プロローグ
バレーボールという球技がある。
年齢、男女で多少ネットの高さは変わるものの、2m以上の高さに設置されたネット越しにボールを打ち合うという点は変わらない。
ネットの高さ故に、選手は時に跳躍し、ネットより上の高さからボールを打つこともある。
そのバレーボール選手の能力指標には最高到達点というものがある。
助走をつけて跳躍したときに何cmまで手が届いたか、というものである。
女子の場合は以下の通り。
全国大会に出場する高校生の平均 約270cm
高校生の全国トップクラス 約300cm
プロの世界の平均 約300cm
プロの世界のトップクラス 約330cm
高さはバレーボールにおいて重要な武器だ。
どんなに強力なスパイクも高いブロックに阻まれては意味がない。
クイックやフェイント、時間差攻撃もつまるところブロックを躱すための戦法にすぎない。
ではもし、ブロックなど問題にならない高さからスパイクを打てるとしたら?
「……348cm」
周囲が驚きの顔をしている。この記録は160cmにも満たない女子高生が叩き出せる高さではない。
これは驚異的な身体能力を誇るとあるTS女子高生の物語である。