満月の日 昼間
満月の日当日。
「声も戻って、体調もいい!さ、今日は満月頑張るぞ!」
朝から私は、叫んでいます!
これで心置き無く、月の姫としての仕事に打ち込めます!やっぱり人間、健康が一番だ。
「本当に良かったですね、アオ様。でも、今日の月の姫としての務めは、無理は禁物ですよ?まだ病み上がりなんですから」
「分かってます。それに、今日は力が補充される日なので声が出なくなるとかはないですから」
「それなら、いいのですが…あぁ、そういえばまた来られてますよ?」
「え、また?何か悪いものでも拾い食いでもしたのかしら?」
「それはあまりにも失礼かと…」
「それもそうですね。とりあえず、待たせるわけにはいかないので行きましょうか」
私達は、朝早くから来ている“お客さま”と朝ご飯を食べるために、食堂へ向かう。
この“お客さま”は、最近ずっと朝や昼、挙げ句に夜まで一緒に食事をするために離宮へ来る。
食堂に入ると、やはりその“お客さま”はいる。今日も飽きずにご飯を食べに来たようだ。
「おはようございます。ルーカス王子」
「おはよう」
そう言って、目の前の“お客さま”であるルーカス王子は、食事を再開した。
私のお見舞いに来てからというもの、最初は夜だけだったり朝だけだったりしたこの一緒に食事をするスタイルは、いつしか三食すべてに変わった。
私は、本当にルーカス王子の考えていることが分からない。あれだけ毛嫌いしていた私のお見舞いに来たり、一緒に食事をしたり…いったいなんなのだろう?そのくせ…。
「………」
「………」
会話は一切無く、聞こえるのはナイフやフォークなどがカチャカチャいう音だけ。
本当に何なんだろう?
「今日、月の姫としての務めがあるらしいな」
お、話しかけてきた。
「はい、夜からですが」
「そうか…」
ん~…また沈黙だな…。でも、少しでも月の姫について知ってもらえているのかな?それならそれで嬉しいな。
やがて、食事を食べ終えたのか席を立ってドアへ向かったが、ドアを開ける直前に少しだけこちらを振り向いて…。
「あまり、無理はするなよ」
と、言い残して食堂から出ていった。
今日は何か起きるのかしら?今日が無事に終わって、心安らかに明日を向かえられますように。
「おはようございます。アオ様、さっきルーカス王子とすれ違いましたが、また朝食をご一緒に?」
「そうなんですよ、それに加えて無理はするなと言ってました」
私がそういうと、ルディさんは少しだけ目を見開いて驚いていた。
「悪いものは何も食べてないと思うのですが…」
やっぱりそれ考えますよね~…。
「とりあえず、今日は気を引き締めていきましょう」
「はい」
こんな感じで、昼間は過ごした。