心強い味方3
途中で視点が変わります。
「アオが何者かによって、殺されるところです」
ナタリーが言って私を見ると、部屋にいた全員の視線が私に向けられる。
やっぱり、私に関することだったのか…。
ナタリーがあんな風に取り乱すのは、だいたい家族や知り合いに関わるものだけだ。ま、今回は本当に最悪な未来を見たわけだけど…。
「アオ」
私は、手を挙げてナタリーを制した。
「ナタリー、気持ちは嬉しいけど…。危ないのは最初から分かってたことだよ?それより、もっと詳しくその場所とか、どんなシチュエーションだったとか分かる?」
「アオ…。ごめんね、今はただ誰かに殺されるとしか分からない。だから、まだ先の未来だと思う。もっと力を溜めてから、またやってみる」
私はナタリーに近づいて、まだ震えてる両手を包むように持ち上げ、おでこを合わせながら言った。
「大丈夫だよ、ナタリー。ナタリーが来てくれて本当に嬉しかったし、心強い。だから、力を貸してね」
「もちろんよ、アオ。私達は表裏一体…。どちらがかけてもダメだから」
「俺達もいるぞ」
なんだか不機嫌な声が、私とナタリーだけの世界に入ってきた。
「ルーカス王子…。今は、ナタリーとの素敵な時間だったんですよ。それを壊さないで下さい」
「な!なんだと!心配してやったのに!」
顔を少し赤くして、プリプリ怒ってるルーカス王子を見て、私とナタリーは、一瞬目を見合わせてから笑った。
「とりあえず、私はお父さんに報告してくるよ」
「お父様に、よろしくね」
「分かった。じゃ、先に失礼しますねルーカス王子」
「あぁ」
私は、部屋から出て小さく震える両手を握り締めて、自分の部屋へと歩みを進め始めた。
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アオが出ていき、ルーカス王子とルディさんが今後の話を始めた。
きっと、アオはまた一人で不安な気持ちも、恐怖も抱え込みながら、依頼をこのまま進めてしまうのだろう。
私は、何も出来ない…。
と、私が考えていると。
「全く、またアオは一人でなんとかしようとしてるな」
「そうみたいですね…。いかがしますか?」
「とりあえず、何か行動を起こすのなら一言俺に言ってからにしろと伝えてくれ、あと、今日は離宮で一緒に食事をする。あの調子だと、軽いもので済ませてしまうだろ」
「分かりました、伝えます」
あぁ…。もうアオは一人じゃないんだ。
私が取り乱して、離宮まで支えられている時、微かに意識があった私はそう思ったんだ。
アオは、なんでも一人でできるから小さな頃からあまり、人に頼み事をしたり指示を出したりしなかった。自分でやった方が早いと思ってしまうから、実際、今回の事でも私を転移で離宮に移って妖精にでも、伝言をさせる方が早かった。でも今回は、ルディさん達に指示を出していた。
それぐらい、この人達をアオは信頼しているのだろう。
私が得られなかった信頼を、この人達は短い間に得られたのは、正直悔しいな…。
ま、アオがそれだけ信頼をしているのなら、話してもいいと私は思った。
「皆さん」
私が声をかけると、それまで色々話していたのを止めて、私を見た。
「少しお話をいいですか?」
「話、というのは…」
「あぁ、アオが殺されることじゃなくて。太陽の姫と月の姫の話です」
「?それはもう、アオ様からもカーランド侯爵からも聞いたぞ」
「いいえ、まだルーカス王子達が知らないことです。アオも、たぶん知らないこと…」
「アオ様も?」
皆さん、頭にはてなが浮かんでるみたいですね。
「無理もありません。これは、太陽の姫にしか伝えられないことですから」
「太陽の姫だけに…」
そう、太陽の女神と月の女神の話には続きがある。
それは、月の女神がどれ程強かったのかということと、太陽の女神の本当の役割がはっきり分かる出来事だ。
「さぁ、昔話をしましょうか」
私がにこやかにそう言うと、ルーカス王子達は顔を見合わせて、また私に視線を戻した。