ep.018 pm11:17 北海道札幌市中央区 スキャンダル・セックス・スウィート
pm11:17 北海道札幌市中央区 スキャンダル・セックス・スウィート
“スキャンダル・S・スウィート”の入るミリオンビルの4階は、どうやら個人オフィスのフロアになっているらしく、エレベーターを降りると通路を挟み4つの鉄のドアがあった。
広尾は左手前のドアの前で立ち止まると、ジーンズのポケットから鍵を取り出す。
ガチャガチャと開けると、皐月を中に誘い、
「この中で待ってて」
皐月は息を止めたまま頷き、部屋の中に入った。
広尾は部屋に入らない。
いや、正確には部屋に入れないらしい。
《ふーん、あの腋臭男は入れないんだ。だとこの部屋には何か秘密が・・・》
広尾は皐月が部屋の真ん中にある応接セットのソファーに座るのを確認し、ニヤニヤといやらしい笑顔を皐月に向け、
「じゃあ、がんばって」
意味深な言葉を残しドアを閉めると、さっさと戻って行った。
皐月は目を閉じ意識を集中する。
広尾の足音が遠退くの確認すると、立ち上がり部屋の中を見回した。
目に入ったのは、オフィス机の上にノートパソコンが一台、帳簿や書類が入った書類棚、観葉植物、神棚、そして、半開きになってる隣の部屋へ通じるもう一つのドアだ。
皐月は、半開きのドアの隙間から隣の部屋を覗き込む。
《ああ、やっぱりね・・・》
皐月が目にしたのは、キングサイズのベッドだ。
《どうせ、講習と称していやらしい事をするのね。ふーん、面白いわ・・・。ん?》
皐月は耳を澄ました。
刹那、エレベーターが停まる音が聞こえ、誰かの足音が近付いてくる。
《足音からして男ね》
皐月は直ぐさまソファーに戻って座ると、緊張している雰囲気を醸し出した。
ノックも無くガチャリとドアが開き、少しイラついた声で、
「ごめん、ごめん。待たしたね」
チャラいスーツを着た三十代前半の男が、入って来た。
男は皐月の目の前に、ドカっと座る。
皐月はサングラスの奥底で、男の値踏みをしながら、
《この男が、腋臭男が電話で話していた石山ね。しかし、何処で買ったのかしら品の無いスーツね、シャツの柄も趣味悪いし。髪型も最悪。肌ケアしてるのかしら、ニキビだらけじゃない・・・。美青年とはいわないまでも、マシな男いないのかしら・・・》