…♪」
ニタァと笑みを浮かべ椅子から立ち上がり部屋の奥にしまっている魔道書を取り出す
加奈は静音が亡くなる前まで色々と呪い 禁断術を調べ尽くしていた その中で今まさに私にピッタリな魔法が…
真っ黒な魔道書をパラパラと淡く光りながらめくり口を開き呪文をいう
──時よ 一人の時間を進めろ ──
加奈のお腹に時計の模様が浮かび光の球と共に子供が出てくる
お腹から出てくると光の球に包まれたまま16歳ぐらいの女性に成長していく
薄水色の長い髪に薄水色と深い青色が混じった光のない瞳の肌が真っ白な静音にだいぶ似ている
成長した子供は球から不思議そうな顔でこちらを見つめている
「うわぁ…片方取り出したけど…静音に…だいぶ似ているわね……腹ただしい……まぁ 名前はいらないわ だってこの苛立ちを無くすために〝今から捨てるからいいけど〟」
クスクス笑い女性が入っている球を触り
─知識よ 言語を年齢とともに……この者を遥か遠くに……─
呪文を言うと女性が入っている球はその場から消えていった
「これで 予言は外れね?ふふ…♪あぁ今から悲劇のヒロインを演じて涼人に甘えよう〜♪」
魔道書を奥になおすとクスクス笑いながら部屋から出て行く
さぁ 今から廊下で倒れたフリをしないと 子供は死産したことにしたらいいわ 片方は仕方ないから産んであげるからね……
それから人目がつく廊下でわざと倒れ王宮は一騒ぎになった 医者が調べると双子が宿っていたお腹だったはずなのに一人しかいない事になっていた
「……涼人…ごめんなさい…私が体調管理をしてないばかりに子供を一人……っ…!」
ベッドに体を起こした状態のまま医者から言われた言葉を駆けつけてきた涼人に事情をいいながら涙声を出しながら顔を手で覆う
「…加奈…加奈は悪くない だから気にするな
今お腹に無事にいる子をこれから守っていけばいいじゃないか…」
悲しみに包まれたフリをしている加奈を優しく抱きしめながら頭を撫で励ますように言う
「…涼人…ありがとう…」
涼人に顔を見せないように抱きしめ返しニタァと笑っている 涼人予言は外れたよ ずっとずっと一緒だよ 私はあなたをニガサナイ
「…もうすぐ産まれる所だったから…警戒が緩んでしまっていたな 俺も…今お腹にいる子供は絶対愛し守り抜こう」
抱きしめたまま愛おしそうに片手でお腹を撫で誕生を今か今かと待ちわびている
「そうですね………」
涼人 子供静音に似ていたんだよ 生まれて成長したら涼人 そちらに行っちゃうのかな?そんなこと許さないけど 産まれたら産まれたら
〝涼人を取る存在なら……ドウシヨウカナ〟
二人の想いはすれ違っているのにまだ誰も気づかない
涼人は静音の願いを叶えるために子供を守ろうと誓っている
加奈は涼人以外どうでもいい 自らの子供でさえ涼人を誑かす脅威になるなら…殺しても構わない
本当は祝福されて生まれてくるはずだった可愛い双子 静音によく似た双子は国の皆に愛されるはずだった 一人の狂愛の為に運命を変わってしまった