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087 春高3日目の夕方

 世の中には理不尽なことがたくさんある。やりたくないのにやらざるを得ないことがたくさんある。


 俺は心を無にして作業を進める。

 

 俺が洗濯槽に放り投げているこれはただの布切れ。これはただの布切れ。


 ピッ

 

 ボタンを押すと電子音が鳴る。これで1時間程の間は特にすることが無い。ここから離れるわけにもいかないが。

 

「優莉。大丈夫?表情が固まっているけど?」


 ユキが俺に声をかけてくる。まあ表情を殺していたからな。

 

「下着のサイズなら気にしない方がいい。優莉だって平均より大きいし、陽菜やお姉さんを考えれば私より大きくなる将来もあると思う」


 ユキがいい笑顔で励ましてくれる。

 

 ……いや、そっちで凹んでたんじゃないんですよ。

 

 確かにみんな大きいなあって思いながら洗濯槽の中に衣類を入れてましたけど!

 

 辛いのは俺がみんなの下着を触ることなの!

 

 春高3日目の夕方。ここは都内某所のコインランドリー。

 

 

 今日は俺とユキが代表してみんなの衣類を洗濯機にぶち込んでくる役目を担っている。元とはいえ、若い男が親族でもない女子高生の下着含む衣類を洗濯する。

 

 どう考えても犯罪です。


=======


 春高は3日目を終えた。

 1日目の1回戦は楽勝だった。明日香曰く「本当はもっと強いはずなんだけど、優ちゃんのサーブで平常心を乱しちゃって実力を発揮できないままだった」そうだ。


 2日目の2回戦の対戦相手は相性が良かった。決して弱くはなくむしろ強い方なんだろうけど、決定力ではなく粘り強くラリーを制して得点を重ねる典型的な女子バレーのチームだった。

 そのレシーブ力は高く、玲子のスパイクすら易々と決めさせなかったが、ブロックを無視できる高さから攻撃を仕掛けてくる俺のスパイクはそうではなかった。相手の得意戦術を封じ、点取り合戦に持ち込んだことで俺達は勝利することが出来た。

 

 3日目の今日からは苦戦した。12月に組み合わせが決まった時から「初日、2日目は多分勝てる。3日目からが勝負」と明日香が言っていたが、その通りの結果となった。

 

 元々、春高の3日目は鬼門とされている。この日は春高全5日間のうち、唯一1日2試合行われるからだ。3回戦と4回戦(準々決勝)の間にはお昼休みを挟む程度の時間はあるが、この時間の使い方も一つの作戦となる。4回戦に進む高校は昼食はもちろんだが、マッサージやストレッチも行う必要がある。3回戦で使った筋肉をほぐし、固まるのを防ぎ、少しでも体調を整える。あるいはいっそのこと仮眠を取るのもいいだろう。試合前には休んで冷えた体を暖めるべくウォームアップを入念に行う。この辺りの時間配分が難しい。

 

 そしてそんな4回戦の事なんて考える余裕が吹き飛ぶほど3回戦は苦戦した。相手はサーブ&ブロックのチーム。スパイクサーブ、ジャンプフローターサーブの使い手をずらりと揃え、しかも全員がサーブ時に腕をしっかり振ってくる。

 

 こちらの手の内が完全にばれている。松女(俺達)の平均レシーブ力は決して高くない。だから相手に腕をきっちり振られて強烈なサーブを打ち込まれるとレシーブミスをしやすくなる。相手は失敗してでも強いサーブを打つように仕掛け、事実こちらはレシーブミスを多発し、一時は7点差をつけられた。

 

 そんな時に流れを変えたのは主将の明日香だった。


「はいはい落ち着いて。相手のサーブは取れるよ。みんな腰が高くなってる。どうせ相手の方が背が高いんだから、高く見せて威圧しようったって無駄だからやめようね」


 などと言いながらコート内のチームメイトのケツを叩いて回る。

 

 なお、その際に「ほら、お尻が重くなってるよ。腰は低くしてもお尻は落とさない。ちゃんと動いて真正面でレシーブしようね」などと言われたのだが……

 

 ツッコミたい。が、俺は紳士。それは言ってはいけない。言ったらセクハラだ。が――

 

「いや、私のは明日香よりは軽いぞ?」

「私も明日香よりずっと小さい」

「安産型の明日香には負けるんだけど……」


 俺が我慢し、こんな時に真っ先に口に出すであろう未来がリベロのユキと代わってベンチにいるにも拘わらず、玲子、ユキ、歌織にツッコまれてこのありさまである。

 

「だ、誰がお尻の大きさの話をしてるのよ!そういう意味じゃない!」

 

 顔を赤くして自分の尻をおさえる明日香。ここで俺以外に発言をしていなかったチームメイト、陽菜が追い打ちのツッコミを入れる。

 

「でも明日香のお尻は確かにみんなより大きいよね」


 はいダウト。


「何言ってるの?お尻は陽ねえがバレー部で一番大き……痛い痛い!」


 事実を述べただけなのになぜか陽菜に耳を引っ張られた。解せぬ……


 ともあれ、このバカ会話のおかげで緊張が解け、この後に逆転。第1セットは27-25でなんとか取ることが出来た。

 

 良くも悪くも勢い任せなところが多い松女(俺達)はこれで勢いを得て、反対に相手は7点差を逆転されたことで流れを失い、続く第2セットも25-16で取ることが出来、何とか4回戦に進むことが出来た。

 

 お昼休みを挟んだ4回戦、準々決勝も苦労した。

 

 相手には身長156cmと今大会最小のセッターながら「背が低いだけで実力はU-19(ジュニア)レベル」と明日香が評価するスーパーセッターがいた。

 このセッターは背が低いのを活かして多少どころか俺の胸くらいの高さで返球される低いボールでも膝を曲げてボールの下に潜り込み、強気に速攻を仕掛けてきた。

 俺達のブロックシフトはスプレッド・シフトというブロッカーをレフト、センター、ライトにそれぞれ散らばらせて配置する形にしている。これはどんな攻撃でも最低1枚、出来れば2枚のブロックをつけるためで、オープン攻撃でもない限り3枚ブロックとはならない。

 

 上手いところならスプレッド・シフトでも速攻を3枚ブロックに出来るのだろうが、俺達にその技量はなく、左右中央にトスを振り分ける相手セッターに対応しきれず、相手のスパイクに対しブロックが1枚、そこを抜かれて失点というケースが多発した。

 

 もちろん、俺達もやられっぱなしではない。やられたら倍返しだと言わんばかりに攻め続け、両校点の取り合いという形になった。

 

 そして最後に勝敗を分けたのはやはり相手セッターの156cmという低身長だった。

 

 背丈の割には高く跳べる。ブロックも背丈の割には高い。が、それでも玲子はもちろん、明日香や歌織のスパイクすらそのブロックの上を通過できてしまう。そのため、彼女がブロックを仕掛けて来ても俺達の攻撃を止めることは出来なかった。

 露骨にブロックの穴をねらう俺達に対し、それをカバーするために相手校は無理をしてでもブロックや守備体制を変えて対応しようとした。が、それはそれで別の穴ができてしまい、そこを俺達が突いて25-23、25-20と2セット連取する形で勝った。


=======


 コインランドリーの乾燥機付き洗濯機が一定のリズムで唸っている。洗濯槽の中では俺達が先ほどまで着ていた衣類が躍っている。

 

 なお、立花家のルールではブラはブラでもスポーツブラならちゃんと形を保てるように畳んで専用の洗濯ネットに入れれば洗濯機で洗ってよいことになっている。今回は部員全員にそのルールを守らせた。手洗いしたければ自分でやれということだ。

 で、衣類の洗濯・乾燥が終わるまでやることが無いのだが、だからといってここを離れるわけにはいかない。

 

 俺達はこの3日間で多少は知られるようになっていた。

 

 元よりバレーボールの月刊誌に載ったり、キー局からのTV取材も受けて春高開始前でも結構有名になった俺達だが、この3日間の勝利でさらに有名になっているようだ。

 元々正月でニュース番組のスポーツコーナーは話題が限られている。そのためか、尺を埋めるために例年『プロ野球の〇〇選手が海外で自主練を……』というのを話題にしてしまうほどネタが無いところに、自分で言うのも恥ずかしいが美少女女子高生が逆境をはねのけて勝ち進んでいるのである。そりゃ話題にはなる。昨日も俺達が時間にして1~2分だろうが全国放送のTV番組に出てたりしている。

 

 まあ話題になるといっても所詮は『高校女子バレー』という狭い世界での話だ。

 

 これが日本で一番知名度のある高校生スポーツ、男子硬式野球で例えば『春の選抜野球で無名の県立高校が準決勝まで勝ち進みました』なんてことになれば今よりももっと世間をにぎわせていたとは思う。

 

 とはいえ、有名になっているのは間違いなく、初日より2日目、2日目より3日目の方が俺達を応援する人が増えている。

 

 強豪校が派遣してくる応援団と違い校歌や応援歌が演奏されることは無いし、選手名をコールされることも無いが、確実に俺達の力になっている。

 

 さらに明日からは松原女子高校から正式にチアリーディング部と吹奏楽部が応援に駆けつけてくれる。これで俺達を応援する声はもっと大きくなるだろう。

 

 そして有名になると有名税が発生する。

 

 会場内はどこに行くのも常に衆人の監視付きだ。迂闊なことは出来ない。いつどこで見られているかわからないからだ。陽菜からはいつも以上に座り方などの仕草や身だしなみを気を付けるよう言われている。

 

 今、コインランドリーで2人残っているのも有名税対策だ。

 

 俺達は可愛い女子高生バレーボール選手として少しは知られている。

 

 日本の治安はそこまで酷くないとは思いたいが、例えば今ここで俺達がコインランドリーを離れると、その可愛い女子高生の衣類に対し良からぬことを企む変質者が出るかもしれない。

 

 故に見張りとして俺とユキが残っている。人選は明らかに失敗しているが……

 

 こんな時に相応しい人選とは2つある。1つは変な気を起こそうという気を無くさせる抑止力を持っている奴。もう1つは実際に変質者が現れた時に対処できる奴。

 抑止力の時点で女子高生である俺達は全員失格と言えそうだが、それでも背が180cm近い歌織、そこまでではないにしろ成人男子並みの背丈の玲子、気の強さがにじみ出て何かあったら反撃しそうな雰囲気の未来あたりはまだしも抑止力があると言える。

 

 反対に抑止力が無いのが背が低く、見た目も華奢な俺とユキ。愛菜も女子にしては肩幅が広くたくましいが所詮女子高生。男子ほどではないし、背丈も普通の女子高生程度。これもダメだろう。

 

 実際に変質者が現れた時に対処できる奴という面では俺以上に相応しい奴はいないだろうが、まずは抑止力だと思う。

 

 


 まあ決まった人選を後から言っても仕方が無い。

 

 洗濯が終わるまでの間、俺とユキは2人で待つことになっている。

 

 ……ユキと二人っきりとか何を話していいのかわからん。ユキ自身は暗い性格ではないんだが、自分から積極的に話すような奴ではないから何か話題を作らないと……

 

 

 これが陽菜だったらネタはいくらでもあるから全く困らなかった。

 明日香か未来ならほっといても1時間くらいなら勝手にしゃべり続けるから適度に返事をするだけでも良かった。

 ドストイックな玲子なら今日のバレーの反省会だっただろうな。

 歌織は見た目がイケメン系美女にも拘らず中身が乙女だから俺が普段涼ねえや陽菜に着させられたりする服とか、後は普通に化粧とかファッションとかの話にすごい食いつく。

 愛菜は俺の髪の毛をいじるのが好きだ。少しは気持ちはわかる。俺くらい髪が長いと色々遊べる。きっとの俺の髪形を変えるだけで1時間は余裕で遊ぶ変態だ。

 

 

 ではユキは?いまいちわからん。勉強ができるから冬休み明けの実力テストの話でもするか?

 だが、この場で勉強の話とかつまらない奴だと思われかねん。よし、とりあえずここは無難に今日の試合の話をしよう。

 

「いや~。今日の相手、強かったね」

「うん。特に午後に戦った多治川高校は10回やったら2、3回は負けてたと思う」

「あ、それでも私達が7割以上で勝てるんだ」

「……今日の2試合とも上手く試合を運べなかったパターンだと思う。サーブは良かったけど、ブロックがダメ。左右にブロッカーを走らされてブロックが1枚だけとか、2枚でもタイミングが合ってなかったりしてた。せっかく高く跳んでもスパイクを打たれる瞬間とほぼ同時にブロックが完成していないとハリボテの壁になる」


 あ~それな。俺もローテによっては後衛だから後ろから自分達のブロックを見る機会がある。1、2日目と比べると今日はブロックが雑になってると感じた。リベロでずっと後衛のユキからすればなおさらだろう。

 

「で、今日も不十分なブロックをユキがカバーしてくれたんだね」

 

 いやホント、この小さな守護神がいなかったらどうなっていたことやら。

 

「そんなことはない。むしろブロックの不備を補ってくれたのは優莉の方」


 ???どういうことだ?

 

「歓声が上がるようなスーパーレシーブだけがいいレシーブじゃない。多分自分で思っている以上に優莉はレシーブが凄い。優莉は守備の要」

 

 ???

 

 なんかの冗談か?

 

 俺がどうしたものかと困っているとコインランドリーの引き戸がガラガラと音を立てて開かれ、外から大きなボストンバッグを左右の肩に1つずつ、計2つかけた女性が入ってきた。

 

「あ、モンロー先輩!」


「……それ、恥ずかしいから平山か、麻里でお願い」

 

 恵蘭学院高校のモンロー改め平山先輩の登場である。

 

 

============


「妙なところで会っちゃったけど、明日はよろしくね。手加減はしないけど」


 今日の試合結果から、平山先輩率いる恵蘭とは明日の準決勝第1試合でぶつかることになる。

 

「こちらこそ、よろしくお願いします。ところで平山先輩は3年生なんですよね?」


「そうだけど?」

 

 ちなみにこうして話している間にも平山先輩は慣れた手つきでボストンバッグから大量のユニフォームを取り出し、そして洗濯槽に入れている。

 俺達もそうだが、今日は2試合あったのでセカンドユニフォームも使っており、大量に洗濯ものがあるのだ。8人の俺達ですらセカンドユニフォームを含め16着分のユニフォームを洗っている。

 ……ユニフォームを洗わずに翌日以降も着るという選択肢が無いわけではないが、少なくとも松女(俺達)にはなかった。ちらっと見ると色違いのユニフォームが見える以上、恵蘭もそうなのだろう。


 大所帯と思われる平山先輩のところだとおそらく選手登録数上限の18人分、それが2試合分で計36着分のユニフォームを洗うためにもってきているはずだ。


 

 

「3年生なのにどうして洗濯当番なんですか?そんなの1年生とかマネージャーにやらせればいいのに……」


「えっと、優莉ちゃん、だったわね。確かに他所の高校だとそんな文化があるのかもしれないけど恵蘭(私達)にそんな文化は無いわ。自分のことは自分でやる。当然の事でしょ?」


 当たり前だと断言する平山先輩。ついでに向こうも大量の洗濯物を洗濯槽に入れ終わったようで、何度か電子音が鳴った後、洗濯機が動き始めた。

 

「恵蘭もこの辺りに宿を借りていたんですか?コインランドリーはこの辺りにここ一軒だけなんですけど、その割には昨日も一昨日もこの辺りで恵蘭とは会いませんでしたから」


 これはユキの発言。

 

「あぁ。私達、昨日まで別の宿を借りてたの。11月に予選を突破してからすぐに宿を探し始めたんだけど、中々条件に合わなくてねえ。今日から泊まるところは4日目以降に勝ち残ってないと使わないところだったの。今朝まで泊まっていたところは良いところなんだけど、会場まで1時間近くかかるの。移動だけで疲れちゃう。明日からようやく移動に疲れなくて済むわ」

 

「あれ?私達、本格的に宿を探し始めたのは12月からって聞きましたけど、会場までは徒歩で10分もしないこの辺の予約が取れましたよ?」


「それは君達だからよ。雑誌で読んだんだけど、君達は部員8人にマネージャーはなし、なんでしょ?小回りの良さが違うわ。恵蘭(私達)はユニフォームを着れなかった子とマネージャーを合わせると50人近い大所帯だからね」

 

 なるほど。確かに今泊まっているところにあと50人分のキャパがあるかと言われればNoだろう。

 

 ついでにこの辺に泊まれるようになった理由も見当がつく。春高に出場したのは男女合わせて計104校。3日目を終わって残っているのは計8校。実に96校が敗退している。おそらく恵蘭が泊っているところはどこかの高校が負けて宿を後にし、そこに泊まる形になっているのだろう。単純に50人分の宿泊室が空いただけなのかもしれないが……

 

「それにしてもあなた達、凄いわね。これも雑誌で読んだ情報なんだけど部員の殆どが高校からバレーを始めたり、ブランク有だったんでしょ?それで8ヶ月後には全国ベスト4。正直、嫉妬しちゃうわね」

 

「それを言うなら平山先輩も去年アジアで――」


 突如現れた平山先輩はいい人ですごく話しやすい。気が付けば色々と話し込んでしまった。

 ひょっとしたら俺達に喋らせて少しでもこちらの情報を聞き出そうとしていたのかもしれないが、向こうから聞かれたのは趣味だとか休日に何をしているだとか、勉強だとかを話したところでバレーに関係するとは思えない話題ばかりだからそんな意図はなかったのだろう。

 

 なんというか世代代表に選ばれる人はこう、舞さんとか千鶴お姉さんとか個性が強いイメージがあるが、平山先輩からはそんな感じがしない。

 

 と、そこで俺達の衣類を入れた洗濯機から終了を告げる電子音が鳴った。さらに――

 

「見つけた!!!」

 

 と、大声と共にジャージ姿の女の子が2人、入ってきた。

 

「主将!こんなところで何をやってるんですか!」

「何ってみんなのユニフォームの洗濯だけど?」

「そんなのはユニフォームを着れなかった子かマネージャーにやらせてください!」

「自分のことは自分でやりたいのだけど?」

「『自分のことは自分でやる』のと『他人の仕事を奪う』のは別です!」

「宿が変わったんだからマネージャーもユニフォームを着れなかった子も裏で用具移動だとか、部屋の手配とかで忙しいでしょ?だったら」

「だったらもヘチマもありません。あと、無断でないとはいえ、コーチに一方的に『自分が代わりに洗濯してきます』って言って許可無くいくのもダメです」

「……みんな疲れているでしょ?だから」

「だから主将()が真っ先に休んでください。休んでくれないと部員()はいつまでたっても休めません」

 

 

 ……どうやら平山先輩は他の部員の仕事を奪ってここに来ているようだ。

 ちなみに一緒に入ってきたおそらく恵蘭の後輩の子の1人はスマホを取り出し

「加賀谷です。平山主将を見つけました」

 とか

「はい。私か広江のどちらかが主将を宿まで連れて行きます」

 とか

「寄り道はもちろんさせません」


 なんて言っている。



「優莉」

 

 おっと。恵蘭のお家事情に構っている場合じゃなかった。

 

 ユキに促された俺は洗濯槽の中から衣類を取り出す。

 

 流石コインランドリーの乾燥機はガスを使っているだけあって電気で乾かす家庭用の洗濯機の乾燥機と違い、短時間でカラッと乾く。

 

 俺達は手分けをして洗濯物を持ってきたボストンバッグの中に詰め込み、コインランドリーを出る。

 

 出る間際、

 

「あ、優莉ちゃん、ユキちゃん、こんな形で終わってごめんね。明日はよろしく」

「あー!松女の子じゃないですか!本当に何やってるんですか!」


 なんて声を掛けられた。

 

 

 

 

 明日はこの先輩とやるのか。なんとなくやりづらいなぁ。

※春高に登録できる選手の上限は18名分です。ただし、1試合ごとに一般枠の選手を最大12名、それにプラスしてリベロ枠の選手を最大2名選出する必要があります。


 ……違っていたら教えてください。

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