おば様の襲来!!
「見事でしたね。アオ様」
「ありがとうございます、ルディさん」
「また、手合わせお願いします!」
「うん、こちらこそ」
「アオ様、もう日も暮れてきました。離宮に戻りましょう」
ルディさんにそう言われ、改めて辺りを見ると空が少し橙色になってきていた。
「はい。オーディくんもゆっくり休んでね」
「ありがとうございます。剣は俺が片付けておきます」
「頼む」
オーディくんはルディさんから剣を受け取り、私の分の剣も渡すと“では”と言って、帰っていった。それから私とルディさんも離宮に戻り、お風呂と夕食を済ませ。明日のおば様の訪問に備えて、早めに就寝した。
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バアアンッ!
「!?」
次の日、私を起こしたのは地震かと思うほどの揺れと大きな音だった。
それが静まり少しすると、寝室のドアの外から誰かが走ってくる音がして、ドアをノックしてくる。私が返事をすると、ドアからリーンさんが部屋に飛び込んで息を切らしながら言った。
「おはよう、ございます」
「だ、大丈夫ですか?落ち着いてからでいいですよ」
「いえ、そういうわけにはいかないのです!アオ様!」
「は、はい…」
リーンさんから物凄い気迫を感じ、少し気後れしてしまう。
1、2度深呼吸をしてからリーンさんから言われた言葉に、私も驚いてしまった。
「ルイージュ様が到着なさいました」
「え!もう?」
「はい、今ルディ様やリオン様が対応なさっていて、ルーカス王子とアオ様を呼んでくるようにと言われまして」
「とりあえず、着替えてすぐに向かいます!」
「畏まりました」
それから、大急ぎで着替えておば様がいるという離宮の入り口前に向かう。
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離宮から出ると、言い争っている声が聞こえてくる。
「だから!どーして、私のかわいい、かわいいアオがこんな離宮にいるの!」
「まだアオ様はルーカス王子と婚約中です。ですので、城と離宮どちらでお過ごしになりますか?と言ったところ、アオ様が離宮をお選びになったからです」
波打つようなウェーブのかかった美しい黒髪と紅の瞳を持った年齢を感じさせない、美しい人がルディさんと揉めている。周りにはリオンさんやジミーさん、カイルくん達がいた。
仕方ない、行くしかないよね。
「おば様ーー!」
私はおば様に向かって走りながら、おば様を呼ぶ。
「アオー!」
するとおば様も、ルディさん達の間を抜けて私に向かってくる。そして、私はその勢いのままにおば様に抱きついた。
「お久し振りです、おば様」
「本当に、アオがこっちに帰ってきたって聞いてすぐに会いにいったのに、そしたらジョイール王国に嫁に出したって言うから、もうびっくりしたわ。それに、王宮に行ったらアオは離宮にいるって言うし。どうなってるの?」
「おば様、ちゃんと説明しますからまずは中へ行きましょ。朝食はまだですよね?」
「えぇ、できるだけ早くアオに会いたかったから」
「それじゃ行きましょ」
私はおば様を離宮の食堂に案内し、私とおば様が席に着いたところで、ルーカス王子がルディさん達を引き連れてやって来た。
「おはようございます、ルーカス王子。こちら私の伯母にあたる、ルイージュです」
私がルーカス王子に紹介すると、おば様はゆっくりと立ち上がりルーカス王子に挨拶をした。
「初めまして、ルーカス王子。アオがお世話になっております、ルイージュと申します」
「まさか、ルイージュ様にお会いできるとは思ってもいませんでした。ジョイール王国のルーカスです」
それから、朝食が運びこまれひとまず朝食を食べながら話を聞くことにした。
「おば様、到着が早かったですね」
「そりゃ転移を使ったり、使い魔に乗せてもらったりして来たからよ」
「朝のあの音…」
「あぁ、まだあの子着地が荒いのよね」
たぶん、まだ躾の途中の使い魔のことかな?
「着いたらそこの騎士が出てきたから、なんでアオが離宮に住まわされているのか聞いてたのよ」
あとでルディさん達に謝っておこう…。
どうして私が離宮に住むことになったのかという説明は、真実を話すと今度はルーカス王子を質問責めにして大変なことになるため、あらかじめルーカス王子と私それからルディさん達と相談した結果、あれが一番いい理由になるということであれになった。