お忍び4
お金の単位が思い付かず、結局私達が普段使っている単位にしました。
「さて、出発しますかね」
その日の真夜中、私は動きやすい服に着替えてから一応、屋敷全体に眠りの術もかけておいた。
カーランド侯爵と二人で話す、て言ったら凄いルディさんからの視線感じたから、ルディさんは起きてて一緒に行くとか言いそうだしね。
私はそっと屋敷を抜け出した。
すると、屋敷の門のところに人がいるのが見えた。その人は、門から出て市場の方へ行くようだ。
「誰だろ?術かけたのに…」
とりあえず、あの人が誰なのか確かめないと…。
その人に走って近寄ると…。
「リーンさん!?」
リーンさんも今回のお忍びに着いてきていたけど、私がルーカス王子達と町を見て回っている間は、屋敷に待機していて私やルーカス王子が使うベッドや部屋を整えてくれていた。
最初は、屋敷にも侍女はいるからと城に残るはずだったんだけど、国王様から一緒に着いていくように言われたらしい。
「リーンさん、屋敷に戻りましょう?」
「……………」
「リーンさん?」
「……………」
様子がおかしい…。
私が呼び掛けている間も、リーンさんはまるで私の声が聞こえていない…。もしかすると、私が今目の前にいることも分かってないかも。
改めてリーンさんを観察してみる。
夕食を食べて、カーランド侯爵との話も終わって入浴の支度をしたあとは私が、もう休んでって言ったんだったな。
リーンさんは、仕事をしている時はまとめている髪をおろしていて、片側をあの女性に人気だという髪飾りで留めていて、服はくるぶしまであるワンピースだ。
「もしかして…。これ術を仕込んでる?」
ふと髪飾りを見ると、あの不思議な色の宝石の中に一輪の花と、それにとまっている蝶が金色に浮かび上がっていた。
「っ!?」
何かの術がかけられているのは確実みたい。触ろうとしたら弾かれた。
これは一応様子見をした方が良いかな。
私はそのままリーンさんに着いていくことにした。カーランド侯爵の屋敷は、町から少し離れている。町に近付いていくと…。
「なに、これ…」
町には、フラフラと歩く女の人達がいた。
リーンさんに着いていきながら、私は気づいた。
「みんなあの髪飾りをしてる…」
そう、どの女性もあの髪飾りをしているのだ。
もしかして、今まで行方不明になってる女の人達みんなあの髪飾りをしてるとか…。
「ありえなくは、ないか…」
そして、その光景に驚きながらもリーンさんに着いていくと、昼間に私がマーリン侯爵を見た路地裏に着いた。
女の人達はその路地裏にひっそりと、ある地下に続いていると思われる階段を降りていく。
私もリーンさんに続いて中に入ると…。
「見つけた…」
中は入り口を入ってすぐは幕のような物があって、そこからさらに奥を見てみると。
「さぁ、こちらは珍しい左右で瞳の色が違う娘だよ!魔術の実験をするなら、とてもいい娘だよ!」
「七千万だ!」
人身売買の取引所だった…。
「初日から見つけ出せるとはね…」
これ以上詮索するのは、やめといた方がいいよね。リーンさんが着けていた髪飾りの術も、もう無くなってるみたいだし。
「リーンさん!」
「!アオ様?あら?私は…」
「説明は屋敷に帰ってからやります。今はとりあえず帰りましょう」
「あ、はい」
私はリーンさんを連れて屋敷に帰った。