032 わけあってTSした少年 女子高生になってバスケットボールを始める……ところだった
松原女子高校はとても面倒見の良く、生徒のことを考えてくれる高校だと思う。
例えば今日の午前中のプール規定。本来ならちゃんと1時間分はプールに入らなければならないはずだが年頃の女子高生の事情を考えてどうしても嫌な生徒には最小限しか目に触れないように気を配ってくれる。
そんな気遣いの1つが夏休み、冬休みの補習だ。
これは1学期、2学期の成績が芳しくなったものに対し、次学期以降、勉強が遅れないよう補習講義を開催してくれるありがたいものだ。生徒の一部からすれば有難迷惑かもしれないが、だったら赤点を取らなければいいだけの話である。
なお、中間と期末合わせて40点未満をとなると単位未修得がありえる、世間一般で言うところの“赤点”となる可能性が高いが、それとは別に松女で赤点と言えばテスト単独で40点未満を指すことが多い。
また、この補習講義だって避ける手段はある。夏/冬休み最初の週に行われる科目別テストで40点以上を取れば補習講義を受けなくてよい。
要するに本当に留年するレベルでヤバい連中だけでなく、留年予備軍も補習講義対象者として、留年を防止しているのだ。面倒見のいいことである。
で、俺達はバレー部とバスケ部の命運を掛けて科目別テストを全員が全教科分受けることになった。出題範囲はこの前の期末テストと同じだそうだ。
ルールは簡単。
バレー部5人とバスケ部3人全員が全科目を受けてより平均点の高い方を勝ちとする。負けた方は来年の1月まで勝った部活へ入部し、反対に今所属している部の活動は自粛する。また、それとは別に40点未満の科目があった場合は夏休み中は部活動より対象科目の補習を優先する。
このルール。両主将の明日香と前島さんがめっちゃ抗議したが、2人とも補習対象者であったためかバスケ部顧問の上杉先生はもちろん、バレー部顧問の佐伯先生からも却下を食らった。
テストの点数で競い合うという極めて学生らしい勝負をすることになった俺達はいったん部室に戻り、作戦会議をすることになった。正直、明日香は戦力外どころかお荷物だ。夏休みまで、言い換えれば補習テストまで1週間をきっている。バレーなんぞしている場合じゃない。
さて……
「孫氏の兵法曰く『彼を知り己を知れば百戦殆うからず』。相手のことを知って自分達のこともきちんと理解すれば戦いは勝てる。というわけでバスケ部の3人ってどれくらい勉強が出来るか知ってる?」
ちなみにバスケ部の3人は
前島 未来さん →1年4組
鍋川 歌織さん →1年4組
白鷺 愛菜さん →1年1組
と1組の玲子か4組のユキなら何らかの情報を持っているかもしれない。
「白鷺は多分全教科出来ると思う。少なくとも生物基礎は96点だった」
「生物の平原先生、成績上位者は言っちゃうからね……」
平原先生はテストで頑張ったものは褒められるべきだという考えを持っている。それはいいが
『このクラスで一番頑張ったのは98点を取った立花 優莉さんです。立花さんは学年でも1番ですよ。2番はお姉さんの立花さんで92点。3番目は瀬田さんの88点です。皆さん、拍手』
てなノリで点数公開していくスタイルは勘弁してほしい。
「前島さんはそんなに良くない。生物基礎と世界史Bは少なくとも補習を受けるレベル。英語も授業の様子から多分苦手。」
前島さんは暗記系がダメか。悪いが彼女が勉強を苦手とするのは今日この時ばかりはありがたい。
「鍋川さんは話したことがないからわからない」
……ユキは決して暗い性格ではないが、自分から話しかけるようなキャラではないから仕方あるまい。
鍋川さんはよくもわるくもない平均程度だと思っておこう。
「続いて私達だけど、みんなどれくらいできるの?ちなみに明日香はひっどいからテストはみんなで明日香をフォローする形になると思う」
「優ちゃん、ひどいは言い過ぎだ――」
「すまない。私も戦力になれそうにない。実はこの前の期末テストはギリギリで赤点を免れている」
はやくも玲子からギブアップ宣言。いや、諦めんなって。成績どんなもんよ?
「国語総合が72点、世界史Bが77点、数学Ⅰが55点、数学Aは49点。生物基礎が一番悪く44点。コミュニケーション英語Ⅰと英語表現Ⅰはどちらも80点だった」
「玲子は理系科目が苦手かあ。数学は厳しいかもだけど、生物基礎は暗記でいけるから、そこを強化かな?」
「明日香は数学2科目で赤点取っているからまずはそれを強化だね。仮にバスケ部に勝っても明日香が数学の補習で部活を抜けてたら意味がない」
「ご、ごめん。私、国語も相当ヤバい。期末は41点だったし……」
マジかよ。つかよく松女に合格できたな!
「陽菜、優莉。お前たちはどうなんだ?」
「うっ……それはその、玲子達よりはいいから安心して」
陽菜が何故か嫌そうな顔をする。ふっふっふ。気持ちはわかるが、みっともないぞ、陽菜君。
「陽ねえはすごいよ!全教科90点以上だった!」
「……優ちゃん嫌味?優ちゃんとは科目別で1勝4敗2引き分け、合計でも私の負け。中間テストは私の勝ちだったけど」
はっはっは。負け犬、いや負け妹がなにやらさえずりよるわ。つーか中間の時は俺の方がマジで凹んだんだぞ!
「明日香。2人の成績は実際どうなんだ?」
「さっき聞いたでしょ。陽菜は全教科90点以上。でその陽菜に合計点で勝つくらい優ちゃんも凄いよ。数Aなんて優ちゃん100点だったし」
「そこまでいくと優莉が陽菜に負けた教科が知りたいな」
「私、国語が苦手で……」
「優莉は帰国子女だからな。気にすることはない」
すんません。こんななりですが、生まれも育ちも生粋の日本人です。
「その国語、それでも明日香の倍の82点だったけどね。それ以外は一番悪い世界史Bでも92点だよ。もうお姉ちゃんのプライドはズタボロだよ」
だから中間はお兄ちゃんのプライドがズタボロになったんだって。
「これはもう二人におんぶにだっこで行くしかないな」
「自分で言うのもなんだけど、私と陽ねえが平均点を押し上げるからみんなでそれに乗っかれば勝てるんじゃないかな?」
「だよねえ。上杉先生はきっと私達のことを知らないからあんな勝負を吹っ掛けたんだと思う」
まあ部活ガチ勢の成績がいいとは思うまい。悪いが学力テストならそうそう負けんよ。
「……2人とも甘い。ユキの点、聞いてないじゃん」
何かを知っている明日香は悟りを開いたような表情で告げる。
「ユキもそこまで悪いわけじゃないでしょ?」
「玲子と明日香の中間くらい出来れば……」
「ごめんなさい」
ユキがスクール鞄から紙の束を取り出した。そこには―――
国語総合:41点
世界史B:38点
数学Ⅰ :30点
数学A :29点
生物基礎:39点
コミュ英:44点
英語表現:26点
……目が点になる。7科目中5科目が赤点。残り2科目だってギリギリで免れているに過ぎない。
つか、数学2科目と英語表現なんか俺や陽菜の1/3以下だ。きっと別の人の答案だと思い込もうとしたが、氏名欄には 「有村 雪子」と書かれていた。
「今日の補講、数学はユキと一緒だったからね……」
遠い目をする明日香。諦めんなよ。俺だって10年かかったけど25m泳げるようになったんだぞ!
……やるしかねえ。勉強会だ!
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テストまで時間がない。幸い土日を挟むからそこで巻き返しは可能。あの後、渋る明日香とユキを図書室までひっぱり(ここは年中冷暖房が効いていて快適)、勉強会スタートだ。
バレーの練習?知るか!んなもん!
だいたい勉強というか学校のテストで点を取るためには次のプロセスを踏めばいい
1.公式や方程式、英単語や文法といったものを理解する
2.理解したうえで実際に問題を解いてみる
3.解いた問題の答え合わせをしつつ、応用が出来るようになるまで何度も問題を解く
よくある失敗は1が出来てないのに2をやろうとするパターンだ。こうなるとちっとも身につかないし、覚えない。明日香も玲子もユキも1が苦手科目で出来ていない。が、1が出来るようになるとだ、
「なんだ。これでいいのか」
「そうそう。玲子それでいいんだよ。ね、簡単でしょ」
「いや、これは優莉の教え方が上手いんだ。先生もこう教えてくれればいいのに」
「それは難しいんじゃないかな?私は1対1で教えられるから玲子にあわせられるけど、先生は30人以上同時に相手にするんだよ?」
玲子は因数分解のコツをだいぶ覚えてくれた。結局のところ、こいつはどれだけパターンを覚えられるか、覚えたらどれだけ応用できるか、だと思う。
生物も単語だけの暗記物として覚えると辛いが、物語(そこに至るまでの経緯、歴史、考え方)として覚えようとすると意外と覚えられる。玲子は何とかなるかもしれない。
「優ちゃん、むりぃぃいい!!」
「……人には向き、不向きがある。これは私に向いていない」
赤点組は早くも諦めモードだ。
「諦めないで。そもそも誰のために勉強会を開いてると思ってるのさ!」
「そうだけどさぁ」
「……陽菜と優莉はテストの点がいい。何かコツがあるのでは?」
「んなものはない。『学問に王道なし』って名言を知らないの?」
「私、数学者じゃないから知らな~い」
「人は楽を求めて文化や技術を進化してきた。プトレマイオス王の意見は人として正しい」
2人とも知ってんじゃねえか!
「さっきのユキのセリフじゃないけど、2人ともあれだけ出来るでしょ?なんで?」
「「勉強したから」」
俺と陽菜の声はきれいにハモった。
身もふたもなく本当にこれ。
確かに人間の学習能力に差があって、英単語10個覚えるのに30分で覚えられる奴、1時間かけて覚えられる奴、10分足らずで覚えられる奴と分かれるだろうが、何もしないで覚えられる奴なんていない。
そもそも入試という壁を乗り越えてきた俺達松女生の学力は似たり寄ったりだ。あとはどんだけ勉強するか、でしかない。
俺と陽菜のテストの点が良いのは俺達の家庭環境によるところが大きい。
俺達姉妹は涼ねえ、美佳ねえ、俺、陽菜の順にそれぞれ3歳ずつ年が離れている。
そして涼ねえは学力特化、美佳ねえが運動特化に対し、俺と陽菜はどちらもそこそこという有様だった。幸か不幸か、俺も陽菜も幼稚園時代から涼ねえや美佳ねえの弟または妹として先に生まれた2人とずっと比較されて育ってきた。
で、人間ってのは悲しいもので優れた方しか覚えていない。
「涼香ちゃんの弟なのに勉強が出来ないんだね」
「美佳ちゃんの妹なのに足が遅いなあ」
周りの大人たちはずっと涼ねえの学力、美佳ねえの運動能力と俺達を比較してきた。誰も涼ねえの運動能力や美佳ねえの学力と俺達を比較なんてしなかった。
こういう言い方をすると誤解されるだろうから言っておくと、陽菜の本心は知らんが少なくとも俺は涼ねえと美佳ねえのことを尊敬している。
自分じゃ絶対にたどり着かないところまで行ける2人はすごいと思うし、特に涼ねえには一生頭が上がらない自信がある。
で、先を行く姉2人との比較は俺なんてまだましな方だろう。俺は男だったからまだ比較の目は緩かった。本当にかわいそうなのは陽菜だ。
性別がいっしょ。比べられるのは勉強なら涼ねえ、運動なら美佳ねえ。それでも真面目な陽菜は頑張り続け、それが転じて大の負けず嫌いに育った。
そんな環境で育った俺達だ。お互い、涼ねえ相手に学力で負けても仕方ないと思っているだろう。生まれてから10年以上、一度たりとも勝てなかった相手なんだし。でも同格と思わしき、俺は陽菜に、陽菜は俺に負けるわけにはいかない。
それに俺には兄というプライドがある。陽菜には世間上は姉というプライドがある。
お互いの学力がどっこいどっこいなのは知っている。クラスも同じ。受けている授業も同じ。言い訳できる要素は全て潰されている。
そりゃもう試験期間中はバチバチでしたよ。なまじ同じ家に住んでるから相手の勉強時間なんて丸わかりだし、最後は食事の時間、風呂の時間、寝る時間まで比べだした。
“私、全然勉強してないんだよねえ”
なんてセリフはお互いに通じない。
俺が1時間勉強するなら陽菜も1時間一緒に勉強した。
陽菜が普段1時間くらい入っている風呂を30分で出るなら俺も一緒に30分で出た。
お互いがお互いの一挙手一投足まで観察しあい、こじらせるレベルで張り合った。
というかこじらせすぎて最後の方はお互いにレディースデイが陽菜は試験前の準備期間、俺は試験中に重なったが、それでも一緒に風呂に入った(もちろんあれな日なので浴槽には入らなかったが)。
余談だが、今回の試験前に俺はバッサリと髪を切ろうとした。長い髪は乾かすのも髪を梳くのも時間がかかるという欠点があり、その時間分陽菜に勉強時間で後れを取るからだ。
が、陽菜が
「お姉ちゃんがブラッシングしてあげるから切っちゃダメ」
と言って、実際に陽菜があれ以来、毎朝毎夜丁寧に梳いてくれるので切らずにいる。
寝る時も一緒だった。
「健康を害するから6時間睡眠は確保」
とお互いに約束したが、油断大敵。夜中に起きて抜け駆けできぬよう、寝る時は一緒に陽菜のベッドで手をつないで寝た。これならどっちかが途中で起きてもお互い気が付くように……
……あれ?これ不味くね?にーちゃんとして致命的に不味くね?なんで女子高生になった妹と毎日同じベッドで寝てんの?間違いが起きたら責任とれんの?
い、いや、あれは試験期間中の非常事態だったから仕方ない。
“ほら優ちゃん。寝るから電気消すよ。明日も朝練で早いんだから。こっち来て、早く寝よ”
……これ、昨晩の話。あれ、昨日も陽菜のベッドで寝てる?
“陽ねえ、おはよう”
“優ちゃん、おはよう”
“朝から抱きつかないでよ。暑苦しい”
“え~おはようのハグくらいいいじゃん”
“……陽ねえのそういうところ、涼ねえに似てきた”
“つまり涼ねえみたくここからほっぺにチューもしてほしいんだね。それじゃ……”
“だから!そんなところを真似なくていいんだって!あと、いい加減私に抱きつくのはやめて!”
“もう、優ちゃんはわがままだなぁ。あ、そこの椅子に座って。お姉ちゃんが梳いてあげるから”
……今朝、起きた直後の話がこれ。起きてから部屋を移動した記憶はない。あれ?試験以来ずっと陽菜のベッドで寝てるってこと?
いや、よそう。これ以上考えるのは俺の精神衛生上よくない。
「んん!とにかく私達はお互いに負けないよう、毎日勉強したから成績が良いの。バレーと一緒だよ。試合前にちょっと練習したからって巧くならないでしょ。毎日コツコツやらないと」
「えぇ!陽菜達、毎日勉強してるの?」
「5月の中間テスト以降は1日1時間くらい毎日やってるかな?あ、試験前と日曜日は別だよ」
人間、地道な努力こそ勝利へのカギとなるのだ。
=====
問 次の□を埋めて四文字熟語を完成させなさい。
よく国語である奴だな。単語を知らないとどうしようもない奴だ。で、苦し紛れに□肉□食を焼肉定食って答えて失笑をかう奴だ。
問 次の□を埋めて四文字熟語を完成させなさい。
一□□中
玲子の回答:一発的中
正解。元々国語は得意だったし、簡単すぎたか?
「いや、優莉のおかげだ。一発的中というのは一回で的に当てたことが語源だと教わったからこそだ。どうにも『的』を最適の『適』の方を書きそうで……」
と、言っているが玲子なら次からも大丈夫だろう。
明日香の回答:一口最中
可愛らしい。おなかがすいたし、ちょうど……
「なんで最中なの!どっからその発想が出てきたの!」
「いや、もう4時だよ?おなかすかない?」
そういう問題じゃねえよ!
ユキの回答:一家心中
サスペンスになった。あれだ。ドラマの序盤で一家心中と見せかけた放火犯が――
「なんで大喜利になるの!」
俺は叫んだ。これはダメかもしれない
俺が絶望していると横から陽菜がめっちゃいい笑顔で聞いてきた。
「優ちゃん!諦めて一緒にバスケの練習しない?」
正直、誘惑に負けてしまいたい。
「は~はっはっは!みっともないな、バレー部!」
俺と陽菜が明日香とユキの大喜利に苦しんでいると高笑いと共に前島さんが図書室の扉を開けて入ってきた。
「見苦しいな!そこまでしてテストの――」
「うっさいから帰って」
陽菜がガンを飛ばしつつ前島さんを追い出し、さらにはピシャリと図書室の扉を閉める。
陽菜も相当たまっているようだ。
数分後……
「離せ!離せ!歌織、愛菜、離せ!」
両脇を鍋川さんと白鷺さんに抱えられて前島さんが戻ってきた
「ごめんなさい。私達もここで勉強していいかしら?」
「……まあ静かにするなら」
「悪い。ほら、未来、腹くくれ。バスケが出来なくなっていいのか?」
「うぅぅ。こんなはずじゃあ……」
どうやらあっちもここで勉強するようだ。ライバルが勉強している姿を見ると手を抜けないしな!
「未来ぃ……」
「明日香ぁ……」
両主将の情けない声が図書室に響いた。
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その後、長く苦しい戦いが続いた。夏休みに入った最初の土日はバレーの練習ではなく、(一般家庭にしては)広くて駅からそれなりに近い立花家にバレー部全員が集合し、泊まり込みで追い込みをかけた。
そのかいあって……
「バレー部7科目平均約77点。バスケ部平均約74点。よってバレー部の勝ちとする。みんながんばったな!全員全教科60点以上だぞ!夏休み中の補習はなしだ!」
俺達は新部員を3人もゲットした。
「……」
前島さんが真っ白な灰になっているのは勝負に負けたからだろう。決して勉強がきつかった、ではないと心から信じたい。
明日香とユキが真っ白になっている。そうか、そんなに新部員がうれしいのか。
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おまけ 松原女子高校における成績のつけ方(といってもごく普通のつけ方の1つです)
松原女子高校では学期毎(一学期、二学期、三学期)の評価は10段階評価、
通年(1年次、2年次、3年次)の評価は5段階評価です。
通年評価で1つでも評価が1の科目があった場合は該当年次に留年となり進級または卒業を認めません。
学期毎の評価は(原則)一学期と二学期は中間と期末テストの結果を足して20で割り、小数点1桁目を五捨六入した値が成績表の値になります。
例1:中間テストで65点、期末テストで75点だった場合、(65+75)/20=7 →学期評価は7
例2:中間テストで50点、期末テストで60点だった場合、(50+60)/20=5.5 →五捨六入し、学期評価は5
三学期の評価は期末テストの結果を10で割り小数点1桁目を五捨六入になります。
また、評価には出席日数、授業中の態度、提出物なども加味されます。
明日香は数学Ⅰで中間、期末ともに壊滅的な成績でしたが提出物をきっちり出し、授業中も真面目であったため、激甘な榊原先生より30点分点を加算されています。
(提出物による加点は明日香だけでなく生徒全員に対して贔屓なく行っています。作中、大天使サカキエルと生徒に言われているのはこのためです。ただし、これが良いのか悪いのかは別問題です)
通年評価は三学期分の成績を全部足して6で割り、小数点1桁目を五捨六入した値になります。
例1:一学期の学期評価が6、二学期は7、三学期は9だった場合、(6+7+9)/6≒3.67 →五捨六入し、通年評価は4
例2:一学期の学期評価が5、二学期は4、三学期は5だった場合、(5+4+5)/6≒2.33 →五捨六入し、通年評価は2
例3:一学期の学期評価が4、二学期は4、三学期は2だった場合、(4+4+2)/6≒1.67 →五捨六入し、通年評価は2
例4:一学期の学期評価が3、二学期は3、三学期は3だった場合、(3+3+3)/6=1.5 →五捨六入し、通年評価は1 →通年評価が1なので留年
例3、4を見ればわかるように留年を防ぐには学期毎の評価の合計を10以上にすればぎりぎり防げます。
もっと言えば学期毎の評価が4以上を取り続ければ留年しません。学期毎の評価を4以上にするためには中間と期末それぞれで40点以上を取れば防げます。
だからこそ40点未満を補習講義対象者としているわけです。