ep.014 pm10:03 北海道札幌市北区 札幌クイーンホテル
pm10:03 北海道札幌市北区 札幌クイーンホテル
皐月は、セカンドバッグから何やら取り出す。
部屋付け電話機の受話器に取り付け、電源を入れた。
《ボイス・チェンジャーは、これでよしと・・・》
ニヤリと怪しく微笑み、徳野からのメールにあった客専用の番号に掛ける。
すぐに店のスタッフは出た。
「もしもし、ユウちゃんを呼びたいんだが・・・。いや、初めて電話したので。そう、まだ会員じゃない。時間は、今日の夜中から明日の朝まで。無理か?キャンセルが出たから大丈夫。そりゃ、ツイてるな。ああ、自宅じゃないホテルまで。札幌クイーンホテルの1701号室、プリンセス・スウィートだ。名前は白鳥。ああ、折り返し確認ね。松崎の名前で電話を掛けてくるんだね?分かった。じゃあ、一度切るから」
皐月が名乗った白鳥は、チェックインやこんな時に使う偽名だ。
皐月が電話を切ると、一分も経たないうちに電話のベルが鳴る。
皐月が取ると、フロントからだった。
「はい、もしもし。ああ、私だが。うん、松崎ね。いや構わん、繋いでくれ」
皐月はほくそ笑み、
《掛かった!》
ホテルのフロントが、電話を繋ぐ。
「はい、白鳥。ああ、これでいいんだな。何?時間が0時半から6時半までになる?それで、結構だ。料金が10万ね。じゃあ、頼む」
皐月は電話を切り、ボイス・チェンジャーを外してバッグに仕舞う。
今度は携帯を取り、184を付けて店に掛ける。
もちろん、求人の電話番号だ。
さっきとは違う年配の男が出る。
皐月はワザと舌っ足らずな声で、
「もしもし、雑誌見て電話してるんですけどぉ。名前ですか?鳶田弥生といいます。今夜から働きたいんで、面接とか大丈夫ですかぁ?ありがとうございます。経験ですかぁ?はい、新宿で少し。はい、今、札幌駅の近くなんで、一時間もしないうちに事務所には行けるかと・・・。はい、じゃあススキノの辺りに行ったら、また電話します。はい、宜しくお願いします」
携帯を切ると、
《チョロいもんね。さて、着替えて出掛けましょうか》