これから
その日の夕方。
お父さんからの連絡がきた。
「やっぱり、あの一族の物で間違いないそうだよ」
「そう…」
「でも、“あの宝石”がね」
「ということは、誰かがその一族の宝石を盗んで使ってるってこと?」
「その可能性が高い。で、その宝石がどこにあるかだけどね…。実は、その一族が埋葬されている墓にあったらしい」
「!じゃあ、墓荒らしってこと!?」
「そうだね、驚くよね」
墓荒らしは、昔は頻繁にあったらしいが法律で厳しい処罰が決められてからは、あまりなかった。だいたい、王族の墓にはちゃんと警備の人がいるため狙われることは少ない。が、貴族のところではまだまだ墓荒らしが多いのだ。
最近は、金品をいれなくなっているからする人も少なくなってきてたのに…。
「もしかして、その墓荒らしは最初からその宝石が目的で?」
「だと思う。実際、他の墓は荒らされていなかったみたいだしね」
墓荒らしは、その宝石があることを分かってやったのかも…。だとすると、誰がそれを教えたのか…。
「その宝石のことは有名だったの?」
「いや、あの宝石はそこまで有名ではなかったと思うが…。いや、その一族の婚礼で相手側の家にもその宝石を贈ると聞いたことがあるな」
じゃあ、その相手側の家の人がその宝石を盗んで、今回のこの事件を起こしてるの?
「どれもこれも、面倒くさいことになりそうだね」
「うーん…。考えてても何も進展がないから、やっぱり近いうちに潜入してくるよ」
「ミリーとレミーがいるとはいえ、注意して潜入するんだよ。ま、姿を消していくんだろうけどその一族が絡んでいる以上ね」
「そんなに凄い一族だったんだね、なんていう家だったの?」
「エリクシル家っていうんだけど、そこの女性が産む子供は魔力が高かったことで有名だったんだ。そりゃ魔術師達が、我先にと見合い話を持っていっていたよ」
それなら、その一族しか使えない物もあったんだろうけど、それは使えないから使わないよね?
使えるようにできるならあれだけど…。
「とりあえず、ルーカス王子達にも報告しておくよ。ありがとう、お父さん」
「いやいや。あ、そうだ」
「ん?」
「近くジョイール王国の国王の誕生日なんだけど、その誕生日パーティーにマリアーヌ様も招待されたみたいで、アオに会えるのを楽しみにしてたよ」
「おばあちゃんが?それは楽しみ!」
マリアーヌ・シュトラント
ナタリーのお母さんであるソフィーヌ様のお母さんで、東の大国の女王様。シュトラント王国は女王国で、次期女王はソフィーヌ様のお姉様らしい。
「それじゃ、くれぐれも気を付けて」
「うん、ありがとうお父さん」
やっぱり潜入するしか、詳しい情報は出てこないみたい。明日から少しずつ、妖精達から話を聞いていかないと。
「今回は、ルーカス王子達にも言っとかないとな…」
ルーカス王子に言われた言葉で、今回も一人でやらなきゃと気負っていた自分に気づいた。
今回のこれは、規模が大きくて私一人じゃ手に負えないのにも気づいた。
そのことについてはお礼を言わないとな…。
「これからはたくさん頼らせてもらおう!」
あの言葉は、涙が出そうになるほど嬉しくおもったから…。