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052 突撃!隣の文化祭 前編

前後編にわかれてしまいました……

 松原高校 文化祭 一般公開当日

 

 場所は松原高校から少し離れたコンビニの駐車場。

 

 ここに俺達松原女子高校バレー部の8人と祐樹・雄太の2人、合わせて10人が集まることになっていた。

 

 俺達が8人の時点で察していると思うが、話を持ち掛けた直後には文句を言っていたバレー部の面々は全員参加である。

 

 ……なんだかんだ言って俺以上に楽しみにしてそうだ。

 

 ちなみに女子高生組の格好は全員松女の制服だ。変に気合を入れられると面倒なので口裏合わせをしておいた。化粧とかも言っておかないと変なことをやりかねんので普段と同じにしろ、さもなきゃ入れないといったためか、歌舞伎役者はいない。

 

 ……普段より髪を丁寧に梳いてるなあとか、前日に高いパックを使って肌をきれいに見せているなあとかは見受けられるが、まあ誤差の範囲だろう。

 

 

 揃ってないのは……

 


「わりぃわりぃ。待たせたな」


 そんな声と共に現れたのは最後の1人、祐樹。

 

「遅えよ!女待たすんじゃねえよ!」

 

 挨拶代わりに祐樹のケツにけりを入れる。

 

「っ!!ってえな!いきなりけりを入れてくるような奴なんざ女扱いするかよ!」

「お前!遅れてきてその言い草はなんだ!」

「遅れたっつっても数分じゃねえか!」


 口で罵る内容程には険悪な雰囲気はない。俺も祐樹も挨拶代わりのようなものだ。軽いスキンシップみたいなもんだ。

 


「ゆ、優莉、その人、大学生なんだよね?」

「?違うよ。こいつは浪人生。もっと言えば、ぷー」

「でも、年上で男の人なんだよ?」

「??だから??」


「……優莉。多分優莉とその人、ものすごく相性がいいと思うけど、彼氏じゃないの?」


「「冗談でもそれはない!」」


 俺と祐樹の声がきれいに重なった。


「あのね、女子高生(君達)恋愛話(そういう話)が好きなのはわかるけど、俺にだって選ぶ権利があるの」


「なんだと!どこに不満があるって言うんだよ!」

「やかましい!お前の様なお子様ランチはお断りだっつってんの!」

「おまっ!言ってはならない一言を!」

「俺に口説いて欲しかったら陽菜ちゃんくらい――」


 俺のハイキックが祐樹の頭(高さ的に結構ギリギリ!)をどつく。さっきのケツキックと違ってちゃんと痛い程度には力を込めている。

 

「てめえ!陽菜に手を出してみろ!そんなもんじゃ済まないくらい思いっきりどつくぞ!」

「いって~!あのなシスコン。もう少し手加減しろよ。第一、陽菜ちゃんは妹分でそういう風には見れねえよ。軽いギャグじゃねえか」


「……いつもの優莉とは違うね……」

「人が変わったみたい……」

「ど、どっちかというとあっちが本当の優ちゃんで、普段の優ちゃんは女子校でもやっていけるように私達が矯正させた性格というか、猫を何匹かかぶせた状態なの」


 なにやら失礼な発言が聞こえるが、そんなに違うのだろうか?

 

「ほらほら2人とも、その辺にして。後輩だって待ってるんだ。どつき漫才してないでいくぞ」

 

 最後は雄太にまとめられた。むぅうう……

 

 いや、仮にだ、祐樹が本気で陽菜に惚れて、陽菜もまんざらでなければまあそういう道もあってもいいかもしれんが、あいつこの間の夏に知り合ったキャナルさんと付き合っているらしいし……

 

「優ちゃん、何1人で唸ってるの?ほら、いこ!」


 陽菜が俺に移動を促す。全く、人の気も知らずに能天気な()だ。



=====


「俺達、3年2組の教室で出店をやってるんだ!サービスするから来てくれよな!」

「体育館で11時からオーディンのコピーバンドをやるんだ。後で来てくれよな!」


 

 俺達は松高の正門前で文化祭の入場チケットを受け取ると同時に、祐樹と雄太の部活の後輩だとかという二人の男子高校生からやたらとハイテンションな招待を受けた。

 まあこいつら3年生だというし、男子校で(おそらくだけど)丸2年超ろくに同世代の女との出会いがなかったことを考えると仕方がないのだろう。


 松高の文化祭だが、松女の文化祭同様で誰でも自由に出入りできるものではない。在校生以外が入るにはやっぱりチケットが必要で、それはOBである祐樹・雄太も同様だ。

 そのため、去年まで所属していた部活の後輩達にあらかじめ連絡を取り、俺達分も含め計10枚の入場チケットを手配するよう依頼していた。

 

 んでチケットを受け取るべく呼び出したんだが、まあ面白い反応だった。

 

 2人とも意地が悪いことに「近所に住んでる日本に来て1年くらいの元外人とその友達に高校の文化祭を見せてやりたい」くらいにしか言ってなかったらしい。


 そんな説明を受ければ連れてくるのは野郎ばかりと思うのも仕方あるまい。が、来たのは俺達だ。

 

 俺達に合流する直前までは面倒な先輩から厄介な命令を受けたというのを態度に出していたが、俺達が案内対象だと知ると態度を一変。接待モードに切り替わるわ、祐樹と雄太を褒めたたえるわで見事な手のひら返しだった。俺もそうだったとはいえ、男子高校生なんてちょろいもんだ。

 

 

「で、これが松高の文化祭かあ。う~ん。今のところ松女(うち)の文化祭との違いが判らないなあ」

「正門くぐってすぐに違いが判ってたまるかよ」

「とりあえず端から順に回っていこう。みんな。俺達についてきて」

「っつっても11時から体育館ははずすなよ。文化祭っつったら軽音部と有志のバンドだろ?」

「あ、松高だとライブをやるんだ」

「え?女子校(そっち)だとやんねえの?普通文化祭っつったら素人バンドだろ?」

「女子でバンド組んでる奴は少ないって……」


 こうして俺達は松高の文化祭を見て周ることになった。

 

 

======

 

 度々言っているが、松原女子高校バレーボール部の顔面偏差値は高い。

 

 そんな連中が女子に飢えているであろう松高の文化祭に遊びに行ったらどうなるか。

 

 

「君達可愛いからサービスしちゃう!」


「これオマケでいいよ!持って行って!」


 

 解:オタサーの姫状態になる

 

 

 どこに行っても熱烈歓迎状態。

 

 ポップコーンとかどう見ても1人前って量じゃねえよ!ってくらいもらえたりした。


 その中でも1番の人気はやはりというか陽菜だった。


 そりゃそうだろ。第一にどこがとは言わんがデカい!そして顔も顔面偏差値の高い俺達の中ですら上位に位置するほど可愛い。にも関わらず、腰はキュっと細い。そしてスカートだから目立たないだろうが、お尻は形よく大きく柔らかい。俺が過去に風呂場で何度心をへし折られたか数えられない程の体型。


 陽菜さんや。あなたは本当に16歳なんですか?

 

 2番人気は意外というか未来だった。


 まずコミュニケーション能力が高いのか、他の女子が物怖じして話せないところをガンガン松高生と話をしている。言えば祐樹や雄太とも、もう普通に話している。と、こうしている間にも連絡先を交換してる!

 

 ニコニコというよりは不敵なという方が似合うようではあるが、表情は笑っているし、あとはあれだ。未来は脚が凄くキレイなんだ。


 俺のようにただ細いだけの脚でなく、健康的で程よく肉付きがあり、女性らしくしなやかに伸びた脚線美は松高生には眩しいだろう。スカート丈も膝上丈で。自分の魅力をよくわかって……

 

 って変態か!俺は!

 

 

 ……そして俺の分析が間違ってなければ一番の不人気はたぶん俺……


 

 い、いや仕方ないんだよ!


 俺だって自覚している。確かに顔だけならバレー部員(こいつら)にだって負けてないと思うが、如何せんその……


 あれだ、例えるなら揚げる前の揚げ物。

 

 例えば極上の肉のトンカツや、大振りで鮮度もいいエビフライも揚げる前では食欲はわかないだろう。

 

 あと一手間で美味しくなる。絶対美味しくなる。が、女に飢えた(お腹がすいた)状態で今すぐ食べられるカツと一手間かけなくてはいけないカツ、どっちを食べたいと言われればそりゃ……

 

 ま、まだ慌てる時間じゃねえってことなんだよ!


 前に遺伝子検査やった時に間違いなく立花家の子って判定されたし、ということは涼ねえ・美佳ねえ・陽菜と同じ遺伝子を持つ俺の将来は勝利が約束されてるわけで……

 

 

「優ちゃん、どうしたの?何か考え事?」

「ちょっと将来のことについて、ね」

「???」


 面と向かって聞くのはかなり抵抗があるのでやらないが、陽菜や涼ねえの生活をよく観察しよう。そして真似れば俺もきっと……

 

 

 その後、各教室の出し物を見てるが、出店、お化け屋敷と松女(うち)でもやったありきたりな出し物ばかり。飽きてきたところで続いての教室ではなんと!段ボール迷路が展示されていた!

 

 あっ。陽菜をはじめバレー部員はみんなこれには微妙って顔をしている。

 

 が、俺はこういうのが大好きだ。うん。男心をよくわかっているね。男の子はいつだって秘密基地的なものが大好きなのだ。


 ほれ!現にお化け屋敷とかには微妙って顔してた祐樹達もこれには興味津々だ!


 

「え?優ちゃんこれやりたいの?」

「やりたい」

「四つん這いになって移動するみたいだけど……」

「私、元々みんなよりスカート丈を長くしているし、下にはスパッツも履いているから大丈夫!」




「あ~君。ここの担当だよね?悪いんだけどさ、俺の連れの女の子が迷路に入りたいんだってさ。

 んで混んでるとこ悪いけど、彼女が出るまで次の人は入れないように制限してくれない?」


 俺の横では祐樹が受付担当であろう男子高校生になにやら交渉を持ち掛けている。


 イラン世話を……


 それに並んでるってことは次は祐樹(お前)だろ?巨乳スキーのお前がガキンチョ()の、仮に見えても精々スパッツなんだからどうこうはしないだろうに……

 

 

=====


「ダメだな。俺達が文化祭の営業を阻害している」


 突然雄太がそんなことを言った。なぜそんなことを……と思ったが変ではないな。

 

 男子校に突如現れた女子高生8人。しかも全員可愛い。

 

 そりゃ目立つ。めっちゃ目立つ。さっきから俺達の移動にあわせて人が動く。俺達自体の歩みはモーゼが海を割る如く在校生が道をあけてくれるので何ともないが、さっきから後ろがやかましい。

 

「まあ女子高生が8人もいればそうなるな」

「どうするの?」

「二手に分かれよう。そうすれば後ろの連中も二手に分かれるだろうしな」

「分け方は?」

「まず案内役の俺と雄太が分かれる。で、立花兄妹(お前ら)以外の女の子にはなんて話したらいいかわからないし、あっちも今日会ったばかりの俺達だと話しにくいことがあるかもしれないからこっちもわける」

「まあ、妥当だな。じゃ、さっそくグーパーで……」


「ちょっと待った!分けるのは仕方ないとして、私が優ちゃんと分かれて、優ちゃんが暴走したら誰が止めるの?はっきり言って祐樹にいは悪ノリしそうだからせめて優ちゃんは雄太にいとくっつけて!」

「だってさ。祐樹、陽菜からの信用がないみたいだぞ?」

「一番信用されてないのは悠司(お前)だからな」



 軽いやり取りがあった後、俺達は二手に分かれて文化祭を周ることになった。

 

 

オマケ

優莉がモテない理由:祐樹・雄太と仲が良すぎてどう見ても2人のどっちかと付き合っていると誤解されているから

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