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ep.016 pm10:48 北海道札幌市中央区 すすきの交差点

pm10:48 北海道札幌市中央区 すすきの交差点


「おじさん、ありがと」

タクシー運転手に料金を支払い、皐月はすすきの交差点近くに降り立つ。

見た目はどうみても、出勤前の風俗嬢かキャバ嬢だ。

ルイ・ヴィトンのバックから、ホテルで使った携帯とは別物の派手にデコレーションされた携帯を取り出し、掛けた。

“スキャンダル・セックス・スウィート”のスタッフが出ると、皐月は舌っ足らずな声で、

「あのぉ。先程電話した鳶田ですけどぉ・・・。はい、面接の・・・。はい、はい。コンビニの斜め向かいの赤レンガ色のビルの2階ですね。分かりました。はい、ええ。それじゃあ、お願いします」

皐月が携帯を切ると、何処から湧いきたのか見るからにチャラいスーツを着た男がニヤニヤしながら近寄ってきて、

「彼女ぉ。今から仕事?ちょっと話聞いてくんない?悪い話じゃないからさぁ。俺さぁ、スカウトしてるリョータってんだけ・・・」

スカウトの男は、話の途中で固まる。

皐月が掛けている派手目のディオールのサングラスを外し、男のネクタイを掴む。

ぐいと引き寄せ、殺気を最大に放ちながら睨みつけると、

「私に構うな。キサマ、殺すぞ」

ボソリと、確実に殺意を持った声で囁く。

まさに蛇に睨まれた蛙の様である。

男は口をパクパクさせ何も言えず失禁し、ズボンが濡れていくのを感じた。

皐月が手を離すと、男はへたりこみ意識を失う。

皐月は、まるでゴミでも見るかの如く蔑み。

《ま、こんなものか・・・。悪いわね、久しぶりに殺気を出す練習相手になってもらって。でも、あなたが悪いのよ。相手を選ばずに声を掛けてくるから。くすっ》

皐月は、振り返る事なく店に向かって歩きだした。


しばらくして男の仲間がやって来ると、頬を軽く叩き、

「おい、リョータ。どうした?うわっ、汚っ。お前、ションベン漏らしたんか!」

リョータと呼ばれた男は、顔面を蒼白にしたまま、ガタガタと震えだし、

「しっ、死神や・・・。あれは、ばーちゃんが言ってた死神・・・。嫌や、嫌や、嫌や。俺、もうこの仕事辞める・・・。俺、死にたくない・・・。うわぁーーーーー!」

リョータは叫びながら、全力で走り出した。

しかし、直ぐに足が縺れ躓くと、顔を地面に強く打ち付ける。

リョータは泡を吹いて動かなくなった。

仲間の男は青ざめ、首を横に振ると、

「何があったんや・・・、リョータ・・・」


一方、そんな事が起こった事など歯牙にも掛けない皐月は、赤レンガ色のミリオンビルの前に立ち、悪魔的な微笑みで、

《ここの2階ね・・・。どう楽しまさせて貰えるのかしら》

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