昔の話
「皆さん、太陽の女神と月の女神の話はもうしってますよね?」
「あぁ」
「それには続きがあるのは、さっきも言いましたね」
「その続きってなんなの?」
私は、太陽の女神と月の女神の話の続きを、話し出す。
“太陽の女神と月の女神は、国王とその弟と結婚して幸せに暮らしていました。
しかし、この国のある貴族が…。
「本当に強いのは太陽の女神だな」
と言ったことで、崩れてしまう。
この発言から、本当に強いのは太陽の女神という貴族と、月の女神だと言う貴族に分かれていき、この件はだんだん大きくなっていった。
すると、太陽の女神と月の女神を暗殺しようとする動きも出てきていた。
それに心を痛めた太陽の女神と月の女神は、それぞれ国民に訴えかけた。
“そんなことで争ってはいけない”と“太陽の女神と月の女神は、二人そろってこそ本来の力が発揮され強いのだと。”
しかし、国民や貴族の心はその訴えでは動かすことが出来ず、ついに事件が起きる…。
月の女神の夫で、国王の弟に毒が盛られそのまま亡くなってしまったのだ。
夫を殺された月の女神は、怒りを抑えきれなくなり、国に天変地異を引き起こした。
海はあれて、漁が出来なくなり地震が何度も起きて天気があれ、国民や貴族は混乱に陥った。
“愛する者を殺した者がいる国など、必要ない”
月の女神は、そう言って国を次々に壊滅に追い込んでいった。
太陽の女神は、どうにかして月の女神の暴走を止めようとしたが、我を忘れている月の女神を止めるのはかなりの力を用した。
太陽の女神がやっとのことで、月の女神の暴走を止めた時には、もうすでに月の女神は力尽きる寸前だった。
その時に、太陽の女神と月の女神は約束を交わした。
“もし、今後…。私の力を継ぐ姫が出た時のために、貴女が私の力を制御出来るようにしましょう。”
“そうね…。私の力を継ぐ姫に、こんな大変なことを私もさせたくはないわ”
“じゃあ、約束よ…。私の力の半分は、太陽の姫に預けるわ”
こんな約束を交わしたあと、月の女神は静かに目を閉じて、光になって天に還っていった。
その後、月の姫の力の半分が太陽の姫に渡るようになり、その半分の力を解放する方法は、代々の太陽の姫にしか伝えられないようになった。”
「だから、あの力はアオの本気の力ではない、ということか?」
「そういうことです。アオが本気を出せば、全ての国を滅ぼすことが出来る。だから、アオは命を狙われ易かったんです」
「……だから、異世界へ」
「小さな頃から大変だったんです。初めてアオがこっちに来て、私や私の母そしてお父様に会った時にはすでに、そのアオの食事には毒が盛ってありました。五歳の時です」
五歳の時、お父様に同じ年の姉妹がいると言われ紹介されたのがアオだった。
アオは、なんだか落ち着いた雰囲気でそれまで私の周りにいたどの子よりも、大人っぽかったのを覚えている。
アオとその母親である、涼華お母様の紹介を終えて、食事をすることになり皆が席に着いて料理が運び込まれ、それぞれの前に置かれたときアオが言った…。
“これ、毒が入ってますよ”
その言葉を聞いた瞬間、お父様がアオの前に置かれた料理を調べるように言って、結果本当に毒が入っていることが分かって、お父様は物凄く怒っていたのを今でも覚えている。
でも、その後ある貴族が侍女を脅して毒を盛ったことが分かり、それで事件は終わった。
アオは、終始冷静な態度を崩さなかったけどそのあと、私が恐くないの?と聞くと。
“凄く恐いよ…。でもね、たぶん毒を盛ったあの侍女さんの方が恐かったんじゃないかな?だからね、私は落ち着かないといけないの”
小さな頃から、とっても優しい子だったから。
「そんな過去が…」
「だから、アオを絶対に護りたいんです。まだまだ、アオには幸せになってほしいから」
「それは、俺達も同じ気持ちだ。絶対にアオを死なせはしない」
ルーカス王子達は、力強い眼差しを私に向けてくれた。
アオが会ったのが、この人達でよかった。
私は、この人達とアオならなんとかなるんじゃないかと、私は確かに思った。