聞き込み開始!5
「よっ!」
「っ!」
「しっ!静かに、大きな声出すと気付かれるかもしれないから」
私が着地したのは、さっき見ていた部屋だった。
実際に部屋に来ると、中は血の匂いが充満していて掃除もしていないのか、埃っぽい。
「お姉ちゃん、どうしてここに来たの?」
「あなた達を助けに来たの。とりあえず、時間がないから…。ここで一番状態が悪い子がどこにいるか分かる?」
「うん!」
さっきまで男に怒られてた子に、案内をしてもらって次々に妖精達を、城に転移させていく。
「お姉ちゃん、凄いね!」
「ふふ、ありがとう。さ、あなたも…」
カチャ
鍵を開ける音が聞こえた。
あの男が、帰ってきたんだ!
「急いで!こっちに!」
「うん!」
「おい!そこで何してる!」
私が最後に残った子を、転移させようとしたところで、男が部屋に入って来た。
男は、妖精達が居なくなったことに気づくと、私を睨んできた。その間に、最後に残った子を転移させる。
「っ!」
転移させたのと同時に、私の腕に鋭い痛みが走った。
腕を見ると、黒いモヤが巻き付いていた。そのモヤには、ちっちゃなトゲが付いていて、そのモヤが動く度に痛みが襲う。
「お前も、術を使うのか。だが、残念だったなもう逃げられないぞ」
「お前もっていうことは、私が意識体ってことも知ってるのよね?」
「ほ~。ならば、これでどうだ?」
すると、私の腕を掴んでいるモヤとは別のモヤが残りの手足も掴んだ。
「ミリー!レミー!」
「「はーい!」」
「なんだ!?」
私が二人を呼ぶと、私を中心に水が渦巻き光が部屋を満たしていく。
「これは!」
黒いモヤは、光を浴びてだんだん薄くなっていき消えた。
「じゃあ、まったね~おじさん」
「またね~」
二人は、黒いモヤが巻き付いたことでけっこう出血し、うまく立てない私を両側から支え城に戻った。
城に戻ると、私はまだ意識体なので幽体離脱みたいになっていて、ルーカス王子に抱えられている私が見えた。
「おい!起きろ!」
「血が止まらない…。もう少し、布をくれ」
「ちょっと!アオ様、どうなってんの?」
早く戻った方がよさそう…。
「右往左往してる~」
「右往左往~」
「こら、二人とも!とりあえず、けっこうこの傷酷いみたいだから戻らないと…。二人もこっちに戻ってきてね」
「「分かった~」」
二人は今、妖精体だからルーカス王子達に見えない。
そして、私は体に戻った。
「っい、痛い…」
「当たり前だろ!向こうで何があったか、応急措置をしてからじっくり聞くからな!」
「あと、あの檻に入った妖精達もね」
ジミーくんがそう言って、指をさした方を見るとあの部屋にいた妖精達が入った檻があった。
「あ、その子達の治療…」
「「ダメだ!/です!」」
「は、はい…」
ルーカス王子とルディさんが、同時に止めに入ってきた。
びっくりした…。
「まずは自分の治療が先だろ」
「はい、すみません」
とりあえず、私は治療と服を着替えるためにリーンさんを呼んでもらった。
カーテンの隙間からは、朝日の光が細く部屋に差し込んでいた。
皆さま、今年1年ありがとうございました!
よいお年を!