彼女の素顔
ー約束された次の日の真夜中ー
加奈はもう部屋に来ており涼人と一緒にベランダにいた
街並みが一望でき真夜中にも関わらず花は空から降って来るように舞い 暗闇の街並みはポツリポツリと光がひかり幻想的な光景
「すまないな…こんな真夜中に呼び出して」
申し訳なさそうに頭を下げ寒くないか?と聞きながら加奈を見つめる
「涼人様…大丈夫ですよ?それでお話しとは…??」
ニコと笑みを浮かべ大丈夫ですよと言いながら涼人の側に近寄り話を待つように見つめる
「………静音が亡くなって俺は心にポッカリ穴が開いたかのように部屋に引きこもってしまった…
加奈は…そんな俺をみても 昔のように…上下身分の差を感じない接し方をしてくれた…それがとても嬉しかった…」
優しい笑みを浮かべ加奈の手を取り話し始める
そんな涼人の言葉を同じく笑みを浮かべながら静かに聞いている
「…俺はこの国の王だ…だから国の民も大切だ
………引きこもった俺に優しく接してくれて蘭も加奈が来た時は喜んでいる…そんな…加奈なら…」
一旦手を話し服のポケットからゴソゴソと小さな箱を取り出しゆっくりと開ける
小さな箱の中身は〝サファイアのペンダント〟
この国の女神が歴代つけているペンダント
すなわちこのペンダントを渡すということは……
「…!そのペンダント……涼人もしかして……」
瞳に涙を浮かべながら口を手で押さえる
「……加奈…もし良ければ…この国の女神…王妃になってくれないか…??(静音ごめんな……向こうで君と会えたら……死ぬほど謝る……静音だけを愛している…だけど国のためなんだ…)」
笑みを浮かべたまま瞳だけ加奈にはわからないように悲しい瞳のまま言う
できれば静音以外ともう一度結婚なんてしたくない だけど…国中が望んでいる事なんだ
「…ッ……涼人様…ううん…涼人…私あなたの事昔から愛していた…だから…静音様と結婚する時も本当は悲しかった…だけど涼人が幸せになるなら良かったの……静音様の代わりにはならないけどこんな私で良ければ王妃にしてください…」
涙をポロポロと零し涼人に抱きつき嬉しそうに泣き笑いを浮かべ返事をする
「………ごめん…ありがとう 加奈」
抱きつかれ優しく抱きしめお礼と謝罪を込めた言葉を言う
知らなかった 加奈が昔から自分の事を好きだったなんて嬉しそうに言う加奈に心が少しだけ痛んだ
ごめん 俺は 君を一番には愛せない
「いいんですよ 涼人 ありがとう…今日は部屋に戻りますね サファイアのペンダントは結婚式の時に…渡してくださいね?」
ゆっくりと離れ軽くお辞儀をしてその場から去っていく
「…………これで良かったんだよな…??」
誰かに問いかけるように一人ベランダから空を見上げ呟いたがもちろん返事は返ってこなかった
ー加奈の部屋ー
涼人の部屋から去り早足に自分の部屋に戻ると笑い声が加奈の部屋に響いていた
「アハ…アハハハハハハハハハハハ!!ようやく!ようやく!手に入れたわ!!涼人を!!」
先程までのしおらしい態度はどこに行ったのかと言うほど豹変していた
「長かった…長かったわ!!涼人も気づいていない 国の皆も気づけなかった…私が
〝静音を殺したということ〟を!!
あの流行り病作り出してこの国にばら撒いたの私という事を!!こんなに簡単にいくなんてね!!」
笑いが止まらないかのように一人笑いながら鏡に向かっていく
鏡に映し出された加奈はそれはそれは醜い笑みを浮かべていた
加奈の能力は毒 自分の能力を混ぜた花をこの国に一時的に降らし最初は他国でテストをして成功をしたので自国を次々と病を流行らせた
静音は未来予知ができることも知っていて国のたみを愛している事もわかり
〝貴方が死なないと永遠に病を流行らせるわよ?〟
と静音だけにわかるように未来予知をさせたのだ
お人好しの静音は最後まで犯人を言わずに死んでしまった
「邪魔者は死んだわ なら次は涼人の心を繋ぎとめればいいのよ私に その為に娘である蘭も手なづけた …良かったわ あの女に似てなくて 似ていたらあそこまで仲良くできなかったからね…♪」
そして今日プロポーズをされた もうこれで涼人は私のもの……幼い頃からずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっとずっと私の方が先に好きだったのに
他国から来た静音に涼人が取られた
涼人を誑かしたあの女はもういない
これでもう死ぬまで永遠に涼人は私のもの…♪
「キャハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ♪」
甲高い醜い笑い声はその日の夜明け方まで響いた
この時国の為だと加奈を王妃にしなければ今から生まれてくる燐は……悲劇に合わなかった
加奈の狂愛が燐の過去の悲劇の幕上げとなるのだ