回想~ルーカス~3
「して、ルーカス王子は何が聞きたいのですか?」
ルディが部屋から出てしばらくした後、ルディの父親でありこのジョイール王国の宰相が部屋に来た。
「月の姫について、知っていることを全部だ」
「…それは、月の姫の国の歴史にも触れることになり、長くなりますがよろしいですか?」
「構わん。話してくれ」
「それでは…」
宰相は、色々な話をしてくれた。
月の姫の故郷であるスクリプト王国は、小さな国でありながら周辺諸国から攻められないのは、その太陽と月の女神の加護があるからと、代々の月の姫が周辺諸国から依頼を受けていたからだ。それは、月の姫の特性を生かしたものだった。
「つまり、月の姫には毒が効かないし攻撃してもすぐに傷が塞がる、と?」
「はい。それに加え、月の姫は幼い頃から命を狙われるため剣などのある程度の武術は、身に付けているはずです。依頼の中には、他の国の王族や貴族の護衛などもあり、毒を盛られるのも…身体を傷つけられることも、これまで多かったはずです。周辺諸国は、実際に月の姫の力を目の当たりにして敵に回さないことに決めたのでしょう。いや、違いますね。そう仕向けられた、というのが合ってるかもしれません」
「仕向けられた?それは…」
「代々の、スクリプト王国の国王に…」
「なるほどな…。だが、それは副作用とかは無いのか?そんな都合のいい話はないだろ?」
そう、いくら強くそういった特性があっても元は他と同じ人間だ、何もないはずがない。
「ルーカス王子の仰るとおり、毒を盛られたあとは何日間か眠り続けたり、声が出なくなったりするそうです」
「そうか…」
ならば、しばらくは目は覚めないな。
「話は以上でございます」
「あぁ、ありがとう。悪かったな、こんな時間に呼び出して」
「いえ、役に立てたのなら幸いです」
「あぁ…。宰相…」
「はい?」
「しばらくは、ミリアには会わないようにする。城にも来ないようにと、マーリン侯爵家に伝えてくれ」
「畏まりました。毒のことも今、ルディ達が調べていますので」
「分かった。無理しないように、と伝えてくれ」
「はい、では失礼します」
宰相は、部屋から出ていった。
「ふぅ…」
思ったより重い話だったな。本当なら、普通の娘ならそんな依頼は受けないはずだ。それに、その親も娘にそんな危ないことはさせないだろう。多少なりとも、娘が苦しむのを知っているのだから。
だが、スクリプト王国はそのおかげでこれまで周辺の国との争いを避けてきたのだから、嫌でもそうするしかないのだろう。
「謝らなければな…。身体を張って守ってもらった恩もあるしな…」
それからしばらくして、目覚めた月の姫…アオ姫はやはり声が出せなくなり、歩くことも出来なかった。毒は、普通であれば致死量に値する量だったらしい。
俺は、アオ姫以外にも教師をつけ勉強をし直している。そして、空いた時間はアオ姫の見舞いに行ったりしている。
次から本編に戻ります。
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まだまだ未熟な私ですが、これからもよろしくお願いします。