ep.017 pm11:05 北海道札幌市中央区 スキャンダル・セックス・スウィート
pm11:05 北海道札幌市中央区 スキャンダル・セックス・スウィート
皐月がエレベーターを2階で降りると、目の前に“スキャンダル・セックス・スウィート”の扉が在った。
扉は開かれており、通路にはイベント情報やら嬢達の写真が貼ってある。
もちろん、写真はそれぞれ多少なりとも加工済みだ。
皐月は壁をチラリと眺め、
《何処も入口は似たり寄ったり・・・。でも、余り高級感はないわね》
そんな事を思いながら、受付まで足を進めた。
呼び鈴を押すと、ムチムチに太った体にぴっちりしたロンTを着たニキビ面の若い男が現れる。
やらしい笑みを浮かべ、
「さっきお電話くれたコかな?」
皐月はサングラスを外し、
「はい。鳶田です」
作り笑顔で応えた。
若い男は頷くと、ちょっと待っててとだけ告げ、いったんその場から消える。
何処かに連絡をしている声が、漏れ聞こえてきた。
「・ぐ・戻って・・下さ・よ、石山さ・。・っぱは・・ま・が、上物・・すから。・い、はい。分・・ました。石山・んの部屋・・・て・たせ・・いい・すね」
皐月は、目を閉じ耳を澄ませ会話の全てを聞くと、
《どうやら、石山というのが面接するのね・・・。ふーん》
皐月の口角が吊り上がり、瞳の奥が妖しく光る。
しばらくして、受付左側に在る扉が開いた。
電話の相手に余程緊張していたのか、うっすらと汗をかいたさっきの若い男が、皐月に語り掛ける。
「あのー、鳶田さん。上の者が面接するんで、ついて来てもらえるっすか?」
皐月はコクンと頷いた。
若い男と皐月はエレベーターに乗り込む。
先ほどは余り意識しなかったのだが、皐月は異臭に気付く。
《この若ゾー、腋臭?勘弁してよね。潜入操作でなかったら、即効で殺ってる処だわ》
皐月は男の腋臭の匂いをごまかす為に、自身の左手首を鼻に持っていく。
マイケルに貰った香水が着けてあるのだ。
若い男は4階のボタンを押して振り向くと、ニヤニヤしながら皐月を眺める。
そして、馴れ馴れしく、
「俺、広尾いうんやけど、宜しくな。鳶田さんはドコ出身の人?」
「あっ、元は千葉です」
皐月は、柔らかく答えた。
しかし、深く掛け直したサングラスの奥底では、
《私に喋りかけるな、この腋臭男が!臭いんだよ!うわっ、口臭も最悪だわ。殺す、次に話掛けてきたら絶対殺す・・・》
そんな事を強く思っていた。