離宮3
さてと、とりあえず国王陛下の魂を呼ばないとね…。
「“call”」
さてさて、どこにいるかな~?ん?あ、やっぱり近くにいるね。
「国王陛下は、この離宮の近くに来ていたみたいですね」
(え?)
「国王陛下をこちらに呼び寄せます」
普通、魂は死ぬと天に還されるんだけど国王陛下は、この女性が気になってこの地に残ってしまったのかもしれない。それぐらい、国王にとっても大切な人だったのだろう。
「“この地に留まる魂よ、私の声に応えて”」
すると、私と女性の間を風が通りぬけた。
そこには、体格のいい男の人が立っていた。
(国王陛下……)
(シャーロット?なぜ俺は…)
(そちらの、月の姫が貴方をこちらに呼んでくれたのです)
すると、男の人は私の方を振り向いた。
(!?月の、女神様)
「はい」
(ありがとうございます。本来ならば、私がきちんとしなければならなかったはずなのに…)
「いいえ、仕方ないことです。私は二人がちゃんと会えるように、お手伝いしただけのこと。あとはお二人で」
(ありがとう、月の姫様)
(ありがとうございます)
私は二人が話をしやすいように、シールドで守っている三人のところへ行った。
「“ショール解除”」
「おい!なんだその傷」
「これぐらい大丈夫ですよ。それより、皆さんが霊を見れるようにします。“view”」
「あ、あれは」
「あの男の人は、何代か前の国王だな。お前が呼んだのか?」
「そうですよ。さ、ここからは二人の行方を見守りましょう」
私は三人から、国王とシャーロットさんに視線を移した。
(陛下……どうして、来てくださらなかったのですか?ずっと、待っていましたのに…)
(すまなかった…。すぐにでも来たかったのだ、だが、王妃や宰相達から妨害されてしまってな…。そんな時、流行り病を患ってしまって動けなくなってな)
(それで、亡くなったのですか?)
(あぁ、本当にすまなかった。この離宮へシャーロットが来ることになったのも、俺のせいだ…俺の力が足りなかったばっかりに、君には辛い思いをさせた)
(陛下…いいのです、もう過ぎたことです。それに時間はかかりましたが、本当のことを陛下ご自身から聞くことが出来て、とても嬉しいのです。そしてまた、こうして陛下と会えたことも…)
(シャーロット…私も同じだ。月の姫には、感謝してもしきれないな)
(本当に…さぁ月の姫様こちらへ、そこの三人も)
シャーロットさんから呼ばれ、私達は二人の元へ向かった。
「お話は終わったんですか?」
(はい、本当にありがとうございました。月の姫様)
「いいえ」
(これで、やっと安らかに眠れます。そちらの者達は付き人ですか?)
「俺達は、この国の今の王子に仕えている者です」
(そうか…これからもこの国を頼む)
二人は柔らかな光に包まれていく。
(月の姫様、このご恩はいつか必ずお返しします。そして、この離宮も本来の姿へ戻します。どうか、大切にしてください)
「はい、分かりました」
すると二人は身を寄せあって、光の中に消えていく。すると、私達の周りも目が開けられないほどの光を放ち、堪えきれず私達も目をつぶった。
しばらくして、少しずつ目を慣らしていき周りを見ると、さっきのホコリだらけだった部屋から一変、綺麗な部屋へと様変わりしていた。
「どういうことだ…」
「あんだけ汚かったのに」
「それは、風の精霊が眠っていたからでしょう」
「眠っていた?それはどうして」
「主である風使い、つまり、あの女性がちゃんと天に還されてなかったからです。精霊は、魂と契約をします。その魂が天に還されない限り、その精霊も次の主の元へは行けませんから」
「そう、なのか…」
「さて、外にいるリーンさん達を迎えに行きましょうか」
私達がリーンさん達が待っているであろう、門のところへ向かっている最中、ビシバシ視線を感じていたけど、それを思いっきり無視して歩みを進めた。