最終対決!
その日、ジョイール王国では国王の誕生日を祝うパレードが行われていた。
「国王様ー!おめでとうございます!」
「おめでとうございます!」
町には、この日のために町の人が育てた花の花びらが舞い、町は喜びに包まれている。
その中を走る馬車には、国王と王妃が乗っており、中から国民に手を振っている。馬車を囲むようにしているのは、この国の第一王子であり騎士団にも所属しているルーカス王子。そして、それを筆頭とした騎士団の精鋭達だ。
パレードは順調に進み、最後の城までの直線の道になった時だった。
「なんだ、あれは?」
「人、じゃないか?」
馬車の進む先に、フードを被っている人物が現れた。
その人物が、右手を挙げる。
すると、辺りに黒いモヤが出てきてあっという間に、明るかった晴天の空を闇色に染めてしまった。
人々は、ざわめき始める。
「国王よ、ここで積年の恨み晴らさせてもらうぞ!」
フードの人物がそう言った瞬間、黒いモヤが国王が乗る馬車に向かって、攻撃を始める。
「馬車を守れ!」
「はっ!」
ルーカス王子の声に、他の騎士が応える。
そんなルーカス王子の元に、剣を抜き走っていく人物がいた。
「あなたの相手は、俺です!」
「くっ!リオンか!」
その人物はかつて、この国の騎士団に所属しルーカス王子の護衛も務めていた者だった。
ルーカス王子とリオンが戦っている間も、馬車への攻撃は続いており、次々に増え攻撃をしてくる黒いモヤを騎士達は捌ききれず、馬車にも攻撃が当たっている。
「くそ!どけ、リオン!」
「計画の邪魔はさせません!」
国民達は、逃げ惑っている。
黒いモヤは、逃げる国民を追い捕まえると体に巻き付いた。巻き付かれた国民は、まるで魂を吸われたかのように、その場に倒れていく。
そうこうしている内に、馬車を守る騎士は次々に黒いモヤの餌食になり、とうとう馬車を守る騎士が居なくなった。
そして、無数の黒いモヤが馬車へ向かっていき馬車は、串刺し状態になりその中からは国王の血か…。
「父上ーーー!」
ルーカス王子の叫びがあたりに響き渡った時、フードの人物は静かに笑い始めた。
「ッハハハハ!やったぞ、ついに国王を殺ってやった!これで準備は整った…。さぁ、おいでミリア」
少し離れた建物の陰から、美しい少女が出てくる。
「さぁ、後は私に身を委ねるんだ」
フードの人物がそう言うと、ミリアと呼ばれたその少女は静かに目を閉じた。
フードの人物の手には、綺麗な飾り細工が施された短刀が握られている。
「やっと、やっとだ!これで我が一族の悲願が果たされる!」
そう言って、フードの人物が短刀を振りかぶった時だった。
「残念だけど、それは無理ですよ」
「なんだと?っうわ!」
女の声が聞こえたあと、辺りは光に包まれた。