最終対決!3
「で、どうしたんだ?」
「実は、リオンさんを退団させて欲しいんです」
私が言うと、ルーカス王子は驚いて目を少し見開いていたが、少しすると我に返ったのか何を考えているんだ?と言ってきた。
「リオンさんを向こうに潜入させて、ミリア様がどんな状態なのかを知りたいのと、ロランにパレードのことがバレていて、私達に何も情報がないのが悔しいので」
「確かに情報がないのは痛いが、悔しいからって…。子供みたいに…」
「だって、卑怯でしょう?」
「その概念はロランにはないだろう…。で、なんでリオンなんだ?ルディやジミーもいるのに」
ルーカス王子の疑問はもっともだ。しかし、これはリオンさんが一番適任の気がするのだ。
「リオンさんの家は、この国でも1位、2位を争うほどの名門の家だとか」
「そうだ、代々優秀な騎士を輩出している。歴代の騎士団長は、ほとんどリオンの家の者達だしな」
「それは、王家にとても忠誠心がある。ということですよね?そんな家の騎士が、ルーカス王子を裏切りロランに着いていくといえば、多少は疑うでしょう。でも、その忠誠心が本物だと分かれば王家を目の敵にしてるロランなら、捨て駒でも使えると思うでしょ?実際、リオンさんは騎士団でも強さは有名ですし」
「まぁ、確かに…。使わない手はないな」
「だから、潜入してもらおうかと…。どうですか?」
難しい顔をして考え込んだルーカス王子は、考え込んだ後、部屋にリオンさんを呼んだ。
そして、しばらくして部屋に来たリオンさんに私が話したことを話した。
「で、潜入をしてミリア嬢の状態を確かめて欲しい。無理にとは言わない、潜入する以上は常に危険な状況になる。リオンの判断に任せる」
リオンさんは、ルーカス王子が話し出した最初の方は驚いたような表情だったが、途中からはもう迷いは無くなっていたようだ。
「俺は行きます」
「いいのか?」
「俺は、小さな頃から王家には忠義を尽くせ、決して裏切るなと言われて育ちました。もし、この件を断れば俺は父から縁を切られるでしょう」
「確かに、あの人ならやりかねないな…」
「知り合いなの?」
「俺達に剣を教えてくれたのは、リオンの父親だからな」
「なるほど…」
リオンさんのお父さんのことで何か思い出したのか、ルーカス王子の顔色が若干悪くなった。
「それ以外にも理由があるだろう?リオン」
「はい、俺は…。これは、俺の勝手な願いですがルーカス王子とアオ様、お二人が治めるこの国を見てみたいのです」
リオンさんの言葉に、ルーカス王子も私も驚きを隠せず、言葉が出てこない。
「最近のお二人は、とても仲が良く色々なことをお二人で話し合い、まるで本物の婚約者同士のようです。俺はそんなお二人を見ていて思ったんです。あぁ、この方達に心から尽くしていきたいと」
「……リオンがそんな風に思っていたとは、知らなかったぞ」
「びっくりしました…」
「すみません、俺はあまり話をするのは得意ではないですが、今回、お二人と俺だけなので話しやすくて、つい長話をしてしまいました」
「いや、いい。では、潜入の件は任せた。潜入先は、今ナタリーヌ姫と、マリアーヌ女王陛下が調べて下さっている。潜入は、場所が特定されたらすぐになる、準備をして部屋で待て」
「はっ、では失礼します」
リオンさんが、準備をするために部屋を出ていくと、どちらからともなく溜め息を吐く。
「びっくりしましたね、まさかあんなこと思ってるとは…」
「驚き過ぎて、敬語になってるぞ。まぁ、驚いたのは確かだな…。まさか、リオン以外にもそう思ってる奴らはいるかもな」
「あ、ごめん。それはあり得るね」
その言葉の後には、なんとも言えない空気がこの部屋を包んだ。
しばらく、二人して無言だったが私がまだ言ってないことを思い出し、口を開いた。
「あ、リオンさんを送り出す前にリオンさんに細工しなきゃ」
「リオンに細工?」
「そう、今のままだとロランの方に行っても忠誠心は、ルーカス王子にあるからすぐにバレちゃうから、ロランにはリオンさんが王家にとても強い憎しみを抱いていると思わせないといけないから、リオンさんの表面に術をかけてそう見えるようにするよ」
「あ、そうだな。じゃなきゃすぐに消されるな」
ルーカス王子も納得したみたいだ。しかし、すぐにまた難しい顔になった。
「連絡手段はどうする?」
「表面に私が術をかけるので、リオンさんが自分の体に文字を書けば、私に伝わる仕組みにしようかと」
「だが、体に文字が書かれていれば不審に思うんじゃないか?」
「別にペンとかで書かなくても、指で文字を書くだけで大丈夫です」
「便利だな」
「でしょ?」
こうして、リオンさんが潜入してロランの内情を探ることになった。