さらに事件発生!2
ナタリーについて歩いていくと、外の庭園の奥にある扉の前まで来た。
「この奥に続いてるんですけど…」
「ここは、母上の庭園だな。入っても大丈夫だが、普段は今みたいに鍵が掛かっているんだ」
ルーカス王子が、扉に掛かっている南京錠を持ちながら言った。
じゃあ、普段はほとんど人がいないわけだ…。
「でもなんで王妃様が?」
「母上は、名門の家の出身だが父上と婚約中の時から、ガーデニングが趣味だったらしい。だから父上が結婚後、母上専用の庭園を用意したんだ」
「そうなんですね。じゃあ、出入りするのは王妃?」
「母上や、母上が直接世話を頼んだ者達だな。母上はこの庭園を大切にしてらっしゃるから、母上が世話を出来ないときのことは、母上が信頼している者達に任せている」
王妃様以外も出入りは可能か…。でも王妃様に信頼されていないといけないわけだから、内通者がいるなら長年勤めてたんだよね~。
「とりあえず、入ってみましょうか。少しお待ち下さい、鍵を借りてきます」
ルディさんがそう言って、さっと鍵を借りてきて私達は中へ入った。
庭園は、本当に王妃様がガーデニングが好きなんだと思うぐらい、素人目に見ても素晴らしい庭園だった。
この国原産の物はもちろん、他の国の珍しい花もあった。
「凄い!綺麗な花がいっぱい!みんなイキイキしてるね、アオ」
「そうだね、本当に王妃様は好きなんだね。それぞれ花に合わせて土とかを、違うものにしてるみたい」
それのおかげか、花がキラキラ光ってるようにも見える。
ナタリーは、ここが気に入ったのかあちこち歩き回っている。
「ナタリー、そろそろ大丈夫?」
「うん、大丈夫だよ。ごめんね、あんまりにも綺麗だったから」
「じゃ、よろしくね」
「分かった!」
「何をするんだ?」
これまで私達の様子を見ていたルーカス王子が言った。
「ここにいる精霊達に話を聞きます」
「だが、気配はしないぞ?」
ルーカス王子達は、力を解放したからか精霊達が見えるようになっていて、ここに来るまでも何回か見つけている。
「たぶん、ここで何かあって姿を隠してるみたいです。微かにですけど、気配はしますからね」
「僕達は、まだまだってことだね」
「まぁ、まだ解放したばっかりですしね。さ、話を聞きましょう」
そう言って、ナタリーを見るとすでに集中している。
「さぁ、皆出てきて話を聞かせてね」
ナタリーが言うと、辺りから小さな光がぽつぽつ出てきた。よく見ると、精霊達のようだった。
“あの人達いなくなったんだ”
“みたいだね”
私やルーカス王子達がいる近くの精霊が言った。
「あの人達って誰のこと?」
“あ!月の姫様だ!精霊王様から、話を聞かれたら協力してあげるようにって言われてるよ!”
「それなら良かった、ここに普段来ないような人が来たの?」
“そうそう!女の人と、フードを被った男の子!”
「男の子?そんなに若い人が来たの?」
“たぶん、騎士になりたてみたいな感じじゃない?”
“普通なら、歓迎するんだけど…。その男の子、怖い感じだったから皆出ていけなかったんだよ”
普通なら歓迎する?
まさか、ね…。
「アオ?どうした?」
「そのフードを被ったやつは、緑色の瞳だったか?」
“あれ?君達も僕らが見えるんだね、そうだよ。普通なら、大好きなんだけどね…。”
「そうか…」
「ルディさん」
「信じたくはないですが、行かなければ行けませんね」
「あいつのとこだね」
ジミーくんに頷いて見せた。ルーカス王子とナタリー以外は、分かっているようだ。
「なんだ?」
「どこに行くの?アオ」
私も信じたくはないし、嘘であってほしいけど精霊達は、絶対に嘘を言わない。
だからこそ、ちゃんと確かめないと…。
「今の時間なら、訓練をしているはずです」
「行きましょう、騎士団の訓練場に」