回想~ルーカス~
今回からルーカス王子目線で回想します。とりあえず、2話ぐらい。
会話がほとんどありません。
俺はこのジョイール王国の王子だ。
王子として生まれたならば、色々な縛りが出てくる。その中でも俺が一番嫌だったのは、伴侶を自分で決めることが出来ない、というものだ。
伴侶は、死ぬまで一緒にいる相手なのだから政略的なものではなく、自分が本当に好きな相手とするものだと思うからだ。
しかし、そんな俺にも運命の相手と言える相手が見つかった。それが、ミリア・マーリンだった。
ミリアは、薄い桃色の髪に晴れ渡った空のような澄んだ水色の瞳の美しい少女で、一瞬で惹き付けられたのを今でも覚えている。だが、そんな時だった。俺の婚約者が決まったのは…。
政略結婚だが、相手を聞いた時なぜそんな奴を父上が選んだのか疑問に思った。
スクリプト王国の姫だったからだ。
最初は太陽の姫の、ナタリー姫かと思っていた。しかし、父上から聞かされたのは月の姫の方だと言う。
スクリプト王国の太陽と月の女神の話は有名だ。今でもその力を持つ姫がいるというのは知っていた、だが、それは太陽の姫の話だけだったのだ。月の姫の話など聞いたこともなかった。
ここ何年かは、姫が一人しか生まれていなかったからというのがまず第一の原因。次に、その姫達は太陽の女神の力しか宿していなかったからだ。
そして、いつしか月の姫の存在は忘れられており、俺達の代では全く月の姫について触れなかったのだ。
婚約披露の日、俺はこの日にミリアとの婚約を父上に認めさせようとした。
だから、月の姫のエスコート役だったルディに命令して、まだ騎士に成り立てのやつにやらせた。
そいつに連れられて来た月の姫は、事前にルディから知らされていたのとは異なっていたのだ。
事前に聞いていたのは、黒髪のロングで藤色の瞳だと聞いていたのだ。だが会場に現れたのは、真っ白な髪に藤色の瞳の女だった。髪が光を浴びていっそう輝いてみえて、一瞬だが見惚れていた。
それほどに、純粋な雪のように真っ白の美しい髪だった。
それから我にかえり、ミリアとの婚約を認めてほしいということ、月の姫との婚約は破棄することを宣言した。周りの大人達は皆、慌て出した。普段は冷静な父上でさえ、慌てて月の姫に謝罪していた。俺は益々腹が立って、反論しようとしたがそれより前に月の姫が言った。
「あの~私は別に構いませんよ?」
と、言ったのだ。
それなら!と思い父上を見たが、狙いは俺との結婚だけではなく、俺の教育係りをしてほしかったらしい。確かに自覚はあった、幼い頃から毎日のようにジョイール王国の周辺の諸国のこと、ジョイール王国の歴史そして、王子としての立ち居振舞い…、などを欠かすことは無かったが最近…特にミリアと知り合ってからは、ほとんどの時間をミリアとの時間にして勉強をほったらかしていたからだろう。
とりあえず、月の姫には離宮に住んでもらうことになった。それも、父上よりも前の王の寵姫が住んでいたところに、そこには無念の死を遂げた側妃の霊がいるという噂だった。だから、月の姫もそれを見れば怖がって国に帰るかと思ったが、あろうことかその霊を成仏させて、離宮も当時のような美しさを取り戻したのだ。
月の姫は、夜を司り死者が安らかに眠れるように手助けをするのだそうだ。
やろうと思えば、この世界の全ての物を消し去ることも出来るようだ。