ep.006 pm7:10 愛知県上空 ANA1719便
pm7:10 愛知県上空 ANA1719便
「オ嬢サーン、隣イイデスカ?」
皐月が機内食のお弁当を楽しんでいると、特製浪花串カツ弁当を手に持ったイケメン外人が声を掛けてきた。
元々空席だったので、断る理由もない皐月は微笑み、
「ええ、どうぞ」
「先程ハ、アリガトウゴザイマース。一昨日モ、同ジ飛行機ニ乗ッタモノデスカラ。アッ、失礼シマシタ。私、マイケル・ブルームフィールドト言イマス。コレ、マイ・ビシネスカードデス」
そう言って、名刺を差し出した。
皐月は受け取り、自身も名乗る。
どうやらマイケルは、日本語を話せる様なので、もちろん日本語で。
「私は烏丸皐月です。ごめんなさい、私、名刺持ち合わせてないので・・・」
マイケルと名乗った外人は、無邪気に、
「大丈夫デス。私、人ノ名前覚エルノ得意ネー。特ニ、綺麗ーナ人。アナタ、ミス烏丸サン。違イマスカ?」
皐月はクスッと笑い、
「ええ、烏丸です。But, you made small mistake. “ミス烏丸サン” means “miss miss 烏丸”. I guess you should say “ミス烏丸” or “烏丸サン”. (でも、ちょっとしたお間違いをされています。“ミス烏丸さん”は、“烏丸さんさん”って意味ですもの。だから、“ミス烏丸”か“烏丸さん”とおっしゃる事がよろしいかと)」
マイケルは残念そうに、
「Oh!ゴメナサーイ。烏丸サン」
「気にしないで、ブルームフィールドさん。日本語難しいですから」
マイケルは皐月の優しさに触れたのか、
「Thank you. Please, call me Michael. (ありがとう。僕の事は、マイケルとお呼び下さい)」
皐月は頷き、
「皐月で、かまいませんわ。マイケル」
そう言いつつも、皐月はチラリと名刺を確認する。
こう書いてあった。
Bloomfield Brother Corp. CEO Michael M. Bloomfield
《へぇ、このマイケルさん。若いのに最高責任者なんだ。オフィスは・・・、嘘!ロックフェラー・センター!!ニューヨークの一等地じゃない》
皐月の感心を余所に、マイケルは子供っぽく弁当を開け、
「ワォ、串カツ!トテモdeliciousネ」
満足げに串カツをパクつき出した。