離宮
「うわー…。凄いですね…」
私は、ルディさん達とカイルくん達、そしてリーンさんと一緒にその離宮へ来たのだが…。
「幽霊屋敷…」
「アオ様、これから住むんですから」
「でも、これは…」
「ここは、今の国王より遥かに前の国王の側室が住んでいらっしゃった離宮です。ですが、その方は……ここで自害したそうです」
あぁ……だからか。
「アオ様が言った幽霊屋敷っていうのも、あながち間違ってはいないね」
そう言ったのは、ジミーくん。
ルディさん達は、私がこれで怖がるとでも思ったのだろうか?
なら、それは大きな間違い。
月の女神には、そんなことなんでもないのに。
「その方が、どこで亡くなったかは分かりますか?」
「……確か、自室だったと思いますが…。何をするつもりですか?」
ルディさんが聞いてきた。
他の人達も、不思議そうに私を見ている。
「私は、月の姫です。私が支配するのは夜、死者の魂を鎮めるのもまた、私の勤め」
「勤め…」
「その部屋って、三階の左端の部屋ですか?」
私がルディさんに問えば、ルディさん達は驚いた顔をしていた。
「そう、ですが…」
「じゃあ、行ってきますね」
私は、その部屋へ向かって歩き始める。
この離宮は、屋敷の前に花壇があってそれは中央に噴水があって、それを囲むような感じで花壇がある。
右手には、屋敷とは別の小さな小屋のようなものがあって、左手には小さな池ととても大きな木がある。
当時は、美しい花が色とりどり咲き乱れてとても綺麗だったんだろう。
ま、原因も分かってるからいいんだけど。
屋敷の扉の前に着く、屋敷はたぶん元々は真っ白だったのだろう。今は蔦が伸びて屋敷を覆っていて分からないが…。
私が扉を開けようとすると…。
「待って下さい、アオ様」
「あれ、着いてきたんですか?」
振り向くと、ルディさん、リオンさん、ジミーさんがいた。
「姫様に、怪我されちゃあ国王様達から後でなに言われるか、分からないしね」
「んー…。でも、厄介そうなんですよね…だいぶ時間も年数も経ってるみたいなので…」
「そんなことも分かるの?」
ジミーさんが聞いてきた。
「死者の魂は、ちゃんと鎮めないと亡くなった時からの怨みが、濃くなってその人をそこに留めてしまうんですよ」
「そうなんですか…」
あら?いつもの嫌みとか、皮肉とか言ってくるのに。
「私には、小さな時からそういった類いのものがみえるんです。実際、依頼を受けて何回かこういった感じの事件も扱ったりしましたから」
「依頼を?」
「その話はまた、今度にしましょう。さ、行きましょ」
私達は、その部屋へ向かう。
屋敷の中は、絵画が飾ってあるがどれも埃をかぶっていたり、床に敷いている絨毯やカーテンは所々破れていたりして、さらに幽霊屋敷みたいだ。
「うわー…これは、キツいな…」
「どうかしましたか?」
悪い空気が濃くなってきた。
「なんでもないです。少し空気が悪いだけですから」
「それならいいですが」
お、心配してくれてるのかな?
「俺達が付いてて何かあったら、後が面倒だしね」
ですよねー。そこは振れないんだな。
そして、その部屋の前へ着いた。