ープロローグー
ープロローグー
8149万回目の世界
もうこの結末は8149万回目 いつからこの世界はこんな世界になっていたのだろうか
何もないただただ広い地面に血だらけの女性が倒れたまま考えている
女性は薄水色と白が混じった長い髪が赤い血 白い血で所々汚れていて 髪の隙間から見える薄水色で青薔薇模様の瞳
片目は柔らかな色合いの桜色のオッドアイが見え隠れする 白いドレスの服は切り傷やらでボロボロになっている
心臓には刃物が突き刺さり首にしているネックレスはヒビが入っておりあと少しで壊れてしまうだろう
倒れている女性は口を小さく開く
「私は……また……裏切られて……〝殺されるのですね〟だけど…私は……カハ……ッ…!!」
血の塊を吐き出すように咳こみ無理に身体に力を入れようとして立ち上がろうとする
〝ネックレス〟の宝石が崩壊したら私は本当に〝死んでしまう〟
私を最後まで守ろうとした宝石の精霊 カイル・クォーツ……カイルは私を庇って先に死んでしまった
私を守ろうとした人は皆殆ど殺された
立ち上がりながらソッとネックレスを片手に握りしめる そして先ほどの言葉を言うように
「…最後まで…こんな私を…守ろうとしてくれて…ありがとうございました……私は……皆を恨んでいない……裏切られても…殺されても………
〝愛していますよ〟」
小さく小さく呟き血とともに涙を零す
信じたかった まだ生きていたかった
だけど こんな〝絶望が何度も続く世界〟にしてしまったのは私のせい…
今までの世界でもそうでしたが
最後に〝記憶〟が戻るなんて皮肉なもの
私は何度死ねば…何度世界が変われば…
〝幸せになれるのでしょうか〟
「…さん…姉さん!!」
ふと声が聞こえ急いで近づいてくる足音と必死に自分を呼ぶ声に反応し顔を上げる
顔を上げた先には
自分とよく似た髪色でサイドテールを風に揺らし深海に沈むような青い色で片目だけ月と星模様が浮かんでいる瞳は涙を流しながら
駆け寄ってきて血だらけのボロボロの自分をすぐさま抱きしめる
「凛海……いいえ…リム…無事でしたか……」
力が入らない体を腕を懸命に動かし抱きしめ返す
双子の〝唯一血の繋がった〟妹は無事だった
それだけで安堵し 身体から力が抜けていく
「姉さん…姉さん…ごめんね…ごめんね…
守ることができず…〝また同じ結末〟になってしまい…けどけど!!大丈夫だよ!!もう大丈夫!まだ助かるよ…!だからね だからね…
〝 死なないで…1人にしないで…〟」
姉の状態を見て早く早く 処置を回復をしないとっと慌てたように更に力を入れるように抱きしめながら泣きながら 願うかのように 必死に呼びかけている 能力を使おうとするが
そんなリムの手を弱々しく掴み首を振る
「リム…ごめんね…お願いです…〝世界〟を〝皆〟を恨…ま…ないで……笑…っ…て……」
薄れゆく意識の中 優しく微笑み どうか どうか
幸せになってっと願い抱きしめている片手を頭に乗せ 2.3回撫で力なく腕は地面に落ち 時間切れかのように意識は落ち 目を閉じだ瞬間 首元につけている宝石がついたペンダントも砕け
血だらけで体は痛々しいのにまるで眠るかのような穏やかな表情のまま息を引き取ってしまった
「姉さん…?姉さん…!!いや…いやだ 起きて 起きてよ!!!……ッ!!
いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
目を閉じた姉の体を必死に叫びながら揺らす
目覚めないことを知りたくない
この世界の命の代わりとも言われる宝石が砕けたがまだ暖かい 温もりがある 考えたくない
だから お願い 起きてよ…
嫌だ嫌だ嫌だ失いたくない 起きて起きて姉さん…姉さん…!!!
また私は姉さんを救えないんですか…!!
「凛海…!!!」
リムの人間の時の名前を呼びながら
叫び声を聞きつけ2人の元に何人かやってくる
まるで興味がなさそうに目覚めない姉を見る視線
とんでもないことをしてしまった許しを貰おうとする視線
駆けつけてくる人達に泣きながら顔をゆっくりと上げ睨みつける
「…何しに…きたんですか……今までどれだけ姉さんに助けて貰って 救って貰って………ッ……!!」
怒りがこみ上げて涙が止まらなくなりながら
姉を抱きしめたまま更ににらめつけ声を荒げるように
「姉さんは!!自分が辛くても悲しくても苦しくても!!お前達を必ず優先として救おうとした!!姉さんは…姉さんは…!!この世界に巻き込まれた被害者の一人なんですよ!?
何が!何が!生贄の女神ですか!犠牲の女神ですか!!!この人殺しども!!!」
許さない許さない 私は姉さんが幸せにいきていればそれだけでいい お前らなんか消えてしまえ 死んでしまえ
「…この世界は絶望を繰り返す世界 幸せになんかなれないのよ!!さっさと〝現実〟見なさいよ!!!あんたの姉は死ぬ運命だったのよ!!あの時私を…私を…コバンダカラ!!」
誰かがリムに負けない大声をあげ叫ぶように言う 声の主は黒い長い髪を上だけツインテにしていて 真っ黒な夜みたいな瞳でその目には光がなく真っ黒なゴスロリ衣装をまとっている女性だ
「煩い!!!リア…いや リア・ルナ!!その器の体越しから話しかけてくるな!!
いいさ いいよ…次こそ…絶対…姉さんを
姉さんだけを〝幸せにしてみせる〟」
リムの言葉と共にグニャリと世界が暗転する
世界がまた〝新しくなる〟
カチと時が止まるかのように世界が新しく変わる中 リム以外の人は動きが止まりサラサラと身体が光の粒に変わっていく
ただ1人姿が変わり泣きながら願うように手を合わせて口を開く
『願わくば 次の世界では〝絶望〟を繰り返さず
新たなる物語になる事を願いますよ』
真っ白な長い髪は真っ黒な世界で揺れ
泣いている瞳は片目だけ白百合の模様になっていて
真っ白なドレスになっている
『──を救うためなら私は何度だって世界をやり直す あの時からずっとずっと……』
この世界には愛や友情 幸せ そんな物は無かった いや知らなかった
見てきた世界があまりにも汚かった
裏切り 絶望 不幸 そんなものばかりだった世界でも必死に幸せを求めた
愛されたかった 愛したかった
ただ平穏に暮らしたかった
死にたくなかった 生きたかった
苦しかった 辛かった 誰か ダレカ
私達を救って…幸せを教えて……ねぇ…何で…こんなにも…この世界は…冷たいんですか…まるで…幸せが…わからない…真っ黒な世界で…
何度も何度も叶う事のない願いを口にしながら
死んでいく 世界は変わっていく
何も変わらない 後悔しか生まない それでも
世界はまた繰り返されていくんだ……
ようこそ8150万回目の世界へ
次はどんな物語になるかは誰もわからない
ただわかるのは一つだけ
お伽話は全てがハッピーエンドとは限らないの
この悲劇は 絶望は同じ結末は もう
〝8149万回〟続いているっていうことだけ