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016 (偶然)情報封鎖成功! 

前回ナレ死した鶴留高校の雄姿をご堪能ください

 時刻は13時40分。試合開始まであと20分。実際にはぎりぎりまで準備できるわけではないから、ウォーミングアップに使える時間はあと10分少々か?

 くっ。時間が足りない。相手も同条件とはいえ、やっぱりタイムスケジュールがおかしいってこれ。


「次、優莉」

「ハイッ!」


 現在公開練習中。もうどうせばれているのだから全力で飛んで全開でスパイク。


 

 バチコーン!!!


 

 会場が何故かざわめく。あれか?噂のスパイクは本当だったとかその辺?


 気にしないで練習を続ける。というより気にしている時間がもったいない。


 このスパイク練習だってレフトとセンターの2パターンしか時間制約の関係で出来ない。まあ俺は基本ライトから飛ばないからいいけど、唯先輩とかが可哀そう。


 一番つらいのはエリ先輩。キャプテンは試合開始前に向こうのキャプテンとサーブ権の取り決めとかその辺面倒な手続きがある。つまりエリ先輩は今日この場でスパイク練習せずに試合に臨む。

 やっぱりスケジュールがダメ過ぎんだろ。 


 あと、正直サーブの練習もしたい。日頃からしているが、ぶっつけ本番じゃなくて試合前に感覚を確かめるために何本か打っておきたい。


 あ、エリ先輩が戻ってきた。


 

「監督。サーブは向こうからです」

「そうか、よし。お前ら、サーブ練習に移るぞ。時間がない。手早く動け!」

「「「「「「「「ハイッ!」」」」」」」」



 サーブ練習。やっぱ見られてる気がする。というかなんか驚いてる?みんなもやりにくそうだ。なんというか会場中から見られてる感じ。これはひょっとしてあれか?


 陽菜に聞いてみた。


「陽ねえ。会場中から見られてる気がするけど、これって私が可愛いから?」

「………ていっ!!」


 陽菜からの返答はげんこつだった。ひどい。さっきはもっと可愛いことを自覚しろって言ってきたのに……


 試合開始3分前。俺達はベンチに集まって試合前のミーティング。


「どうも様子が変だな。まるで私達のことを知らないようだ」

 佐伯先生がつぶやく。だが俺も同意見だ。いくら地方の県予選、その第1試合とはいえ、このご時世。先週の試合の様子が一切知られていないとは思えない。

 現に俺達だって今日対戦する鶴留高校や対戦するであろう玉木商業高校の動画なり、コメントなりを見つけることができた。


 先週の対戦相手だった蔵上高校や菊星高校の面々が

「松女には漫画みたいに飛ぶ外国人がいる」

 とSNS上で一切発表しなかったとする方がかえって不自然だ。


「あの、みんなは私達バレー部のエゴサーチってやった?」

 美穂先輩はこんなことをきいてきた。エゴサーチって自分のことをネット上で調べることだよな?


「土曜日の夜にやった。あんだけ派手に勝ったから、スーパースパイカー現る、みたいのを期待してたら優莉がビンタしてる奴ばっかだったからむかついてすぐにやめた」

「私も。ひどいのだと優ちゃんはゴリラと人間の子供だ~とかひどいものあったからすぐに見なくなった」

「それ系、最初多かったわよね。改造手術を受けた強化人間だーとか。あったまきちゃう」

「すまない。そういったゴシップには興味ないから調べなかった」

 等々


 まとめると玲子以外はエゴサーチしたけど、俺のビンタばっかだったから調べるのを止めたようだ。で、月曜日以降にはそんな動画すらなくなっていたようだ。



・・・・


 

 あれ?


 

「ひょっとして、私達の試合動画ってネット上に存在しない?」

「私もネットの深いところまでは調べてないけど、浅いところにはないと思う。あと、文章だけだとまさか優莉が150cmくらい飛ぶなんて信じられないだろうし……」


・・・


 これはひょっとして奇襲作戦継続可能なのでは?


「それなら私達はついているな。よし、鶴留高校が準備を整える前に第1セットを取るぞ!」






ピッーーーー!!


 試合開始の合図だ。最初の相手からのサーブはそんなに強くない。エリ先輩がレシーブ。少し乱れたが、陽菜がレフトにオープントス。


 飛ぶ前にちょっと相手を確認。ネット際にボールを確認しているのが2人。多分この2人がブロッカー。そばに1人。これが多分ブロックフォロー兼フェイント対策要員。


 確信した。相手は俺達のことを知らない。


 案の定、俺のスパイクはやすやすとアタックライン付近に突き刺さった。


 まずは1-0


 俺達というか俺のスパイク対策だが、手っ取り早く2つの対策がある。対策というよりは戦うための前提条件に近いが……


 1つめはブロックに人数を割かず、全員レシーバーにすること。俺のスパイクはどのみちブロックできる高さではないのだから思い切って6人全員をレシーバーにした方がいい。


 

 2つめは強打に対する覚悟。俺のスパイクとサーブはそのまま床にあたるととにかく痛そうな音がする。

だからどうしてもビビってしまうが、実際のところはあたっても普通のスパイクよりちょっと痛いだけで怪我をするようなものではない。


 それもそのはず。物理的にバレーボール自体が重くなったりするわけでもなく、ボール自体はあの大きさで300gもないのだから怪我のしようがない。


 この2つを割り切って試合をしたのはいつぞや練習試合をしたバスケ部だ。日頃から体育館で轟音を響かせてスパイク練習する俺を何度も見ている彼女達は俺のスパイクがとてもブロックが届く様な高さではないと知っているし、ボールに対しても「バスケットボールの方がよっぽど重くて硬くて痛い!」と割り切って臆さずレシーブに挑んだ。


 無論それだけでレシーブが出来るわけではないが、恐慌状態になって足を止めるよりよっぽどいい。バスケ部との練習試合も全員レシーバー体制で隙間が少なく、かつ果敢にレシーブを試みたために何度か俺のスパイクをレシーブされている。

 無論それはAパスなんかじゃなかったけど、それでも無抵抗でスパイクを決められるより相手にとってはよほどいいはずだ。


 反対にこれが出来なかったのが先週の蔵上高校。なまじ経験者でかつ、県内では強いチーム(by明日香情報)であったからこそ、常識にとらわれ、第1セットの最後まで俺のスパイクに対しブロック要員をあてはめてしまった。だから俺はその分手薄になった蔵上高校の守備陣をつくことができた。


 また、スパイクの轟音に恐慌状態に陥っていたことも敗因だ。もう一度言うが、俺のスパイクにあたったからと言って怪我をするようなものじゃない。もし怪我をするのであればプロの男子は試合のたびに怪我人が続出するはずだ。そのあたりを冷静に判断出来ていれば25-3のような大差はつかなかったはずだ。


 そして今回も相手に冷静になられる前に一気に点を稼ぐ!!


 

 今度はこっちがサーブ権。最初のサーブ権はあちらからだったのでわざとローテーションを1つ分逆回転させ、こちらの最初のサーブは極悪無比なサーブを放つエリ先輩になるよう調整済み!


 おぉ!案の定、レシーブしようとしたところで軌道が変わってレシーブミス!カバーしようとしていたが、うまく返せずサービスエースとなった!


 これで2-0!


 再びエリ先輩のサーブ。いいとこに飛んだが、相手もいいレシーブ。そのままレフトにオープントス。ちょろいな。こっちブロックは唯先輩に陽菜に俺。高さはあるんだぞ。オープントスからのスパイクは通さん!

 ブロックは成功。でも相手の得点。なんで?って陽菜のネットタッチらしい。きっと前方の出っ張りがネットにあたったのだろう。

 やっぱり巨乳は(以下省略)


 これで2-1


 今度はあちらからのサーブ。


 って!俺のところに飛んできた!高さ的にオーバーにするかアンダーにするか微妙!


 えっと落ち着け。こういう時は2歩前に出てオーバーにするか、2歩後ろに下がってアンダーにすればいいってユキがー


 おおい!もう目の前に来とるやんけ!おかしい!この間1秒もないんだけど!


「ぐえっ!」

 俺はなんというか女の子が言っていいようなセリフじゃない言葉を吐き出しつつ胸でレシーブ(レシーブではなく、体にあたっただけともいう)。この時、膝も腰も伸びていて、ユキに言わせるとダメなレシーブの典型例みたいなことをやってしまった・・・


 だが、胸から零れ落ちたボールをユキがカバー。そのボールを陽菜が相手コートへ押し返す!


 ちっ。よくも俺に恥をかかせてくれたな!


 チャンスボールが返ってきた鶴留高校。それをスパイクするが、こっちのブロックに阻まれて3-1!





「よし。まずは第1セットを取った。この勢いで第2セットも取るぞ」

 鶴留高校との試合は第1セットを25-11でこっちがとった。相手もローテーション2巡目からは俺のスパイクにはブロッカーを配置しなくなった。計算通りである。


「第1セットから相手はうちがどんなチームかわかったはずだ。第2セットはそこをつく。陽菜、次はセンター線を有効に使え」

「ハイッ!」


 第1セット、俺達はスパイクをほぼ俺と玲子の2人に集めた。このせいもあって相手は今頃


 「松原女子の攻撃はレフトへのオープントスからの一撃」


 と理解してるであろう。これは正解。こちらの主力武器は俺と玲子のスパイクだ。だから後半、視線はどうしても俺達の左側に集中するだろうし、オープントスに慣れているので速攻はないと高を括っている可能性が高い。


 だが、主力武器が俺と玲子なのであって、副武器の存在を忘れてはいけない。特に明日香は超強力なスパイカーだ。後半は明日香やエリ先輩、唯先輩を使って相手をかき乱す!


 これが俺達の作戦。


 まず、注目を俺や玲子に集中させる。そしてまんまとレフトに視線が集中したところで中央からの速攻。中央に集中しすぎればレフトから俺と玲子が再び勇躍するし、レフトに集中しすぎれば中央を止められない。

 俺や玲子の対策だけでは不十分。その先まで考えてこそだが、とにかく俺と玲子が目立つのでなかなかそこまでたどりつかない、つかせないのがこの作戦のキモなのだ。


 結局第2セットも25-12でこっちがとった。


 横のコートでは玉木商業高校が下馬評通り第1セットをとり、第2セットも優勢だ。おそらく次戦の相手は玉木商業高校で決まりだろう。


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[気になる点] 松原女子のウイングスパンってどのくらいですか?
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