表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
55/208

039 優莉、海に行く

水着回

====

 立花 悠司の親友

  佐藤 雄太 視点

====

 

 きっかけはなんだったか。とにかく俺達は8月に俺と祐樹と悠司の3人に陽菜ちゃんを加えた4人で海に行くことになった。

 

 確か6月頃に俺と祐樹が悠司の家でバカ話をしていた時だったか?去年の夏の話になって男子校故にか彼女なんて出来ず、そもそも女に出会う機会がなかった高校の3年間。受験勉強でストレスが溜まっていた俺と祐樹は何をトチ狂ったか


「海に行ってナンパして彼女をゲットだぜ!」


 とか言ってろくに準備もせずに海に行って玉砕した話をしたら悠司の奴が腹をかかえて大爆笑した。これに腹を立てた祐樹が

 

「だったら今年はリベンジだ!」


 とか言い出して海に行くことなったんだよな。確か。

 

 で、泳げない悠司はさんざんぶー垂れたが、そこは一蓮托生。無理やり巻き込んで海に行くことになったんだ。

 

 そういえばあいつの言い訳は笑えたな。

「俺だからまだいいけど、女をいきなり海というか薄着になるところに誘ったりするなよ?下手したら嫌われるぞ?女には準備が必要なんだ」

 だったか。準備ってなんだよ(笑)。

 

 で、じゃあ8月のお盆頃に行こうという話なったころに陽菜ちゃんが悠司の部屋に入ってきてひと悶着があったんだ。

 なんでも今の悠司をうかつに人前に出すとトラブルのもとになるらしい。トラブル回避のためにも自分も連れてけ、だそうだ。

 

 俺も祐樹も車の免許を持っているから移動は自動車だ。3人が4人になったところでさほど困らない。陽菜ちゃんの同行を許可した。

 

 あぁそうだ。ここで悠司の奴が

 

「海に行くまで後一ヶ月半もある。祐樹、雄太。女にモテたきゃ筋肉でコスプレしろ」

 

 とか言って毎日腹筋背筋腕立てにスクワットを強要しやがったんだ。

 

 まあせっかくだから聞いてやったさ。別に悠司のアホを信じたわけではないが、俺とて健康な日本男児。女性にモテたい思うことのどこが悪い?モテるために努力することのどこが悪い?

 

 


 で、迎えた当日。


 集合時間は朝6時半。俺達の地元からそれなりに人気のある海水浴場まで普段なら1時間少々だが夏の混雑を考え、2時間程度を見込んでいる。


 集合場所は悠司の家の前。別にあいつを迎えに行ったわけではない。妹分の陽菜ちゃんを迎えに行ったらおまけで悠司がついてきただけだ。

 

 ここで家から出てきた悠司の格好だが、なんというか子供が無理して大人の格好してます的な残念なものだった。さすが悠司。相変わらずの残念さだ。何度でも言おう。素材の良さを全力で投げ捨てる残念な奴だ。


 本来の悠司は俺達と同じく今年で19歳、公称では16歳(高校1年生)になるはずだが、童顔なこともあわせ中学生程度にしか見えない。

 

 なので大人びた格好よりは見た目の年齢相応の可愛いらしい恰好が似合うはずなんだが……

 

 あと、服のサイズもあっていない。


 が、この点を指摘してもあのアホは

 

「このちょっと背伸びして着てますって感じが良いんじゃないか!」


 とドヤ顔だった。そりゃもう清々しいまでのドヤ顔だった。いっそのこと額縁に入れて『これがドヤ顔の見本です!』と飾れるレベルのドヤ顔だった。


 この残念(今日何回目だよ)ぶり。見た目は違ってもやっぱりこいつは悠司なんだな、と改めて実感させられた。




 その悠司の後ろでは陽菜ちゃんが悠司の放言を聞いて本当にすまなそうに体を小さくしていた。

 

 こちらは流石生粋の女の子。どっかのバカと違ってちゃんと自分に合っている格好だ。

 

 ちなみに陽菜ちゃんは今年で16歳のはずだがこれまた悠司とは逆に実年齢より大人びて見える。俺達と同い年、と言っても通じるだろう。

 

 事実陽菜ちゃんの格好は女子高生というよりは女子大生と言った方が通じそうな華やかでありながらも落ち着いた格好だ。

 

 悠司が着ている服もきっと陽菜ちゃんなら似合うだろう。え?それもそのはず?今、悠司が着ている服は陽菜ちゃんのクローゼットから引っ張ってきた??

 

 …悠司、お前は(陽菜ちゃん)の服を着てドヤ顔してたのかよ……

 

 

=====


 で、予想より早く8時頃に海水浴場についた。が、どこも駐車場がいっぱい。お前ら、朝から暇すぎだろ!一体いつからいるんだよ!

 

 仕方なく、その辺を探し回って少し離れたところでようやく駐車場を見つけた。

 

 ちなみに後部座席では悠司と陽菜ちゃんが眠りこけてる。

 

 まあ朝早かったし、陽菜ちゃんと一応悠司も女なわけで髪のセットとか化粧とか俺達より早く起きてやっていたんだろうから仕方ない面もあるが……

 

 さらに海水浴場についてからも待たされた。

 

 (俺達)と違ってその辺で着替えるなんてできない2人は海水浴場備え付けの更衣室へ行き、俺達はその出口で待っている。

 

 つーか、悠司の奴、ごく自然に女子更衣室へ入っていったな。

 

「あちぃ……」

 

 隣で祐樹が愚痴る。まだ9時前なんだがすでに熱い。9時前でこれって正午過ぎとかどうなるんだよ。

 

 

 

「わりぃ。待たせたな」


「おせえぞ。ゆう……」


 更衣室から出てきた悠司を見て絶句してしまう。どうやら隣の祐樹も同じようだ。

 

「……寸胴で悪かったな」

 

 この絶句を変な風に勘違いした残念な奴がいた。いや本当にお前、目がついてんのか?


 男だった頃の悠司もフツメンとイケメンの境界でギリギリイケメンと言えるくらいに容姿は整っていた。

 

 あの頃の悠司は容姿にとんと無頓着で、髪の毛だってボサボサのままであることが多かったし、服も「清潔で華美になってなければなんでもいい」というくらいこだわりがなかった。それでもフツメンとイケメンの境界線上ではあるがイケメンと言えていたのだ。まあ不精と重度の中二病で台無しにしてたが。

 

 「黙って真面目な顔をして見た目をちょっと整えれば立花君ってきっとカッコいいのに」と中学の時に女子が話しているのを聞いたこともある。

 

 その悠司が女になるとものすごい美少女に化けた。

 

 まず顔。そこらの芸能人じゃ勝負にならない。たまにテレビやネットで見る「世界一の美女(美少女)」とかあの辺でようやく互角というレベル。いや、身内のひいき目と言われるかもしれないが、むしろそれらと比べても勝ってすらいると思う高い高い顔面偏差値。

 

 体のバランス(プロポーション)も犯罪級。瑞々しく健康的で長い手足。本人は寸胴だと蔑んでいるが、現実的にはそんだけあれば十分だろという胸部と臀部。

 

 むしろ実際にあり得るレベルのボリュームが現実感を増して魅力的に映る。

 

 おいコラ悠司てめえ!どこがくびれがないんだよ!ちゃんとあるじゃねえか!

 

 当の悠司はセパレート型の水着に腰巻パレオとかいうらしいと上着を羽織っているため、周りの女性と比べてそれほど露出が多いわけではないがなんというか、1人だけぶっちぎって注目を集めてる。

 

「あ~。やっぱ俺の容姿だと目立つなぁ。ま、日本に黄色人種以外がいると注目を集めるし、仕方ないか」


 このアホはやっぱり悠司だ。根本的なところを勘違いしてやがる。

 

「祐樹、雄太。俺でがっかりさせてすまん。が、安心しろ。ちゃんと埋め合わせにすごいのがいるから」


 いや、がっかりしてねえよ。むしろビックリサプライズだよ。埋め合わせって――

 

「祐樹にい、雄太にい。ごめん。更衣室すごく混んでて遅くなっちゃった」



 そう言って女子更衣室から出てきたのは陽菜ちゃんではなかった。

 

 なんというか、ここ3年近く悠司とは疎遠になっていたこともあって、必然的に悠司の姉妹とも疎遠になっていた。俺の記憶する陽菜ちゃんは3年前の小学校6年生頃で、あの頃は背丈こそ俺とそう変わらないが、やっぱり小学生という体型だった。

 

 で、そのイメージがあるからこその陽菜ちゃんなわけですよ。つまり何が言いたいかというと、

 

 こんなの陽菜ちゃんじゃねえ!陽菜さんだ!


 横に並ぶ祐樹を見るとその顔が如実に物語っていた



 勝った

 

 

 間違いない。去年の浜辺で俺達は惨めな敗者だった。だが今年は違う。たとえ中身が残念悠司と妹のような子だとしても周りを圧倒する美少女&美女を連れて歩ける俺達は間違いなくこの浜辺の勝者だ!



本当は1話でまとめようとしたのを2話にしているのでもう一回投稿があるかも

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ