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閑話 準決勝第1試合 実況席より

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 春高 4日目

  実況席より

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「5日に渡る熱戦も残すは後2日。残った高校は男女合わせてわずかに8校。全日本バレーボール高等学校選手権大会 4日目 女子準決勝第1試合は間もなく開始です。

 実況は私、向島(むかいじま) (たかし)、解説は元バレーボール男子日本代表 大曽我(おおそが) 修也(しゅうや)さんで送ります。

 大曽我さん。今日は午前に女子の準決勝が2試合、午後に男子の準決勝が2試合行われますが、まずは午前に行われる女子の試合。ここまで3日間の女子の試合を振り返っていかがでしょうか」


「今年の女子の感想はとにかくサーブが印象に残りますね。3日目の戦いなんかを見ると勝った高校にも負けた高校にもビッグサーバーといえる子が複数人いました。

 おそらくサーブが弱い高校は2日目までにはじかれてしまったのでしょうね。特にここまで勝ち残った松原女子高校なんてその典型ですよ。全員が強力なサーブの使い手で誰もがサービスエースを狙えます。反面、ちょっと守備は苦手かな、と思わせる高校なんですが、予めサーブでファーストタッチを乱して相手の攻撃を簡素化させているのでここまで勝ち残れているんですよ」

 

「松原女子高校と言えば男女合わせても準決勝まで残った唯一の公立高校です。仮に今日と明日、勝って優勝することができれば公立高校として29年ぶりの快挙となりますが、そのあたりはいかがでしょうか」


「う~ん。解説者の立場で特定の高校に優勝してほしいとはいえませんが、仮に松原女子が優勝するとなればすごい事ですね。29年前と言えば彼女達が生まれる前どころか僕が高校生だった頃ですから」


「大曽我さんも学生時代に春高でも活躍なさいました。その高校時代、どんな高校生でしたか?」


「食う、寝る、バレーの3つだけでした。勉強なんてほとんどしてません。ちょっと小耳にはさんだ話ですと松原女子高校は進学校でバレー部員は全員学業も優秀だとか。文武両道。素晴らしいことです。僕には真似できませんね」


「勝ち残った女子4校のそれぞれの特徴はいかがでしょうか」


「女子は面白くて対照的な4校が残っていますよ。まず先ほど名前が挙がった松原女子高校。この高校は平均身長が168cmとリベロが導入されてからは過去最低の平均身長です。

 一方で準決勝の第2試合に出る金豊山学園高校は平均身長184cmと男子並みの身長で、もちろん女子全国1位……なんですが、実はある意味でこの金豊山を上回るのが同じく準決勝第2試合に出る龍閃山高校なんです。

 高校では夏ごろまではベンチ、秋からレギュラーに定着した1年生が1人いるんですが、彼女の身長は163cm。その子を除くとなんと平均身長は186cmと金豊山を上回ってしまうんです。この163cmの子もジャンプ力が凄くて実質の高さは180cm級の選手と変わらないと評価されてますからある意味で女子全国1位は龍閃山高校といえます。

 一方で第1試合はその逆です。片一方は先ほどの大会史上最低の松原女子高校、もう一方の恵蘭高校も平均身長は春高に出場した全52校中45位と決して高くはありません。恵蘭には180cmを超える選手もいません。ですがここまで1セットも落とすことなく勝ち進んで来ています」


「となると女子は準決勝第1試合で最強の小兵決定戦、第2試合で最強の大兵決定戦ともいえるわけですね」


「いい表現ですね。その通りです。ただし、小兵同士、大兵同士でも戦い方は全く異なります」


「どういうことでしょうか?」


「まず体格通りに戦うのが恵蘭高校と金豊山学園高校です。高さが正義のバレーではどうしても低身長は不利です。ところが恵蘭は伝統のツーセッター戦術からの多彩な攻撃で相手ブロックを攪乱し、守備の隙をついて攻撃をします。一方で組織的な守備をすることで失点を防ぎます。速さと技をもってして戦う、まさに正統派の小兵。組織力、守備力では間違いなく今大会で一番でしょう。

 一方金豊山は高い身長を活かして時には相手ブロックを正面からぶち破るダイナミックな攻撃を仕掛けます。セッターがとても優秀でブロックを躱すことが出来るのに、ですよ?

 サーブも長躯を活かした力強いサーブで見ごたえがあります。小技など力で粉砕する近代のパワーバレーを具現化するようなチームです」

 

「この2校がある意味で身の丈に合った戦い方をする一方で松原女子と龍閃山は違うと?」


「その通りです。松原女子高校は大会史上最低身長にも拘らず果敢に金豊山の様なパワーバレーを展開します。恐るべきことに驚異の身体能力で全国の猛者相手にあの低身長でブロックを正面から打ち破ります。そしてサーブ。これは全52校中1、2位を争うほど強烈です。

 龍閃山は龍閃山で高い身長をスパイクではなくブロックに活かす高校です。規律の取れたブロックはやはり全国1位と言えるでしょう」

 

「なるほど。となると準決勝第1試合は正統派の小兵VS異色の小兵となるわけですね。……あっと。ここで間もなく試合開始のようです。

 全日本バレーボール高等学校選手権大会 女子準決勝第1試合 恵蘭高校 対 松原女子高校 勝つのはどちらの小兵でしょうか。注目の一戦です」


短いですが、長くなったので分割します。

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[良い点] >>松原女子高校は進学校でバレー部員は全員学業も優秀だとか 嘘はついてなかったはずなのに噂に尾ひれがついてとんでもないことに…
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