準備開始!2
その日の夜遅く。ルーカス王子は、本当に離宮にやってきた。
「こんな夜遅くにしか、時間を取れなくてすまない」
「いいえ、ルーカス王子も忙しいのは分かりますから。リーンさんに、軽い食事を用意してもらったんです。話は食べながらにしましょ」
私はルーカス王子に部屋の中に入ってもらい、椅子を勧めた。
テーブルには、サンドイッチやフルーツ、スープも用意されている。
「すまないな、この前の毒の件を父上も知ってるから警備をしっかりしてないといけなくてな」
「でも、知ってるのは私とルーカス王子、ルディさん達にリーンさんで国王様ですよね?やっぱり、国王様もそうとう警戒してるみたいですね」
「あぁ、だから尚更時間をかけて配置を決めている」
国王様、結構小心者っぽかったしね。まぁ、警戒するに越したことはないけど…。
と考えていると、ルーカス王子がスープを一口飲んで、私に質問してきた。
「何か用があったんじゃないのか?」
「あ、その…力を溜めたくて、どこか集中できそうな場所はありませんか?」
「……確か、この離宮の西の方に塔があったはずだ」
「明日にでも行ってきます。ありがとうございます」
「いや…。パレードの時だが、ルディ達は俺から離れられないから、カイル達を付けることにした」
ま、そうなるか…。
私はまだ、ルーカス王子と正式に婚約してはいないから、パレードの時はお城で待機しとかないといけない。その後のパーティーには参加するんだけどね。
ま、大人しく部屋に居るは居るけど、術でパレードの様子は見るよ。
「分かりました」
「エリクシア家が復活するのがいつ頃か、予測することは出来るか?」
「結構力を使うんで、もう少し力を溜めてからじゃないと出来ませんけど…。今、ミリーとレミーにも探ってもらってて」
「そうか…。なら、ある程度溜まったら教えてくれ予測をしてもらいたい」
「分かりました、リーンさんに伝えに行ってもらいますね」
「いや、その…」
ん?なんだろ、また急にソワソワし出したな。
「できれば、手紙がいいんだが…」
手紙?あ、そういえば今日も手紙をくれたな。
「ルーカス王子、昼間は手紙をありがとうございました」
「いや、こっちこそ…」
「……」
「……」
この沈黙は辛いな…。なんかよく分からないけど…。
「あ、そうだ!シュトラント王国の女王だが、三日後ぐらいにはもうこちらに着くらしい」
「そうなんですね、さすがおばあちゃん」
私の手紙が届いてからすぐに、こっちに来る準備をしてくれたんだろうなぁ。
側近の方、シュトラント王国のお城に住む方々本当にありがとうございます!
「何してるんだ?急に祈りだして」
「え?」
ルーカス王子の声を聞いて、自分の態勢を見てみると、椅子から降りて床に両膝をついて、手を組んで教会で祈るような姿勢になっていた。
「あ、いやなんとなく?あはは…」
「はぁ~…。そうか、じゃ他に何かあるか?」
「いえ、もう大丈夫です」
「そうか、なら俺はもう部屋に戻る」
「もう夜も遅いですし、離宮でお休みになられたらいいんじゃないですか?用意させますよ?」
「あ~、じゃあ頼めるか?」
「はい、ルーカス王子はもう少し食べて下さいね。なんだか、少し痩せたみたいですよ」
ルーカス王子は、そうか?と言いながら自分のお腹や顔を触ったり、摘まんだりしていた。
その間に、私はリーンさんを呼びルーカス王子を離宮の客間に案内するように言った。
「さ、もうお休みになってください。明日も早いんですよね?」
「すまないな、ありがとう」
そう言って、リーンさんと一緒に部屋を出ていった。
さて、私も明日に備えて寝ますかね。