私とナタリーのこと
「疲れたー!」
「もともと、自分の中にあるものを引き出されるのは、なんだか変な感じだな」
ジミーとリオンがそんなやり取りをしている時、ルーカス王子とルディさんは本当に力が使えるのかどうか、まだ疑問に思っているようだった。
「力を使うのは、また明日にしましょう。普通は、半日かかるようなものを二時間でやってるんですから、負担は凄いはずですよ」
「そうだな、今日は仕事も終わってるし。この後はゆっくりさせてもらおう」
「リーンさんに、軽い食事を頼んだので食べていって下さい」
「ありがとうございます、アオ様」
すると、リーンさんが他の侍女さんにも手伝ってもらいながら、食事を持ってきてくれた。
私が軽くって言ったから、そこまで量を頼んでないのにと不思議に思っていると、リーンさんが私に近付いてきた。
「リーンさん、なんか量が多くないですか?」
「アオ様、相手はまだまだ育ち盛りの男性なんです。これだけでも少ないはずですよ」
「なるほど…」
さすがリーンさん…。
最初はリーンさんの言葉に半信半疑だった私の考えは、ルーカス王子達の食事の風景を見てそれが本当だと信じた。
「まだ足りないな…」
「この後、昼食だろそれまで待て」
あの量でまだ足りないんだ!
今まで男性というと、お父さんぐらいで日本にいた頃は高校も行ったけど、実際に見るのは初めてだな。高校の時は、友達と中庭とかで食べててずっとお弁当だったしね。
育ち盛りの息子がいる家庭の、お母さん達は大変だって言うけどこれをみたら確かに、て思うよね。
「明日からは、力の使い方を教えてくれるんだよな」
ルーカス王子が、お茶を飲みながら聞いてきた。
「そうですね。力の種類で使い方が異なるので、別々に教えていきますね」
「分かった。それにしても、マリアーヌ様は隙がないな」
「そうですね、長年女王としてシュトラント王国を治めていて、他国の王とも渡り合っているんですからね」
「確か、今のお前と同じぐらいの時に女王に即位したんだったか?」
「そうですよ」
「改めて思ったが、アオの家族は本当に凄いな」
たぶん、ルイージュおば様のことも含まれるんだろうな。
「アオ、明日からのことだけど、私とアオで二人ずつ見た方がいいと思わない?」
「そうだね…。じゃ、私がルーカス王子とルディさんだね」
「じゃ、私はリオンさんとジミーさんね!」
「担当が決まってるんですか?」
ルディさんの質問に、ナタリーが応えた。
「私とアオは、得意としてる力が違うんです。水や風、光ならアオが得意。土や緑は私が得意なんです」
「それは、太陽の姫、月の姫と関係があるのか?」
「んー。それは特にはないと思いますけど、緑に関してはアオは本当に苦手ですよ」
「変な形になるんだよね。あと、成長のスピードが遅かったり」
「逆に私は、風を上手く操れなかったりね」
「そうだね。ま、それを補いあいつつ頑張ってるよね」
だいたい私が依頼を受けていたけど、たまに私一人じゃ手に負えない時は、ナタリーにも手伝って貰ってた。
本当に私とナタリーの関係は、二人で一人と言ってもいいぐらいの関係だ。
「噂は噂でしかなかったんだね」
私とナタリー、ルーカス王子とルディさんの四人で話をしていると、ジミーくんとリオンさんもやって来た。
「噂?」
「なんか、私とナタリーが不仲だって噂があったみたいだよ」
「なにそれ!なんでそんなことに?」
「そもそも、お母さん達同士が仲悪いって思われてたらしいよ?」
「それはないよね。この間も、アオが危険なことしてるって聞いて、お母様達二人がお父様にアオを連れ戻してって抗議してて、お父様がオロオロしてたのに」
「所詮は噂だからね」
私とナタリーのやり取りを見て、ルーカス王子達は驚いているみたいだった。
「もう少し話聞きたい!」
「それじゃ、昼食もここで用意してもらいましょうか?」
「そうしてくれるか?」
「分かりました。リーンさん、よろしくお願いします」
「かしこまりました。少しお待ち下さいね」
リーンさんが出ていったあと、話はまたスクリプト王国のことに戻った。