ep.007 pm7:30 長野県上空 ANA1719便
pm7:30 長野県上空 ANA1719便
「串カツ弁当、トテモトテモ、美味シカッタデス。皐月、アリガトゴザイマシタ」
マイケルは、謝辞を述べ頭を下げた。
皐月は首を横に振り、微笑み、
「礼にはおよびませんわ、マイケル。いくら美味しい物でも、さすがに続くと」
マイケルはすっと席を立つと、
「チョット、待テテ下サイ」
そう皐月に告げ、元の席に戻る。
アタッシュケースを開き、何か取り出した。
マイケルは笑いながら戻ってくると、皐月の両手ににスッポリと収まる程の小箱を差し出し、
「コレ、オ弁当ノオ礼デス。ヨカッタラ使ッテ下サイ」
皐月は少し困惑した表情で、
「そんなつもりで差し上げた訳では・・・。困ります。マイケル」
「気ニシナーイデ、皐月。買ッタ物デハ有リマセンカラ」
「え?」
皐月が不思議そうな顔をすると、マイケルは説明をしだした。
「コレハ、Europeノ親戚ガ、デザイナーヲシテイルブランドノ、サンプル品デス。私、ソノプロモーションモ、シテマスネ。マダ、日本ニハ入ッテマセン」
「そうなんですか?それじゃあ遠慮なく」
皐月は小箱を受け取る。
見た目より重かった。
しげしげと眺め、
《これって、もしかして香水?表記は英語じゃないわね。んーと、ブランド名が、サヴ・ルーゲン。商品名が、エーヴィヒ・プリンツェッタ》
マイケルはニッコリ笑い、
「Englishニ約シマショウカ?ブランドネームハ、Sweet Lies。パフュームノ名前ハ、Eternal Princessデス」
皐月は気に入った様子で、
「そうなの?面白い名前のブランドなのね。“甘い嘘”の“永遠のお姫さま”か・・・。何だか、凄くロマンチック。でも、嫌いじゃないわ。開けてもいいかしら?マイケル」
マイケルは嬉しそうに、
「プリーズ。皐月、アナタノ物デスカラ」
皐月は、丁寧に丁寧に香水の箱を開け、
「まぁ、可愛いいデザイン」
皐月の取り出した香水瓶は、薔薇の蕾をモチーフにした本体に、ティアラをイメージさせる蓋で封がされていた。
ほのかに甘い香りが・・・。
皐月は香水瓶を鼻に近づけ、
「薔薇ね」
封を開け、手首に少し吹き付けてみる。
脈打つ毎に、優しく、そして気品がある香りが、皐月の周りに広がった。