一歩前進?2
食事をしたあと、ルーカス王子達に説明することにした。今回は、リーンさんにも同席してもらう。
「えっと…。じゃあまずは、どうしてリーンさんに妖精が見えるようになったか、だね」
「はい…。どうして私は妖精が見えるようになったんですか?」
「その前に少しだけ、質問してもいいですか?」
「はい」
「リーンさんは何歳から城で働いてるんですか?」
「私は、貴族とは名ばかりの貧乏な家だったので、地元の領主様のところで8歳から働き始め、領主様の奥様の紹介で、お城に働きに行きました。それが、12歳の時です」
8歳で領主様のところで、働いて12歳でお城に…。
「じゃあ、ルーカス王子この国に妖精が見える人がどのぐらいいるか分かりますか?」
「この国全体は分からないが、俺が知る限りではお祖父様ぐらいだ」
「僕も見える人間にあったのは、アオ様ぐらいかな?この国では、あんまりいないんじゃないかな?」
リオンさんもジミーくんが言ったことに頷いていた。
この国では妖精が見える人間が全くいないんだ…。じゃあ、月の姫のことも分からないよね…。
「たぶんですけど、リーンさんは“見えなかった”んじゃなくて、“見えるんだけど、妖精達が今までいなかった”から、見えないと思い込んでいたんです」
「どういうことですか?」
「この国に妖精が見える人間が全くいなくなったことで、妖精達もあまりこの国に来なくなったんだと思います。それで、妖精が少なくなっていたことで見える人も、見えないと思ってしまうんです」
「でも、妖精がいなくなったとはどういうことだ?」
「妖精達は、人間が大好きな子達が多いんですけど、人間が住む世界の物にも凄く興味を持つんですけど、妖精はそれを人間に聞いてくるんです。でも、その妖精達の声が聞こえる人間がいなくなったことで、妖精達がこの国に興味がなくなってしまったんだと…」
「なるほど…」
「今回、あの髪飾りが反応したのは妖精が見える人間にだけですしね」
「私と同じような方がいるんですね…」
「そうですね」
でも、なんだろう…。別に、妖精が付いていなくても容姿がそれなりに良ければ、人間だけでも売れるのに…。
もしかして…。
「妖精の売買が本来の目的?…」
「なんだと!」
「妖精の売買は、契約者にかなりの負担があり、悪くて死に至るはずです…」
「だからこそ、人間ごと売買していたんですよ。あの髪飾りに、何かしらの仕掛けがあって」
でも、そんなに妖精を集めて何を…。
「まさか…」
「どうした?」
「“book”」
その声で、机の上に一冊の本が出てきた。
私は、その本の上に手を添えて…。
「“妖精、女性、古の一族”」
私が言って、手を本から離すと本が独りでに捲れ始めた。やがて、あるページで止まった。
「やられた!」
「なんだ、何が分かったんだ?」
「あの髪飾りに使われてた宝石を使ってた一族が、復活します」
「!!」
どうして気づかなかったの…。
妖精を集めるのは、妖精達が持つ力が必要だったから、女性を集めたのは復活した一族への生け贄だ。
「犯人達は、その一族の女性を生き返らせてその人に、魔力の高い子供を産ませる気です」
「人を、生き返らせることが出来るのか?」
「妖精達が持つ力の中に、“祝福”という力があります。それは、授けた女性を必ず妊娠させる力です。ですが、これは妖精達の中でも禁忌とされている力です…」
「なら、出来ないのでは?」
その時…。
「それができるのだよ、“闇の力”を使えばね」
「誰だ‼」
誰もいない場所に、黒いモヤが出てきてそれはやがて人形を作った。
「本当に、こちらの動きを高みの見物とは悪趣味ね」
「ふふふ、せっかく集めた妖精達を取られたからね、せめてこれぐらいはさせてもらうよ」
「本当に最低ね…」
「誉め言葉として受け取っておこう」
「で?なんの用かしら?」
「今回の月の姫は、月の女神と変わらぬほど優秀なようだ。が、やはり月だけでは限界があるな」
月の姫の秘密もお見通しってことね…。
「よくご存知で」
「今回、姿を見せたのは今回の月の姫が月の女神と遜色ないほどの力を持っていたから、あとは…。事件のことも、こんなに早く我々の目的を当てられるとは思ってなかったからね。さて、これからは月の姫だけでは手に負えなくなると、忠告しておこうと思ってね。それだけだ」
「そう忠告ありがとう」
「それでは、今後の行動も期待しているよ」
そう言って、人形はまた黒いモヤになり消えた。
あっちには、私の弱点が知られていたってわけね。それで、私がどれだけ出来るか試された…。
私が一人、色々考えているとルーカス王子が声をかけてきた。
「さっき、あいつが言ってたことはどういう意味だ…」
隠してもしょうがないか…。
「私達、太陽の姫と月の姫はお互い一緒にいないと力が半減してしまうんです。それが、私達の最大の弱点」