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父達の語らい

「さて…。老けたなビリー」

「あなたも同じようなものでしょ」


 本当に、この人は…。


「いやー、まさか俺達の子供達を通じて再会できるとはね」

「うちの国王陛下がスクリプト王国に依頼したことも驚きましたが、ジョシュ様がまさか引き受けて下さるとは思いませんでしたよ」

「まぁ、前からジョイール王国で人身売買が頻繁に行われていたのは知ってたしね」

「あなたの情報収集力の高さは昔からですね。それに、自分でやらなければ気がすまないのも好奇心旺盛なのも。…アオ様は、そんなあなたの性格を受け継いでいるようですね」

「いやいや、俺だけじゃないよ涼華の性格もだろ?」


 あー…。確かにあの人に似てもそうなるな。


 私がスクリプト王国にいたのは、11の時から19までだ。本当は、20まではいるつもりだったのだが父である、先代のカーランド侯爵が亡くなったためである。

 私は次期宰相として、勉強をしにスクリプト王国へ来ていたのだ。ジョシュ様とは、その時に通っていた学院であったのだ。

 ジョシュ様の印象は今でもよく覚えている、一目見ただけで私は分かったのだ。


 あぁ、こういう人が国王に相応しいのだと。

 優しげな笑顔を浮かべているが、なぜか逆らうことが出来ない威圧感?威厳?とでもいうのだろうか、そんな感じではあったがジョシュ様の周りにはよく人が集まっていた。


 そんなジョシュ様には、幼なじみで婚約者であるソフィーヌ様がいた。ソフィーヌ様は社交界でも知らない者はいないほどに美しく、聡明な方だった。そんな二人は本当にお似合いで、こんな二人が治めるこの国の未来はさぞ輝かしいことだと思った。


 そんな時だった。スクリプト王国にはたまに異世界人が迷いこんで来る。その時に来たのが涼華様だった。

 涼華様はとても活発な方だった。私とジョシュ様それからソフィーヌ様との初対面の時、



“私は絶対に元の世界に帰りますから!”



 そう宣言し、元々魔力が高かったようで本当に元の世界に戻る道を創ってしまった。あの時は本当に驚いた。

 そんな快活で、自分を貫く涼華様の姿に惹かれる者は多かった。それに、この世界でも珍しい絹のような黒髪と黒真珠のような瞳で、誰とでも分け隔てなく接する姿に。実際に、私も一度告白して見事玉砕しているのだ。涼華様に惹かれたのはジョシュ様も同じだったようだ、だが私とはわけが違う。

 それを涼華様も分かっていたようで。


“あなたは次期国王になる方。それに、ご婚約者のソフィーヌ様がいるのです。私はこの世界の者ではないのですから、スクリプト王国の民が許すはずがありません。”

“ならば、民がソフィーヌが許可してくれたら良いのだな”


 それからのジョシュ様の行動は早かった。まずソフィーヌ様に事情を話し許可を貰い、民には自分でどれだけ涼華様が自分に必要なのかを、語った。

 元々この国の者達は、涼華様をとても慕っていたのだ。この国には、周辺諸国での争いで傷付いた者達が多く来るのだが、その者達が住める場所がなかったのだ。それを、涼華様が魔術で療養所や孤児院などを多く創ってくれ、異世界の医術を使いスクリプト王国の平均寿命も挙げたのだ。

 私がなぜそこまでするのかと聞いた時の涼華様の答えを聞いた時、ジョシュ様に抱いた印象と同じものを感じた。


“困ってる人を助けることが出来るのなら、普通にやるでしょ?”


 涼華様の普通は、上にたつ者の義務を極自然に行っていたのだ。

 涼華様はジョシュ様と似ている、その為婚約の許可が出たあとも二人は親友のような関係だった。

 ソフィーヌ様は最初こそ、涼華様を恨んだこともあったようだがその人柄を知っていくうちに、涼華様もソフィーヌ様も親友になられた。

 その時のきっかけは、ジョシュ様と涼華様どちらがソフィーヌ様のことを好きか、というものだ。

 ジョシュ様と涼華様がソフィーヌ様を巡って言い争いをするのを見て、ソフィーヌ様は呆れ返って恨んでいる自分が馬鹿らしくなったという。


「なんだ?いきなりニヤニヤし出して」

「いえ、ジョシュ様とソフィーヌ様それから涼華様が仲良くなったきっかけの出来事を思い出しまして」

「あれかー。あの時、まさかソフィーが涼華の味方になったのは驚いたな。涼華も涼華で、ドヤ顔だったし」

「本当に面白かった。だからこそ、そんな方達が大切になさっているアオ様が来るとなった時は本当に驚いたんですよ」

「俺もさんざんソフィーと涼華に怒られたしね。でも、正式に婚約もましてや結婚もしてないからアオに傷がつくことはないし」

「……アオ様には、まだご婚約者はいらっしゃらなかったですよね?」

「………」

「………」

「…そうやすやすとはあげないよ?例えビリーの息子でも」

「まぁ、頑張るのはルディですからね。あのアオ様を射止められるか」

「……簡単には落ちないからね、なにせあの涼華の娘だし」

「分かっていますよ。ですが、本当に美しく育ちましたねアオ様は」

「だろ?周辺諸国からは、縁談が次々と来てるよ」


 おっと、それなら家からもだしておこうか。


「さ、今夜は語り尽くそうかビリー」

「そうですね、ジョシュ様」


 自分の息子がかつて、私が恋した人の娘に少なからず惹かれているのがわかった。

 それはかつて、自分がしていた目付きでアオ様を見つめていたから。それなら、静かに見守ろう。息子の恋が上手く育つように…。







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