031 楽しい修学旅行と3つの坂
抜けるように青く高い空。11月間近とは思えない暖かな気候。
「沖縄最高!!!」
空港に降り立ち、空を見上げながら思わず叫んでしまった。
「……なにあれ?優莉、どうかしたの?」
「ほら。優ちゃん寒いの嫌いだから、暖かくて気持ちが高揚してるんでしょ」
クラスメイトが呆れ、陽菜が苦笑しているが気にならない。飛び立つ前にトイレで脱いで鞄にしまった裏起毛付き160デニールタイツも沖縄では出番がなさそうだ。
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他所はどうか知らないが、俺の住んでいる近くだと高校の修学旅行は私立なら国外、公立なら国内となっている。身近な例だと涼ねえの宮園高校は北海道、美佳ねえの姫咲高校はオーストラリア、俺が本来通うはずだった松原高校も松原女子高校と同じく沖縄とのことだ。
ただ、時期は結構バラバラで2年生の1学期から3年生の1学期まで高校ごとにバラバラだ。
今の俺は小学校中学校の知り合いとは2名を除き疎遠なので他校の状況はわからんが、今のクラスメイトからこの辺の情報は教えてもらっている。ちなみに2年生2学期の中間テスト後、というのは珍しくはあるがないケースではない。
どうでもいい話ではあるが、生徒だけで全6クラス分、200名強が参加する修学旅行ではあるが行きも帰りも飛行機は2便に分かれる。
これは座席が確保できなかった、ではなく万が一墜落した場合、1学年分まるまる全滅するのを防ぐための措置だそうだ。縁起でもない。
というわけで俺達1組を含む1~3組は朝の便、明日香達4組を含む4~6組はそれから3時間後の便でやってくる。帰りも俺達の方がちょっとだけ早く帰ることになる。
これがそもそもいけなかった。
現在10月も最終週。俺がちょっと前まで空調のきいたホテルと練習場と試合会場を往復しているうちに夏どころか秋までも完全に終わりをつげてしまい、早くも冬が到来してしまった。
朝とか寒い。めっちゃ寒い。
せめて日が昇りきってから活動したかったのだが、早朝便で沖縄に向かうのでそうも言ってられず、無駄にデカい図体を活かし風よけにもなる便利な陽菜に貼りついて空港に向かう羽目になったのだ。程よく温かいのでカイロとして優秀なのは間違いないが引っ付くとよくわかる。俺も成長しているはずなのだが、陽菜の方がいろいろ大きい。大きいからこそ風よけになるのだが、う〜ん。
余談かもしれないが、集合場所は松原女子高校ではなく、空港である。
人によってはわざわざいったん高校に集まってから向かうより直接向かった方が短い時間で到着する子もいるから妥当なところだろう。
俺達も最寄りの松原駅から電車で1時間以上かけて空港に向かった。
道中、それなりに人とすれ違い、ひょっとしたら騒ぎになるかもしれないと思ったがそんなことはなかった。
バレーボールブームは早くも終息したのかと思えばそうでもない。
駅やビルの看板には未だに女子バレーボールの広告が多数みられるし、漏れ聞こえてくる会話から世界選手権が面白かったから国内の女子プロリーグの試合を見に行く、なんて声も聞こえた。
ではなぜ騒ぎにならなかったのか。
それは大変遺憾な誤認が広まっているからである。
これも漏れ聞こえた会話の内容だが、移動中、何人かは俺のことを『世界選手権で活躍した立花優莉』ではないかと気が付いていた。
が、二言目には『似てるけど立花優莉ならあんなに背が高くないだろう。だから別人だ』と言われた。
世界選手権中は何度も『小さい』だの『背が低い』だのさんざん言われたし、確かに日本のコートでは俺が一番背が低かった。
なんなら世界選手権で出場した全選手のうち、俺より背が低いのは2人しかいなかったし、その2人はリベロでかつ対戦はしなかったので日本代表の試合しか見てない人からすると『世界選手権に出場した選手で一番背が低いのが立花優莉』と誤認している可能性すらある。
だが、とても大事な事で改めて言うと、俺の背は163cmと女性としてなら低くない。むしろ背が高い部類に入る。大会中は何度も俺の身長が163cmであることが紹介されていたが、それでも立花優莉=背が低いという誤認は広く知られたようだ。
現に昨日のTV番組収録の際には誰もが知っているような芸能人から「優莉ちゃんって意外と背が高い」と言われてもいる。
俺のことをチビだと思っている奴にはちゃんとそうでないことを説明したいところだが、迂闊にそれをやると俺に人が集まることが予想できたのであえて黙っておいた。
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一応は『修学』という大義を掲げているので沖縄修学旅行初日は沖縄の伝統文化、伝統民謡を巡るスケジュールになっている。
移動はクラス毎にバス。
ガイドのお姉様が「皆さんは松原女子高校の生徒でバレーボール選手の立花優莉と同級生って本当ですか?」などと聞いてきたので「同級生も何も当の本人がこのバスに乗ってます」と答えておいた。するとガイドのお姉様もバスの運ちゃんも世界選手権を見ていたらしく、修学旅行生の俺達以上にガイドさんたちのテンションが上がった。
そのノリでどこの店が美味しいだとか、あそこの店は見た目だけで値段が高くお勧めできないといったぶっちゃけトークを聞き出すこともできた。
沖縄というか南国特有の色彩豊かな色遣いや伝統の雅楽に感嘆しつつ、実は地元民は最近それほど食べなくなってきているとこれもぶっちゃけトークで聞いた沖縄の伝統食は俺の好きな味付けだったので良かった。
沖縄文化の華やかなところを巡った初日と違い、二日目は戦争関連の施設を回った。
ガマという自然壕や「皆さんと同い年の女学生が動員された」と紹介されたひめゆりの塔とかその辺。
当時の生き証人だというおじいちゃんが「皆さんには想像できないかもしれませんが、あの時は水を確保するのも大変で泥水を〜」なんて話が出た時に思わず昔を思い出してしまった。
水って腐らないと思うだろ?
本当の純水なら腐らないんだろうけど、無菌室内でもない限り、微生物や細菌をはじめとした不純物ってのは必ず水の中にはあるもんだ。
で、こいつらが原因で腐るわけだが、そんなんでも戦争中は飲まなきゃやっていけないわけで……
俺も過去に渇きに耐えられず異臭のする泥水をすすったことがあり、それで腹を下したことが……
と、思わず過去を振り返っていたら、どうやら「あぁ。確かに腐った水を飲むと下痢になるよね」とかをぼそっと言ってしまったようでクラス中が何とも言えない雰囲気になってしまった。
失敗……
ともあれ、確かに戦争の悲惨さを学ぶことができたので『修学』は出来たな。じゃあどうやって戦争を防ぐか、までは教えてくれないし、そもそも答えなんてないんだけど。
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いや、まあ、あれですよ。
三泊四日の旅行となれば当然風呂にも入るわけで、さらに一応今の俺は公式設定上女子高生なわけで……
ホテルは三泊とも違うホテルに泊まったのだが、いずれも流石に二百人を超える人数が一度に入れる風呂はなかった。
なので風呂の時間は1〜3組の時間と4〜6組の2組に分かれた。
それでも一度に約百人。
女子高生百人と一緒にお風呂。
これがエロくないはずがない!
はずがないんだが……
ちっとも興奮しませんでした。
マジでショック。
バレーボールの合宿とかでも女子高生の裸を見てきたけど、今日はその数、百人。
数の暴力でいけるかと思ったけどダメ。これでもダメってもうダメかもわからんね。
それにむしろ風呂場では俺は見る方ではなく、見られる方だった。俺の裸 (浴室に持ち込めるタオルで一部は隠してるよ!) を見た佳代からは「優莉っていうか外国人ってやっぱり生粋の日本人とは発育が違うのね。ハーフでも私達とは発育が違うわ」なんて言われたが、「佳代たちと同じ純血の日本人でしかも同い年。で私が一番見慣れている女の人の裸があれ」と陽菜を指さしたら佳代は黙った。
涙目になっていたような気もするがきっと気のせいだろう。
また、それとは別の気づきもあった。
高校でも「あ、この子カワイイ」と思った子はやはり洗顔、洗髪にも気を使っているし、マイシャンプーを持ち込んできている。
一方、顔のつくりは決して悪くないのにその辺無頓着な子は男だった時の俺並みに適当にやっている。
……あのさあ、陽菜さんや。女になった当初、俺はお前だけじゃなくて涼ねえや美佳ねえにも言われたけど、「髪の毛くらいちゃんと自分で洗えるようになりなさい!」とか「そんなに雑に顔を洗わないの!」とかの女のたしなみっていう名分でいろいろ俺に言ったじゃん?高校2年生だから生粋の女歴16年以上の奴だって出来てない奴いるよ?あれ嘘だったの?と、喉元まで出たが黙っておいた。
出来てない奴はマイノリティだし、第一、出来ている奴の方が総じてカワイイ。
カワイイは作れる。
これは事実だ。
あとは――
誰とは言わないが、風呂場で顔が変わった子も何人かいた。
そうか。眉毛とか書いてないとあぁなるのね、とかあぁ、普段はファンデでそばかすを隠してるのか、むしろプールの授業でも落ちないくらい厚塗りしてたのか、とか。風呂場で顔が変わるレベルの子はバレー部にはいなかったから結構新鮮な発見だ。
エロいはずなのにエロくないイベントを2回こなした翌日の3日目は修学旅行で一番のお楽しみ。
五つのコースに分かれての自由行動だ。
修学旅行は原則クラス毎に分かれての行動となるが、3日目だけは別。
学校側で遊覧船やら水族館やら観光名所やらを巡る五つのコースを用意してたので、各人が2~6人くらいのグループを作っていずれかに参加するのだ。行く場所は重複しているところもあるが、そうでない個所もあり、しかもグループ分けに関しては他クラスの生徒とも混同して良いということもあり、今回の修学旅行の準備で一番盛り上がった――らしい。
らしいとなってしまうのはこの辺、決める時には俺はずっとバレーボールの代表選手として学校に行っていなかった時期だからだ。
なので俺の分は全部陽菜が代わりに決めた。
どこに行くのかはその時までのお楽しみと言われ、どこに行くのも楽しそうだから別に構わない。ちなみに俺のグループは俺と陽菜以外では愛菜とユキの計4人。
……1組では俺達4人はなにかと『バレー部』ってくくりで扱われていたからこの組み合わせは是非もないだろう。
ついでに言えば修学旅行中の3泊はずっと前述の4人同じ部屋割となっている。
で、2日目も終わり、明日に向けてどこに行くのかと陽菜に聞いたところ――
「海に行くって、私聞いてないよ!」
「そりゃ言ってないし、聞かれてないからね」
沖縄には良い観光スポットがたくさんあるのにわざわざ海に行くなどといってきおった。なんでも小さな船を借りてわざわざきれいなビーチがあるという少し離れた無人島まで行くとのことだ。
行って帰ってだけでもそれなりに時間がかかるので明日は本当に海に行ってちょっと遊んでお終いだろう。
それ以前の問題として――
「今10月で、しかも11月に近い月末だよ?わざわざ泳げない海に行くの?」
「沖縄って11月まで泳げるどころか、むしろ7月8月の夏真っ盛りは海水が熱くなりすぎて泳ぐには適さないんだって」
マジかよ。沖縄すげえな
「泳げても私、水着持ってきてないんだけど……」
「大丈夫。優ちゃんの水着はちゃんと私が持ってきたから」
……まあそうだろうとは思ったよ。一緒に住んでるとこういう時にハメ技を使えるのがやっかいだ。
なにせ直前まで日本代表に召集されていたこともあって修学旅行の荷造りはほぼ陽菜に任せる形となった。修学旅行中は私服であり、外出中という逃げ場のないところでコスプレじみた格好は嫌だったので上着についてはあらかじめ確認していた。
結果、事前に俺の意向を伝えていたこともあってそちらは大丈夫だったのだが、下着については若干問題ありだった。
例をだせば修学旅行2日目の朝。
「え?これ着けるの?」
「普段スポーツ用ばっかで、ワイヤー入りが怖いっていうのはわかるけど、それだけ大きいうえに激しい運動をしないんだったらワイヤー入りの方がいいよ」
就寝用から日中用に下着を変えようとした時に陽菜から今日の下着を渡された時の一幕だ。ワイヤーもそうだが、スポーツ用とは違い如何にも女性的なデザインなので今まで躊躇してきたが、だからといってまさか1日中つけないわけにもいかず、俺達の様子を見ていた同室のユキや愛菜からもワイヤー入りが絶対いいと言われれば断るわけにもいかず……
結果論だが、ワイヤーってすげー
飾りじゃなかった。
まあそんな悲しい話があった翌日の夜にこれだ。
陽菜から俺の分、とバッグから出してきた水着はなんというか、高校生らしくないというかもうちょっと露出を抑えてもいいんじゃないですかね?という感じのものだった。
「え?水着ってこういうものだけど?」
「そうかもしれないけど、もうちょっと高校生らしいというか、体のラインが出にくくなるデザインがとか「優莉ちゃん。そういう水着はもっと高校生らしい体型の娘なら似合うけど、優莉ちゃんが着るとかえってみっともないよ」」
グラビアアイドルが着そうな水着を前に躊躇するが横から割り込んできた愛菜にバッサリと切られた。
「それって他人事だからそんなこと言えるんだよね?」
「?そんなことないわよ?私の水着は優莉ちゃんの色違いだし」
へ????
てっきり変態は俺だけ露出の多い水着に喜んでいるのだろうと思ったらそんなことはなかった。事情を聞くとなんでも陽菜達3人は修学旅行で海に行くと決めた後に3人で俺の分も含めて水着を一緒に買いに行ったらしい。いいなあ。俺も行きたかった。
「――で、せっかくだから4人お揃いの水着とか面白いよねって話になったんだけど……」
「私のサイズですら探すのが大変だったし、ましてバレー部で一番大きい陽菜が着れるサイズも含めて色違いなんて無理だった」
わざわざ一番大きいと強調したうえで珍しくニヤリと笑うユキ。陽菜は陽菜で「くっ」とか言っている。そうか。水着を買いに行った時に、陽菜のカップサイズがユキにバレたのか。
「実際問題、私達は平均より大きいから探すのが大変だったのよね。それでもF、Gくらいまでならまだ見つかったんだけど……」
「私や陽菜の水着は探すのに苦労した」
「もう大変だったんだよ。中々ないし、あったと思ったらグラビアアイドルが着る様な際どい水着ばっかりだったし」
……陽菜から渡された水着も十分際どいと思うんだが、それを指摘するとそんなことはない、優ちゃん (または優莉ちゃん、優莉)の美的センスはおかしいとか3人からフルボッコにあった。
「――でもさ、もうちょっとマシなのはないの?」
陽菜たちなりに最大限考慮してくれたのはわかったが、それでも恨み言は出てくる。
「う~ん。そう言うと思って、お手洗いの時に全部脱がないといけないからちょっと面倒になるけどワンピースタイプで優ちゃんが着れる水着も持ってきたよ」
マジかよ。なんだよ。最初からそれを出せって!
と思った俺がバカでした。
「はい。これ。優ちゃんが7月まで着てたし、ちょっと優ちゃんは大きくなってるけどまだ着れると思う」
陽菜が出してきたのは紺色の女子用水着だった。
「……陽ねえ。高校生にもなって流石にスクール水着はないって」
「私もそう思うけど、優ちゃんならキャラ的にありかなって」
お前は俺をどんな奴だと思ってんだよ……
で、結局陽菜達が俺用に買ってきた水着を着ることに決めた。まあスクール水着よりはマシだろう。そんなわけで修学旅行3日目は朝からバス、船で合計片道2時間程度の移動の末、有料ビーチだというところについた。
昨日の、なんなら直前までせっかく沖縄に来たのに島国の日本ならどこにでもある海に行くのかよ、とテンション下がりっぱなしだったが、実際着いてみるとそんな考えは霧散した。
凄いキレイ!
俺の語彙力では表現できないが、これを見てしまった以上、今まで見てきた海を指して白い砂浜、青い海、などとは言えない。
俺は泳げないので海に行ってもつまらないと思ったのだが、浜辺で文字通り女子高生とキャッキャして遊ぶのは思いのほか楽しかった。
途中からは他のグループの子も交ざって遊んだ。
いやぁ。
海って楽しいね。
水着姿女子高生×20くらい遊んでいるはずなのに楽しさしか覚えなかったのは……
楽し過ぎて邪な欲望が出てこなかった、ということだろう。
ちなみに余談だが、陽菜達の水着だけでそれなりに驚いたが、他の子も似たような水着が多かった。今時の女子高生って奴は凄いね。
最後はもうちょっと遊んでいきたいと思うくらいで沖縄本島に船で戻る時間が来てしまった。残念。
修学旅行最終日は国際通りで土産を買って昼食をとってその後は飛行機に乗って羽田空港に向かい、そこで解散。
以前、エリ先輩達から修学旅行の思い出はあまりないと聞いていてショボいものを想像していたが、想像以上に楽しく思い出に残るものだった。
あぁ、でもエリ先輩達の時は雨ばっかりだったんだっけ?
そうなると違うんだろうなあ……
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さて、こんな言葉を聞いたことはないだろうか。
人生には3つの坂がある。
1つめは上り坂。
良いことが続く人生の好調期。
今回の沖縄修学旅行は総じて人生の上り坂だった。
2つめは下り坂。
悪いことが続く人生の不調期。
俺の場合、一般高校生の下り坂が上り坂に見えるくらいの難所をくぐったことがある。
3~4年前は本当に生きるか死ぬかの世界にいた。あの頃にも良いことはたくさんあったが、だからといってもう一度体験したいか、と言われればノーだ。あんな殺伐とした生活はもうこりごりだ。
さて、3つめの坂は『ま』さかだ。
羽田に降り立った時、即座に感じた。凍えるほどの寒さ。関東地方をはじめ、俺達の地元、本州全域に一足以上早い寒波が襲い掛かっているのだろう。
すなわち―――
「寒い!寒い!死ぬ!凍死する!!!!」
空港につくと南国沖縄とは全く違う気温に震えた。
すぐさま防寒着をフル着用したが、とても耐えられるような寒さではない。
だというのに――
「優ちゃんは大げさだなぁ。これくらいで死ぬわけないじゃん」
帰りの電車の中で陽菜は平然としている。というか――
「は、陽ねえ!脚!寒くないの?」
陽菜も俺同様スカートなのだが、なんとその脚には25デニール以上どころか25デニール以下すらない。
「いや、別に我慢できない程じゃないし、そんなに寒くないよ。ほら、周りを見てみなよ」
当たり前だが、あまりの寒さに俺は陽菜にしがみついていたんだが、首だけ可能な限り左右に動かして周りを確認すると!なんと!!
おそらく下校中と思われる女子高生はみな陽菜同様生脚!
寒くないのか?おかしいだろ!!!
その他、社会人とみられる女性も何人か電車に乗っているが、そうした方々は見た目から察するにおそらくタイツではなくストッキング。
これは大人の女性は隠すファッションを楽しむものだとかで真夏でも脚はストッキング着用となっているからだが、え?逆に今は夏用の格好でも大丈夫ってこと?
バ、バカな……
「バカは優ちゃんの方だと思うよ。優ちゃんの好きな数字で証明しようか?ほら、今の気温。10月下旬とは思えない暖かさって出てるよ?」
「なん…だと…」
「多分沖縄との寒暖差でそう感じてるんだろうけど、寒波の到来は週明けからだって天気予報でいってるから寒くなるのはこれからだね」
こ、これ以上寒くなるの?????
戻りたい。沖縄に戻りたい……
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まあ、俺個人の話はさておき、バレー部の『ま』さかだ。
今回の修学旅行は2学期の中間テスト明け直後、テスト返却前に行われている。
これはある意味、俺にも責任があると言われると辛いのだが、やはり俺の所属しているバレー部、ということでこの一ヶ月で結構な数の体験入部希望者が出たらしい。
中には一度脱落した子も再度入部を希望したが、それらは軒並みバレー部自慢の筋トレを3日も続けると脱落していった。
もうそれが当たり前になっているので疑問に思わなくなってきているが、やはりバレー部の筋トレは相当ハードであり並みの女子高生では1日ももたないようだ。
まだ俺が高校に通っていた今年の6月頃にバレー部のおっぱいが軒並み大きくなっていると聞きつけた佳代が筋トレだけは一緒にやるマネージャー枠としての体験入部を希望したが、1週間持たなかった。正確には1週間たつ前に全身筋肉痛で動けなくなった。
他にもちらほらそんな子がいたし、陽菜に聞く限り今回もそうだったようだ。
で、結局生き残りはなし。なしだったのだが――
体験入部者が大勢いたのでそれなりに練習時間を取られ、その時間を補うためにテスト期間中であったにもかかわらず自主練習に励んだ奴が結構いたらしい。
で、何が言いたいのかというと……
都平 明日香 2年生2学期 中間考査 数学B 37点
明日香スゥゥゥウウウ!!!