ep.009 pm8:35 北海道千歳市 新千歳空港
pm8:35 北海道千歳市 新千歳空港
ANA1719便は天候不良の為、定刻より5分程遅れ北海道・千歳空港に到着した。
飛行機を降り、通路を到着ロビーに向かう。
《三年ぶりにか・・・。一年しか北海道には住まなかったけど、今となってはいい思い出ね・・・》
皐月がそんな事を考えながら歩いていると、背後から声が掛かる。
「皐月、少シ元気無イデスネ。ドウカシマシタカ?」
振り返ると、少し大きめのアタッシュケースを持ったマイケルが居た。
人を安心させる笑顔を作ると、
「何ダカ背中ガ淋シソウデシタ。大丈夫デスカ?」
皐月は口元を上げ、首を横に振り、
「少し北海道が懐かしかっただけ、昔住んでたから」
「Oh! ソウデスカ。ダッタラ、私、安心シマシタ」
マイケルは、陽気な笑顔になる。
腕時計を見ると、
「皐月、ゴメンナサイ。私、今カラ早速ビジネスミーティングガ有リマス。トテモ忙シイデスネ。Oh! 私ノビジネスカード貸シテ下サイ」
皐月は言われるがままに、マイケルの名刺を渡した。
マイケルはスーツの内ポケットから、ファーバーカステルのペンを取り出しサラサラと何か書いた。
皐月に名刺を返し、
「ソノ番号ハ、私ノcellphoneデス。皐月、機会有レバ食事シマショ。人ト食事スルノ私大好キネ。business tripデ世界飛ビ回ッテルト、仕事ノオ付キ合イ以外ノ食事、シタクナル時トキ有リマス。ダカラ、ソノ時ハ」
皐月は、クスッと笑い、
「あら、構わないけど、私との食事は高くつくわよ。《もっとも、こころも一緒の食事なら、別の意味で高くつくけど》」
マイケルはウインクして、
「イイデスヨ。何ダッタラRestaurant丸ゴト買ッテ、dinnerシマスカ?」
「それもいいわね」
皐月も陽気に笑った。
「ジャ、私ハ急グノデ。皐月、See you!」
皐月は、マイケルと握手をして別れる。
マイケルは言葉の通り忙しいのだろう、速足で到着出口へ向かって行った。
皐月はゆっくりした足どりで、同じく到着出口へ向かう。
ふと、マイケルの名刺を取り出し、深くため息を吐くと、
《これって、やっぱりナンパなのかな?もしかして、運命の出会いだったりして・・・。でも有り得ないわ、私は“忍び”だから》
頭を数回振り歩き出す。
その表情は、クールに仕事を遂行するいつもの皐月に戻っていた。